シリーズ記事 20年度広島市当初予算案について 

【考察その6】
都市活性化策の取り組み その1
都市観光、MICE、イベントなど



画像1 3月19日~11月23日 250日間開催される第37回全国都市緑化ひろしまフェア『ひろしまはなのわ 2020』のメイン会場(広島中央公園一帯)のイメージパース(画像 公式HPより)

①花と緑と音楽の広島づくりの推進 事業費2億7,950万円
 
第37回全国都市緑化ひろしまフェア『ひろしまはなのわ 2020』(公式HP)が、3月19日~11月23日にかけ、250日間メイン会場-中央公園とし、協賛会場-国営備北丘陵公園(庄原市)県立せら県民公園 県立備後運動公園(尾道市) 県立みよし公園(三次市) スポットイベント会場-県内23市町(広島市含む)の130ヵ所にて開催される。メイン会場の開催は5月24日までの67日間だが、メイン会場だけで約160万人もの集客を見込んでいる。規模的には13年開催の『ひろしま菓子博2013』以来の大型イベントの開催となる。広島市は、20年度当初予算案にて花と緑と音楽の広島づくりの推進 事業費2億7,950万円のうち、開催費用を2億6,510万円を計上している。メイン会場だけ5月24日で終わるのかが謎だが、旧市民球場跡地利用計画とサッカースタジアム建設が理由かも知れない。この規模の超大型イベントは広島市クラスだと、毎年開催されるわけではないが、都心部地区の求心力の低下が叫ばれ続け幾久しいのでひと時のカンフル剤にはなるだろう。一過性のものに終わる可能性は高いが、郊外大型商業施設に目が向きがちな消費者に都心部地区の魅力を再認識させる契機にはさせたいものだ。メイン会場のこの地(上下画像参照)は言わずと知れた旧市民球場跡地である。跡地利用を巡り、この十数年紆余曲折があり過ぎてうんざりする。この場所を感情的思考を以って、必要以上に美化することが問題の根幹だと思ったりするが、市民球場が去って既に11年が経過。二代の市長で議論はし尽くされた感があり、これ以上の議論は『小田原評定』以外何ものでもない。もう少し機会損失の概念を都市経営に植え付けた方が良い。この地はイベント広場で十分だ。死に体化に向かいつつある都心部地区を何とかしないと広島市の将来はないだろう。

 
画像2 『ひろしまはなのわ 2020』の開催の設営準備が進む旧市民球場跡地の様子(画像 アンドビルド広島より)


画像3 
広島商工会議所の大規模MICE建設候補地(赤点線内)一覧(画像 広島市HPより)

②MICEの推進 事業費5,625万円
 事業の内訳は、『MICE受入態勢の整備』『シャトルバスの運行支援』『伝統芸能等の実演によるおもてなし』『コンベンション開催助成』『コンベンション見本市への出展による誘致活動等』『テクニカルビジットの開発・運用』『MICE施設整備の検討』になっている。前回の記事で、西飛行場跡地での10~20㌶規模の展示施設を中心としたMICE施設検討をしている県を徹底的に批判した。広島商工会議所の
広島におけるMICEのあり方提言広島市HP)は、商工センター地区も候補地にしており、こちらの検討は市が受け持ち未だに続けている。『商工センター地区活性化検討会MICE部会』昨年10月と今年の2月に開催され、予算案を見ると4月以降も開催されるようだ。2月の部会にて広島市による中間報告なるのもが出されたようだが、様子が市のHP上に掲載されていないので、状況が不明だ。まあ、西飛行場跡地の県の検討も過大な投資が難しいとして、断念となったので市単独では広島商工会議所提言レベルの施設建設は、100%不可能だろう。将来的には、1万平方㍍規模の展示施設や多目的ホールを兼ね備えた新施設は絶対に必要になると考える。現在、インバウンド需要の高騰を受け、施設の増設や新設計画が国内では相次いでいる。MICE年を標榜する広島市の武器として貧弱感が漂う広島市中小企業会館と広島県立産業会館だが、展示会に関してはこの施設ですら福岡市のようなお断りが生まれるような稼働率(下記画像4参照)を実現してない。ハコさえ作れば勝手に需要が湧き出るものでもない。まずは、施設云々よりも需要発掘を先だと考える。観音地区における大規模展示場実現可能性に係る検討状況について(広島県HP)は、県の報告書だが展示会や見本市の本質が書かれており、参考になる。お暇な方は読むことをお勧めする。市も県との共同作業で適正規模の新施設建設も含めたMICE強化の議論した方が良い。ブログ主は、商工センター地区MICE施設建設は不適切と考える。本格的なメッセ都市のような数十万平方㍍規模の展示場であれば、郊外立地もやむ無しだが、1万平方㍍規模であれば都心型のコンパクトMICEを標榜し『オールイン体制』を構築した方が安上がりに済み、経済波及効果も高いだろう。


