カテゴリー記事 広島市の公共交通のよもやま話

【よもやま話その1】
広島市の公共交通の話 その1
地方都市の公共交通の惨状


画像1 乗り合いバス事業者の経営状況と07年度以降のバス路線廃止㌔数 (画像 国土交通省HPより)

 特に大きな話題もないので、公共交通にまつわる与太話をしたい。まとまりのある話になるのかは自信がない(笑)。現在地方都市では、多くのものが衰退の危機に瀕している。地方経済を支えた地方銀行は半数が本業赤字に転落し、金融庁の試算では約10年後は6割に達すると予測されている。主な理由は、日銀のマイナス金利政策と地方経済の疲弊、異業種の金融業界参入などである。二つ目は、公共交通だ。地方都市の主たる交通機関であるバスは、18年度試算だと地方バス165
事業者のうち、黒字経営(本業)は僅かに24(14.5%)、残りの85.5%は本業赤字となっている。こちらの理由は、行き過ぎたモーターリゼーションの進行、日本の都市計画政策の失敗(都市のスプロール化誘引)、乗り合いバス自由化政策の失敗などになる。いずれも日常生活に欠かせない金融インフラ、公共交通インフラの存続が危ぶまれている。この状況に危機感を感じている安倍政権は、地方銀行と地方バス会社の統廃合について言及を始めた。本来は独占禁止法で禁止条項としている『一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる企業結合』に該当し、NG行為だった。ところが、『地域住民に不可欠なサービスを提供しており、サービスの維持は国民的課題』『地方銀行や乗合バス等が経営統合等を検討する場合に、それを可能とする制度を作るか、透明なルールを整備することを検討したい、サービスの維持は国民的課題』と首相自ら総括した(18年10月)。翌19年6月、『成長戦略実行計画』にて以下の点を盛り込んだ。~地域のインフラ維持と競争政策 ~ 国が民間事業者の救済に乗り込まないといけないほど、疲弊し自然死直前なのである。日本は鉄道大国と評されるがそれは東西の細長い国土のため、新幹線などの都市間輸送の鉄道シェアが高いのと、世界有数の巨大都市圏の首都圏の鉄道輸送が利用者の絶対数を稼いでいるに過ぎない。地方の公共交通輸送に関しては、地方中枢都市以下の都市では目も当てられない惨状となっている。


画像2 都市圏別の都市類型による代表交通手段分担率(10年)

 上記画像2は移動の際に使う代表的交通機関の分担率で、地方中枢都市-札・仙・広・福-クラスで共交通分担率は17.0%程度、人口40万人以上の地方中核都市-新潟、松山、岡山、熊本-などで7%台、人口40万人以下の地方中核都市では4%台、その他の都市では2%台となっている。単純比較は禁物だが、ブログ主が事あるごとに紹介する欧州都市では、人口50万人の日本でいうところの中核都市クラスでも公共交通分担率は、15~20%台前半で、自動車の分担率は30~40%台前半は抑えられている。あちらは都市交通事業が採算性を追求しない非営利事業で、利用者負担の行政サービスとなっている。鉄・軌道インフラ整備も導入ハードルが恐ろしく低い。日本の都市ではLRT導入は人口50万人程度の都市以上が検討対象となるが、あちらでは人口10万人台でも検討対象になる。要は都市交通インフラの集積度が全く異なる。都市の成長管理(スプロール化抑制)の概念が古くから浸透し、郊外開発も厳しい認可制の国が多く、まちづくりに市場経済をダイレクトに反映させない。先進国では珍しい開発フリーの日本とは異なる。日本の都市ではありがちな郊外に虫食い開発のような、低密度の市街地が拡散していない。都心部地区の求心力が強く、公共交通志向開発(TOD)が徹底されているので、公共交通移動需要が発生しやすい都市構造となっている。『〇〇%』と言われてもピンとこない方のために言うと、公共交通分担率が20%を超えると、『交通網が発達している』との認識で、一桁台で逆に自動車分担率が50%を超えると『車社会』と称されることが多い。

