カテゴリー記事 広島の都市問題 郊外・その他
【考察その1】
本格衰退都市待ったなしの広島市
どんな言い訳も利かなくなってしまった・・・

画像1 22年転出超過が21大都市ワースト1位だった広島市の都心の様子(画像 『もとまちパーキングアクセス』より)


画像2 政令指定都市20市と東京特別区の21大都市の14~22年の転入・転出数と転入超過数(画像 『住民基本台帳人口移動報告 2022年結果』より)
毎年1月末に公表される総務省の『住民基本台帳人口移動報告 2022年結果』(総務省HP)で広島市は、東京特別区と20政令指定都市の21大都市の中で、転入超過数マイナス2,522人でワースト第2位で17年から5年連続の転出超過、兄貴分の広島県は転入超過数マイナス9,207人で、47都道府県で2年連続ワースト1位(合計3回目)となった。最早、どんな誤魔化しや言い訳が利かない衰退都市局面に入ってしまった。この報を聞いた広島県の湯崎知事は、『全国で一番多くなっているのと昨年からも2,000人強(転出が)増えているということで厳しい結果となったと考えてる』とし、早い段階で県内・県外の若い人に広島県内の企業の魅力を伝え県内での就職意識を高めていく考えを示した。広島市の松井市長はこの件についてのコメントは特に発していない。誰のせいとかの責任論は無駄な議論で、何かしらの手立てを講じないとただでさえ少子化による人口の自然減少が続く中、人口の社会減少-転出超過-が上乗せされたのでは、人口減少が止まらなくなってしまう。広島県の転出超過数を先頭を切ってアシストしているのは広島市で、本来であれば中国地方の中枢都市を自称しているのだから、東京圏の大都市に若年者層の流出を堰き止めるダム機能を果たすべきだが、決壊し機能していない。広島県23自治体の内、19の自治体が転出超過で転入超過は僅かに4自治体だけだ。湯崎知事の認識が甘いと思うのは、オンライン面接(大学生の就活)が増え、転出しやすい環境になったと分析しているが、これは広島県だけではないし新型コロナウイルスが蔓延する前の19年も、広島県は47都道府県ワースト1位を獲得している。湯崎県政時代だけが原因ではないので、責めるつもりはないがもう少ししっかりして欲しい。このシリーズ記事では、広島市だけにスポットを当て考えたい。
指標1 総務省の統計による広島市の転入超過数推移(単位:人)
80年 91年 98年 99年 00年 01年 02年 03年
6,855 -1,680 170 -1,276 -744 -863 -404 -594
04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年
2,180 364 409 997 1,123 1,152 1,650 1,984
12年 13年 14年 15年 16年 17年 18年 19年
1,123 1,152 -528 289 119 -359 -661 -1,220
20年 21年 22年
-427 -2,632 -2,522
指標2 地方中枢四都市の転入超過数の推移(単位:人)
14年 15年 16年 17年 18年 19年 20年
札幌市 8,609 8,106 9,315 8,952 8,283 9,812 1万,0493
仙台市 2,050 1,140 615 1,399 1,979 1,349 2,990
広島市 -528 289 119 -359 -661 -1,220 -427
福岡市 6,564 7,680 7,287 6,986 6,136 8,191 7,909
21年 22年
札幌市 9,711 8,913
仙台市 2,288 2,938
広島市 -2,632 -2,522
福岡市 7,158 6,031