画像4 広島市に立地する展示施設-広島県立産業会館と広島市中小企業会館の稼働率(画像 広島市HPより)


画像5 世界遺産の原爆ドームと平和記念公園の様子(画像 広島市HPより)

③観光の振興 事業費5億7,984万円
 広島市が今現在、絶好調の分野の一つである。当初予算案では、(1)観光プログラムの開発と推進-7,440万円 (2)ビジターズの受入環境づくり-4億367万円  (3)広島情報の発信(4)その他、に振り分けられている。その中で、いくつかの注目事業を取り上げる。最初は、『広島広域都市圏観光振興事業-1,248万円』だ。主旨として広島広域都市圏域全体としての誘客促進、広域的な観光ルートの創出、滞在型観光客の拡大に資する取組を実施すると書かれている。これは広島市の観光客の低い宿泊率を意識しての事業だ。半日観光都市だの、見る場所が原爆ドームと宮島だけなどと揶揄されがちだが、広島市の宿泊率は決して良くはないが卑下するほど低くない。地方中枢都市との比較の関係で17年度の数値を用いるが、札幌市-51.0%、広島市-40.0%、福岡市-35.5%、仙台市-26.0%となっている。ただ、宿泊率がさらに向上すれば滞在時間の伸長につながり消費する機会が増え、都市経済活性化に寄与するのは間違いない。瀬戸内体験ツアーの実施や酒蔵等を巡るツーリズムの開催がメニューに入っている。この手法は賛同する。どうしても広島市単独では観光資源に限界があり、長期滞在が難しい。原爆ドームや宮島の世界遺産を目玉に呼び寄せ、広島市を宿泊拠点としてもらい瀬戸内海の島々や四国などの魅力もよく知ってもらうのである。広島都市圏外の都市とコラボすることで相互補完するWin-Winの関係となるのである。広島市が口先だけの中枢都市ではなく、真のそれを本気で目指すのであればこれぐらいの懐の深さがあってもいいだろう。


画像6 
都心部地区のオアシスになっているが、有効活用されているとは言い難い平和大通り(画像 ひろたびより)

 二つ目は、『Park-PFI制度を活用した平和大通りのにぎわいづくり-969万円』である。この通りは正式名称は市道比治山庚午線で、都市公園でない。道路幅員が100㍍もあり広大な緑地帯(計45.0㍍)がある。過去にはオープンカフェの社会実験なども行われたが、諸般の事情で実現には至らなかった。札幌市や名古屋市のように中央分離帯に広大な緑地スペースがあるレイアウトではなく、道路中央に道路車線があり、その左右に二分割される形で緑地帯があるレイアウトになっている。その関係で有効活用されているとは言えなかった。近年、『Park-PFI制度』(国土交通省HP)などが導入され、公園を有効活用をしてにぎわい性創出の都市の装置として機能させる動きが加速している。平和大通りは、広島市の戦後復興計画の基本となった丹下構想案(広島市HP)の東西方向の基幹軸の回遊路に位置付けられていた。都心部地区の求心力の低下、平和公園周辺に留まる回遊性、都心部全体を回遊可能な回遊路不足などの問題が顕著となり、原点回帰となったと認識する。20年度当初予算案では、道路となっている緑地部分の都市公園化の手続きの予算が盛り込まれている。対象範囲が全区間なのか、都心部地区に該当する『平和公園~鶴見橋』のような区間限定なのかは不明だが、ブログ主は後者だと予測する。緑地帯を都市公園化し、『Park-PFI制度』を導入し指定管理業者に認められている飲食や物販施設を設置させる試みだ。今回はその下準備である。県と市が17年に共同で策定した『ひろしま都心活性化プラン』(広島県・市HP)によると、『平和公園~比治山公園~縮景園~広島城』を四隅とする回廊ネットワークが理想像として、描かれている。平和大通りは、先の丹下構想に従い、東西の回遊路を担う。ブログ主は個人的には、架線設置による都市美観の悪化や橋梁の建て替えで棚上げされている広電平和大通り線(白神社交差点~西観音町電停交差点 1.8㌔)の導入を機に道路レイアウトを一気に改変して、にぎわい創出スペースを拡充させることを望みたい。

【考察その7】
都市活性化策の取り組み その2


画像7 東京特別区を含む21大都市の
14~19年の転入超過数&転出超過数の推移 その1
(画像 総務省HPより)