指標1 日本と欧州の都市の
代表交通手段分担率
【人口30~70万人都市】 単位:%
       公共交通   自動車     徒歩    二輪車
        分担率   分担率     分担率   分担率
松山市     3.9  50.5    17.2  28.3
新潟市     5.8  71.0    15.0   8.1
熊本市     
5.9  64.5    15.7  14.1 
岡山市     6.5  59.5    19.6  13.8
ドレスデン  22.0  39.0    27.0  12.0
チューリッヒ 37.0  28.0    28.0   7.0

【人口100万人台都市】 単位:%
       公共交通   自動車     徒歩    二輪車
        分担率   分担率     分担率   分担率
札幌市    17.1  55.0       27.9(徒歩・二輪合計分担率)
仙台市    16.5  44.7    13.7  19.8
広島市    
18.2  47.3    19.6  14.6
福岡市    23.5  42.2    18.6  15.6
ミュンヘン  25.0  36.0    24.0  15.0


 地方中枢都市クラスはまだ欧州都市並みの公共交通分担率があるが、その下のカテゴリー都市だと、比較にもならない。因みにスイスを代表する世界都市のチューリッヒは、地下式鉄・軌道がない。過去の何度か計画が立案されたが、その都度住民投票にかけられ否決されている。EU圏内の都市で
チューリッヒは、最も公共交通が利用されている都市である。松山、熊本、新潟、岡山市は人口50~70万人台の都市で日本の都市が欧州都市よりも市域面積が広いとはいえ、欧州基準では押しも押されぬ大都市である。その3市が揃いも揃って公共交通がほぼ壊滅状態となっている。国が公共交通インフラ維持のため、独占禁止法の特例と称して救済処置を検討するのも納得だ。面白半分に世界で最もモーターリゼーションが進んだアメリカの都市の分担率を簡単に書き記す。ニューヨーク-公共交通分担率49.9% 自動車分担率37.2%、デトロイト-公共交通分担率1.8% 自動車分担率96.0%、ロサンゼルス-公共交通分担率6.8% 自動車分担率89.4%である。ここまで極めるともう修正が利かず、もう徹底的に自動車都市を邁進するしかない(笑)。日本の3都市の唯一の救いは二輪車や歩行移動が多い。逆に言えば、この二つでも移動可能な場所に住んでいるとも言え、誘導次第では公共交通利用に転換の可能性を残している。18年2月お隣の岡山市の両備ホールディングス(HD)傘下の両備バスと岡電バスが、岡山県内で運行する路線バスのうち赤字31路線の廃止届を中国運輸局に提出し、世間を驚かせた。その騒動の最中に、関係者が広島市を視察に訪れ、広島駅の南口広場から広電路面電車やバスに続々と利用者が乗り込む姿に羨望の眼差しを向けていた。岡山市規模の地方大都市で、市内の都市交通をほぼ独占している備ホールディングスでさえこの有様だ。地方都市の都市交通事業は、独立採算制の大前提が維持出来なくなりつつある。集約するほど事業者が残っていない都市はどうするのだろうか?条件付きで公的資金(税金)導入でもしない限り、公共交通インフラが維持可能とは思えないのである。イギリス以外の欧州各国やアメリカは、モーターリゼーションの最盛期である60~70年代に運輸連合を設立したり、民間事業者の事業を公営化したりして運営維持に税金を惜しげもなく投入する形態に変えている。

【よもやま話その2】
広島市の公共交通の話 その2

広島市の公共交通の現状 健闘はしているが・・・


画像3 広島市の公共交通全体と各交通機関ごとの1日平均利用者数の推移(画像 広島市HPより)


画像4 広島市内に主要路線を持つバス交通事業者の合計損益の推移(画像 広島市HPより)