画像3 転入超過が多い上位20市町村(画像 『住民基本台帳人口移動報告 2022年結果』より)
広島市は中国地方の中枢都市を自認し、都市カテゴリーでは三大都市圏の6大都市に次ぐ『札・仙・広・福』に属している。70年代頃から使われたもので、一種の都市のステータスシンボルになっていた時代もあった。この括りの都市で比較すると、広島市だけが転出超過に陥り、他の3市は相変わらず転入超過でブロックのプライメイトシティの誇りを保っている。広島市だけが、取り残され下位カテゴリー都市転落待ったなしになっている印象だ。広島市はかつてはこんな都市ではなかった。指標1は、広島市が政令指定都市に昇格した80年からの22年までの転入超過数だ。80年は、7,000人近い転入超過を記録し、今では地方最強都市になった感がある福岡市とそう変わらない水準だった。バブル経済が弾けた90年代初頭から雲行きが怪しくなり、基幹産業の自動車産業のマツダの姓遺産調整の影響もあり、転出超過が5年ぐらい続いた。その後は元の転入超過に復した。それがしばらく続き、14年頃から再び怪しくなる。17年に再度、転出超過に陥ると19年には遂に転出超過数は4桁の大台に乗り、翌20年は新型コロナウイルス蔓延による移動制限の影響で数は小幅なものにこそなったが、転出超過はそのまま。コロナ渦2年目の21年は遂に20政令指定都市の中でワースト1位になる。衰退都市のイメージが遥かに強い北九州市よりも多い2,632人は、かなりの衝撃を与えた。そして22年も同水準の2,522人も広島市が一過性の現象ではなく、衰退都市の新たな局面に入ったことを強く印象付けた。過去の転出超過は、はっきりと可視化された理由があったが、この6年のそれはそのような大きな理由が1つもなく、問題の根の深さを感じる。原因を究明しない事には有効な対策を打ち出すことなどほぼ不可能で、様々な角度からの検証が欠かせない。短絡的な『こうなったのは、市長の責任だ』だけでは起こり得ない状況なのだから・・・。原因解明の考察は次の考察からしていきたいと思う。今回の総務省の公表では、ワースト順に並べると神戸市3,174人、広島市2,522人、北九州市2,474人、岡山市2,467人、京都市2,228人になっている。広島市目線で明らかに格下都市の感がある都市を見ると、東京圏の大都市は同列視出来ないのでスルーするが、地方都市圏に限らせてもらう。転出超過だと静岡市1,379人、浜松市591人、新潟市754人、転入超過では熊本市857人で広島市と比べると、転出超過数はかなり少なく、熊本市に至っては転入超過だ。これらの都市が広島市よりも魅力的で、都市の総合力で優っているかと問われると、広島市の方がかなり上でむしろ劣っている点を探す方が難しい。そこで『だから、現在の市長や県知事に問題がある』と結びつけるのは浅はかな間違った感情的な思考で導いたものだ。そこで、広島市が転出超過都市の常連に陥った原因らしきものを素人なりに可能性があるものから下記に並べてみる。
指標1 広島市が転出超過都市の常連に陥った考えられる原因
疑惑1 『広島市の都市インフラ整備が遅れに遅れているから?』
疑惑2 『広島市政のかじ取りをした歴代市長に問題があった?』
疑惑3 『東京指向が強いから、仕方がない?』
疑惑4 『進学したい大学や働きたい会社が少ない?』
疑惑5 『広島市及び、中国地方の都市の立地に問題あり?』
疑惑6 『広島市の財政難が問題?』
などが可能性があるが、考察2以降でその疑惑を1つ1つ確認したい。
【考察その2】
広島市が転出超過都市に陥った原因の検証 その1
疑惑1『広島市の都市インフラ整備が遅れに遅れているから?』について

画像4 全国21大都市の都市計画道路整備率などの指標(画像 『21大都市都市計画道路進捗状況』より)

画像5 98~18年度までの広島市の一般会計予算の普通建設費(公共事業)の総額と道路・街路整備費の金額推移(画像 『広島市を取り巻く現状について』より)

画像6 日本の21大都市と世界都市の都市計画道路の旅行速度の比較(画像 『見える化改革報告書 『道路・街路整備事業』』より)
広島市の都市インフラは昭和の時代から遅れていると指摘され続けた。この場合の比較相手は、地方中枢都市の『札(幌)・仙(台)・広(島)・福(岡)』で、都市インフラ全体のイメージは主に道路や公共交通網を指している場合が殆どだ。本当にそうなのだろうか?ブログ主は都市インフラの蓄積との相関関係はそこまでないと考える。まずは道路についての検証だ。上記画像4は21大都市の都市計画道路整備率などの指標。広島市は、83.9%と第6位で上位に位置している。これは、広島市が政令指定都市に昇格した80年以降、下水道整備と共に聖域扱いにされ毎年巨額な投資をし続けた結果だ。その聖域扱いは最初の財政健全化計画期間の初年度の98年度には解除されたが、それでもそれなりの額が投資された(上記画像5参照)。広島市だけに籠っていると何となくの印象で『広島市の道路は遅れている』と先入観に囚われがちだが、数字を見ると俯瞰視点で見れるので興味深い。『実態を反映したものではない!』となお反論したい人には、上記画像6をご覧頂きたい。これは、日本の21大都市と世界都市の都市計画道路の旅行速度の比較になる。広島市のそれは、7位で転入超過都市の仙台市や福岡市よりも高い。都市高速道路などの自動車専用道路整備が財政難や整備反対などで遅れているだけで一般道路の整備水準はそこまで低い訳ではない。それでもイメージ的にそう感じるのは、先入観を刷り込まれた上で、広島市の道路を眺めているからそうなるのだ。実態は酷くはない。逆に道路渋滞が殆どない都市などこの世には存在しない。次は公共交通のインフラ整備についてだ。どの指標を用いて、根拠とすべきかはかなり迷う。市内移動に係る公共交通分担率、市民の満足度の指標が実態を示し指標だと思うのでそれで話を進める。市内移動に係る公共交通分担率は、東京特別区56.9%、大阪市45.8%、名古屋市29.6%と3大都市圏中心都市はこんな感じ。次は地方中枢都市だが、札幌市17.1%、仙台市16.5%、広島市18.2%、福岡市23.5%、それ以下の21世紀政令指定都市はかなり低く6%前後と完全に自動車移動都市だ。速達性と定時性の問題はあるにせよ、利用観点だとある程度のネットワークが構築されているからこその高い分担率と言える。日本よりも地方都市の公共交通網が段違いに整備されている欧州都市では、人口50万人以上だと概ね18~23%ぐらいで制度が異なるので単純比較は難しいが、広島市の公共交通分担率は決して低くはない。言い方はあれだが、フル規格地下鉄がない都市では一番高いとも言える。何度も言うが問題は広電路面電車とバスの低い速達性と定時性だけが課題なのだから。高い利用率は、公共交通インフラの充実度とイコールを意味する。次は満足度を検証する。