④広島広域都市圏UIJターン促進協議会事業 事業費310万円

 広島市は1月31日公表の総務省の『住民基本台帳人口移動報告2019年結果』(総務省HP)で、栄えある3年連続転出超過の偉業を見事に達成した(爆)。しかも4桁の大台に乗せてである。『この現状で、何が地方中枢都市だ!』と思ったりもする。他の地方中枢3都市は、相も変わらない転入超過を果たし、ブロックにおける東京圏流出防止の一定のダム機能を果たしている。東京圏(一都三県)の転入超過数の約90%は、15~29歳の三区分で占められ、大学進学と就職で大移動していることが伺える。結論を言えば、広島市は進学と就職の場として選択されない都市となっている。これを大改善するには、インフラ整備よりも膨大なソフト政策を積み重ねなければ難しい。勿論、市も到底看過できない事態に手をこまねいてはいない。この政策もその取り組みの一環だ。どこかのメガバンクみたいな名称だが、説明するとUターン-地方から都市に移住した人が、再び故郷に戻ること、Jターン-生まれ育った故郷から進学や就職で都会に移住した後、故郷に近い地方都市に移住すること、Iターン-都市部から出身地とは違う地方に移住して働くこと をそれぞれ指すらしい。市では、近隣自治体、経済団体と連携し、東京・関西圏の学生を対象に合同就職面接会及び、合同企業研究会の開催する予定だ。この取り組みだけで解決するほど甘いものではないが、方向性は正しいと思う。意外と思われるかも知れないが、全世代で転出超過数1,220人を記録した広島市だが、65歳以上に限ると何と転入超過数全国13位(270人)となっている(上記リンクP23参照)。終の居住地とは魅力的なのかもしれない。それなりに金融資産もあり、老齢年金も多く、まだ労働力として活用可能な豊かな高齢者の
UIJターン促進も一考の価値がある。語弊はあるが、豊かな高齢者の方が納税能力も高く、介護や医療の行政負担も少なく済み、コストパフォーマンスが高い。逆転の発想で面白いと思うのだが・・・。

地方中枢四都市の転入超過数の推移(単位:人)
     14年  15年   16年  17年  18年    19年
札幌市 8,609 8,106  9,315 8,952 8,283  9,812
仙台市 2,050 1,140   615 1,399 1,979  1,349
広島市 -528  289   119  -359 -661  -1,220
福岡市 6,564 7,680  7,287 6,986 6,136  8,191
※-は、転出超過を示す


画像8 広島市の都心部地区の様子(画像 広島県HPより)

⑤魅力ある都心づくり推進事業 事業費1,601万円
 広島市の都心部地区-特に紙・八地区の商業機能を中心とした求心力の低下が叫ばれ始め、かなりの年月が経過した。この間行政も、財政難の縛りを受けながらも様々な対応をしてきたが、在りし日の姿には戻っていない。20年度当初予算案では、『都市再生緊急整備協議会会議の開催』『エリアマネジメント活動の支援』『市営基町駐車場周辺の再開発の検討』が予定されている。注目したいのが、エリアマネジメント活動支援である。広島駅周辺地区-274万円、紙・八地区-643万円となっている。広島駅周辺地区に関しては、北口地区に
『エキキタまちづくり会議』(公式HP)が発足し活動をしている。紙・八地区は広電と広島ガスを中心とした複数企業が広島市中心部のまちづくりを目的とする組織(エリアマネジメント組織)の設立を予定している、と1月初頭に新聞報道されたばかりだ。この動きに関連するものだろう。エリアマネジメント組織とは、『地域における良好な環境や地域の価値を維持・向上させるための、住民・事業主・地権者等による主体的な取組み』のことだ。高度&アンチ成長期のまちづくりは、ハード一辺倒の『つくる』が主体だった。現在は『官民一体となって考え、つくり、育てる』が主流になっている。概念などはかなり前からあったが、『石橋を叩いても渡ろうともせず、皆が渡り終えてようやく渡る広島人』気質なので、必要性は肌で感じていても中々、重い腰を上げようとはしなかった。18年の都市再生緊急整備地域の指定、特定都市再生緊急整備地域への昇格協議など気運が醸成されつつあることが背景として、あったことが大きい。まだ詳細が出ていないので、コメントが難しいがようやく広島市にもこの動きが出始め、安心した。行政は組織立ち上げまでの誘導役として、地元企業はスポンサーに徹しあまり表には出ず、地元商店街やまちづくりに一角ならぬ関心がある市民を中心とした組織の方が成功するだろう。


画像9 87年、08年、18年の広島市内移動における各移動手段の分担率(画像 広島市HPより)