 ブログ主は記事内で公共交通の必要性を説く。しかし、現実世界では一家で自動車を二台保有する典型的なマイカー族だ。結婚当初からそうで、ブログ主が封入体筋炎の進行で自動車の運転が出来なくなり、一時は一台保有となったがその後息子が18歳を迎え、ブログ主の送迎の必要性と志望大学合格祝いで買い与え、再び二台所有となった。自動車の節度ある使い方を記事内で提案しているつもりだ。広島市の1日平均公共交通利用者の推移は、上記画像3の通り。アストラムラインが開業した94年の67.6万人をピークに02年頃まで下がり続けてきた。乗り合いバス自由化政策-事業者間の棲み分けを廃止して競争原理を導入-導入元年の03年頃に下げ止まり、微増に転じる。利用者減少が酷かったバスは利用者こそ多少増加したが、数少ないドル箱路線で閑散路線を辛うじて維持していたビジネスモデルが崩壊する。競争の激化で、ドル箱路線の黒字幅が縮小して維持できなくなったからだ。上記画像4は広島市内に主要路線を持つ事業者の合計損益の推移だ。自由化元年の03年は黒字に転換したが、翌04年以降、再び赤字に転落。その後は自由化前よりも赤字幅が大きくなり、経営が悪化している。既に疲弊しきっていたバス事業者には、自由化政策は副作用が強過ぎた劇薬でしかなかった。04年以降は、08年頃まで微増となり再び減少曲線に入る。09~10年を底に再び、微増曲線に入る。バス輸送の下げ止まり、アストラムラインの微増、JR西日本が広島地区を遅まきながら投資対象とし始め、微増していることが貢献した。しかし、ピーク時よりも10.0万人程度利用者が少なく、50万人台半ば~後半で推移している。ブログ主が思うに郊外大型商業施設に押され、都心部地区の求心力が00年代半ば~後半にかけ商業機能を中心に低下。都心部地区への移動需要の減少も理由として大きいと考える。紙・八地区の不振がそのまま公共交通利用の低迷につながっている。分担率は高く、地方都市の割には公共交通利用が多いが、その経営内容は決して良くない。広島市を代表する最大事業者として広島電鉄がある。とかく広島の公共交通の不平・不満の矢面に常に立ち、はけ口にされ、地下鉄が誕生しなかった主犯格に指定され散々な言われようだ。18年度の損益計算書を見ると、鉄・軌道部門は1億4,300万円の黒字、自動車(バス)部門は12億5,600万円の赤字である。サービスレベルを維持する設備投資など絶対に望めない収支だ。市の予算で『バス運行対策費補助』の項目があるが、その補助費が03年2億7,600万円だったものが、20年度5億3,854万円と2倍近く跳ね上がっていることもバス事業者の苦境を示す指標になるだろう。


画像5 87年、08年、18年の広島市内移動における各移動手段の分担率(画像 広島市HPより)


画像6 『
広島市市民意識調査報告書』の交通に関する質問と回答(画像 広島市HPより)

日本と欧州の都市の代表交通手段分担率(再掲)
【人口100万人台都市】 単位:%
       公共交通   自動車     徒歩    二輪車
        分担率   分担率     分担率   分担率
札幌市    17.1  55.0       27.9(徒歩・二輪合計分担率)
仙台市    16.5  44.7    13.7  19.8
広島市    
18.2  47.3    19.6  14.6
福岡市    23.5  42.2    18.6  15.6
ミュンヘン  25.0  36.0    24.0  15.0


 少し話が逸れるが、ブログ主の与太話を聞いてもらいたい。広島市の公共交通の不満は、速達性の問題(要は遅い)、定時性が高い交通機関(地下鉄など)が少ない、の二つに尽きると考える。まちづくりなどの関心が高いネット界隈ではあたかも不平が渦巻いている印象があるが、現実世界では必ずしもそうではない。上記画像6は、平成30年度(2018年度)広島市市民意識調査報告書』(サンプル数 2,150 広島市HP)の質問項目で公共交通の満足度についてのものだ。一定の満足の市民が約60%を超えている。最初に見た時は目を疑ったが、事実としては重い。論理的思考だと、理解に苦しむがこの結果をブログ主的に紐解くと、他都市、当たり前の話だが特に海外都市の先進事例など知っている市民など殆どいない。要は、『路面電車もバスなんだから、こんなものだろう』的な感覚で受け止め、『多くを望んでも・・・』的な気持ちも手伝った結果ではなかろうか?『知らぬが仏』も幸せになる絶対条件かも知れない。広い見識も場合によっては、不幸を招くこともある。市民意識は置いておいて、広島市の公共交通分担率は、実はかなり高い。人口40万人以上の地方中核都市-新潟、松山、岡山、熊本など-が3.9~6.5%であるのに対して、18.2%。地方中枢四都市でも地下鉄を複数路線を保有している札幌、仙台両市よりも高い。公共交通利用を促す場合、地下鉄整備だけが推進剤にならないことを意味している。広島市の都市交通政策の成功と言いたいところだが、それはさすがに違うと考える(笑)。ここは捻くれ者のブログ主の逆説論で考える。理由として次の点がある。①地形が特殊で平野部が17%しかなく、丘陵・山岳地帯が天然の要害となり意図せず都市のスプロール化-低密度の市街地の拡散-を防いだ ②主要幹線道路のBPなどを含め道路整備の遅れが誘引した副産物的効果 ③札幌・仙台両市と異なり、都市交通事業は多くの民間事業者が担っていた だと考える。①は指標2を見てもらいたい。8市のうち面積は2位だが、可住地面積は6位と意外と狭い。ただ、可住地の人口密度は3位と高い。何が言いたいのかというと、バスなどの公共交通が独立採算制前提で商業ベースに乗りやすいということだ。この辺を見ると、一応中枢都市を名乗るだけのことはある。

指標2 地方都市の各面積と人口密度
単位:面積-km2、比率-%、人口密度-人、保有台数-台

【三大都市圏中心都市】
       市域面積  可住地  可住地面  可住地  一世帯当たりの 公共交通
             面積   積比率   人口密度 自動車保有台数  分担率
東京特別区   623  623 
100.0 14,359   0.41  50.4
大阪市     225  225 100.0 11,950   0.50  37.8
名古屋市    326  316  96.9  7,259   1.04  26.1

【地方中枢都市】     
     市域面積  
可住地  可住地面  可住地  一世帯当たりの 公共交通
           面積   積比率   人口密度 自動車保有台数  分担率
札幌市 1,121  439  39.1  4,447  0.96   17.1   
仙台市   786  341  43.4  3,167  1.14   16.5
広島市   907  293  32.3  4,070  1.12   18.2
福岡市   343  232  67.6  6,617  0.85   23.5

【地方中核都市】人口50万人以上
     市域面積  可住地  可住地面  可住地  一世帯当たりの 公共交通
           面積   積比率   人口密度 自動車保有台数  分担率
松山市   429  240  57.1  2,142  1.46    3.9
新潟市   726  670  92.3  1,208  
1.57    5.8
熊本市   390  328  84.1  2,256  1.35    5.9
岡山市   790  437  55.3  1,647  1.48    6.5

 ①は指標2を見てもらいたい。8市のうち面積は2位だが、可住地面積は6位と意外と狭い。ただ、可住地の人口密度は3位と高い。何が言いたいのかというと、バスなどの公共交通が独立採算制前提で商業ベースに乗りやすいということだ。この辺を見ると、一応中枢都市を名乗るだけのことはある。②は、自動車利用の潜在需要を抑制している点ではその通りだと思う。③は、広島市は福岡市同様に市交通局ではなく、民間事業者による都市交通事業の運営が執り行われた歴史がある。東京圏や関西圏のように鉄道主体ではないが、公共交通インフラの構築には大いに貢献した。それが、モーターリゼーションが進んだ今日でも、土台として生き高い公共交通分担率に寄与している。その反面、中小ではなく、弱小事業者が多く、経営規模が小さくサービス維持のための必要な設備投資が出来ないジレンマに陥っている。低い低床車両導入率、インフラ投資に必要な事業者負担が難しく、これが路面電車やバスの高度化-疑似LRT&同BRT化-を停滞させている要因にもなっている。指標2の作成は結構な手間がかかったので、このまま終わるのも寂しいので感想を述べたい。可住地の人口密度と一世帯当たりの自動車保有台数が公共交通分担率と密接な関係があることが伺える。現時点である程度の公共交通利用がある中枢都市クラスだと、公共交通が抱える課題を克服したり集約都市化の流れで公共交通分担率の上積をが期待できるが、中核都市クラスだと現行の分担率が低過ぎて少々のテコ入れぐらいでは、瀕死の公共交通の再生は覚束ないかも知れない。都市構造など長年の積み重ねで、立地適正化計画とてインセンティブを与えての誘導政策だ。スプロール化の抑制になっても、5~10年で劇的に変化するものではない。

その2へ続く

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