⑥公共交通の機能強化と利用促進 事業費
6億6,386万円
 広島市も大都市とは言え地方都市に過ぎないので、車社会とよく言われる。定義にもよるがブログ主の感覚だと完全な車社会とは、上記画像の移動手段の分担率が自動車が60%以上、公共交通が一桁台であれば車社会といえるかも知れない。この定義だと3大都市圏の中心都市、地方中枢都市(一応広島市もべ便宜上含める)は自動車分担率が50%以下、公共交通分担率は15%以上なのでセーフとしたい。地方中枢都市以下の平成の政令指定都市クラス以下-新潟、静岡、岡山、熊本など-では自動車分担率は優に60%を超え、公共交通分担率は5~6%と完全な車社会である。上記画像9は、広島市のそれだが公共交通分担率が18.2%で欧州のコンパクトシティ並みで、一部のネット住民の方が願ってもやまない地下鉄を2本も保有する仙台市の分担率-16.6%を超えており、公共交通利用の観点では地下鉄建設だけが全てではないということを証明して余りあるだろう。地下鉄建設は、自動車利用者の公共交通利用への転換が目的で、手段として基幹公共交通の導入になるのだから。地下鉄の必要性は選定機種の問題だ。ただ、留意したい点は自動車分担率が調査のたびに増加していること、公共交通分担率の向上は自動車利用からの転換ではなく、二輪車-自転車・バイク-からである。自動車分担率を適正な水準に下げることには成功していない。速達性向上の話は長くなるのでまたの機会にする。そこでさらなる公共交通利用促進策が求められる。20年度は、6億6,386万円が確保された。予算の殆どはバス運行対策費補助(5億3,854万円)が81%を占めているが、『路面電車のLRT化の推進 4,781万円』『バス活性化の推進1,201万円』も入っている。前者は、20年度にも広電に導入される5200形-グリーンムーバエイペックス-2編成分の広島市補助額だろう。駅前大橋線以外では広電路面電車に係る予算はこれだけである。17年12月に市議会本会議で、『広島駅~紙屋町』の停留所統合の議員提案があり、市も検討の意思を表明した(下記画像10参照)。あれから2年数か月が経ったが続報は全くない。市の解釈では『LRT=100%超低床車両』としているようだ。間違いを正すと『LRT=旅行速度18~25km/h(広電路面電車の2.1~2.9倍)を実現した路面走行中心の軽軌道システム』である。輸送効率を考えれば、バス輸送の問題解決も悪くはないがまず最初は鉄・軌道系の広電路面電車から手を付けるのが常道の筈。幾多の社会情勢の変化を乗り切り、現存する軌道インフラ設備を放置し飼い殺しにするには惜しい。でなければ実現性0%のアストラムライン都心線の実現に注力しろ、と言いたい。どうせ出来はしないだろうが(笑)。手を付けなければならないことが山ほどある筈だ。財政難を理由にするのであれば、政令指定都市は返上した方が良い。古くて新しい課題を何十年放置するのだろうか?

https://livedoor.blogimg.jp/zono421128/imgs/c/8/c839fa70.jpg
画像10 17年12月の広島市議会本会議での市道路局長の答弁の様子(画像 地元ニュース画像より)

 『バス活性化の推進1,201万円』は、地域公共交通再編実施計画の第3弾の策定だ。これまで市は、バス輸送の改善として第1弾-エキまちループ(18年5月就行)、第2弾-まちのわループ、広島みなと新線(20年1月就行)を実施してきた。第2弾の結果はまだ出ていないが、第1弾のエキまちループは利用が好調だ。第3弾は、HPの情報だと①市北部(JR可部駅)の郊外バス路線のフィーダー化、待合環境整備 ②市西部(場所不明)の郊外バス路線のフィーダー化、待合環境整備 ➂デルタ内のバスサービスレベルの低い地域のバス路線開設 ④郊外やデルタ周辺部と都心部を結ぶ路線の運行本数の適正化 になるとのことだ。新しいバス路線就行で市と事業者のコスト負担実質ゼロで実現させる手法は素晴らしいと思うが、この手法が永遠に続くとも思えない。しかもできることに限りがあるのは明白で『安かろう、悪かろう』になりはしないか、少し心配だ。別に莫大な投資さえすれば良いというわけではないが、公共交通移動中心の都市構造を標榜する集約都市を下支えをする割には、投資額があまりにも少ないと言いたいのだ。広島市内の平均バス&広電路面電車利用者は、公共交通利用者全体の約57.0%(12年)を占める。利用者の数において主力交通機関といっても差し支えない。よく道路は経済インフラ、公共交通は生活インフラと例えられる。道路整備への投資額も一時期より大幅に減ってはいるが、公共交通整備の投資額よりも圧倒的に多い。広島高速道路のような利用料金で減価償却するものを公共交通で例えるとアストラムライン西風新都線、一般道路整備は路面電車やバスの改善になる。投資額を対比すると、既存公共交通者への投資額の少なさは軽視の裏返しにも感じる。広電路面電車のLRT化、バス輸送の大改善に年間10~15億円(広島市負担)ぐらいの投資が出来ないものかと思ってしまう。

その4へ続く


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