画像7 広島市民の公共交通に対しての満足度(画像 『平成31年度(2019年度)広島市市民意識調査報告書』より)

画像8 日本の政令指定都市の中枢性偏差値(画像 『“大都市”にふさわしい行財政制度のあり方についての報告書』より)
実際にその広島市の公共交通を利用している広島市民をどう感じているのかを考える。上記画像7は、広島市民の公共交通に対しての満足度だ。サンプル数は2,000前後なので、信用するに足るものだ。一定の満足層が19年度は、64.2%と、一定の不満足層の33.4%の約2倍もある。ブログ主は半々ぐらいを予想していたが、思いのほか高い。これには少しだけ驚いた。話は少し逸れるが、速達性と定時性さえ担保可能であれば、選定機種など何でもいい。広島市の公共交通インフラの遅れで語られるのは、フル規格地下鉄のような地下式鉄・軌道線が存在しない事だ。しかし、導入の目的を大都市ステータスの獲得以外に置けば、なくても高い公共交通分担率を達成している時点でなくても問題はない。都市発展の装置の観点だと、安定成長期の90年代初頭までは地下式鉄・軌道線が都市発展に大きく寄与すると言われてきた。間違いではないが、都市の中枢性向上に一定の寄与はするがそれ以上のデメリットも馬鹿にならない。交通局の建設に際しての数千億円単位の企業債、赤字を垂れ流し積み重なる累積債務など発展の果実の実である市税増収効果だけでは賄いきれない。京都市のように東西線建設で市財政が破綻直前まで追い込まれるなど、負の側面も小さくはない。注目したいのは今回の総務省の発表で、広島市よりも地下鉄も含めた公共交通の利便性が遥かに高い筈の京都市は、16年から7年連続、神戸市は14年からの9年間の内8年間が転出超過に陥っている事実は、転入・転出超過と都市インフラとの相関関係はあまりないと断ずる証左になる。冷静に考えるとそうかもしれない。進みたい大学やその後に働きたい会社が少ないのに、『公共交通の利便性が高いから、他所に移り住むのはやめる』にならない。都市の一定の中枢性に向上に寄与すると書いたが、転入・転出超過数というのは中枢性云々の問題は多少はあるが、基本、都市全体の需要の問題で中枢性偏差値(上記画像8参照)を見ると広島市は、53.9で『札・仙・広・福』の括りでは一番低いが、極端に低い訳ではない。中枢性が転入・転出超過数が影響するというのであれば、60.2の名古屋市が転出超過数551人と言うのは説明がつかない。フル規格地下鉄などの地下式鉄・軌道線の存在がその中枢性向上につながるというのであれば、複数路線が走る札幌市、仙台市、福岡市との偏差値格差は広がっているだろし、近畿大都市圏の構成都市に過ぎないが、京都市や神戸市が広島市よりも低い事も同様に説明がつかない。都市インフラの代表的なものがまだある。地味過ぎてあまり注目はされないが、人口1人あたりの都市公園面積も欠かせない指標だ。広島市のそれは、8.3平方㍍で21大都市の中では、12位とそこまで高くはない。平均が6.8平方㍍で及第点と言えばそうなる。昭和の時代からの信奉で『広島市は都市インフラ整備が遅れているから中枢性が低い』があり、令和の時代に入り随分と減ったがまだその信者は政治家、行政、経済界に根強く居る。その教えを絶対視すると、『だから広島市から人が逃げていく』の結果となるが、これが間違いだと断言させてもらう。よって疑惑1の『広島市の都市インフラ整備が遅れに遅れているから?』は、それが原因ではないとさせてもらう。
『広島市を転出超過都市から救う方法 その2』へ続く
お手数ですが、ワンリックよろしくお願いします
【考察その1】
本格衰退都市待ったなしの広島市
どんな言い訳も利かなくなってしまった・・・

画像1 22年転出超過が21大都市ワースト1位だった広島市の都心の様子(画像 『もとまちパーキングアクセス』より)


画像2 政令指定都市20市と東京特別区の21大都市の14~22年の転入・転出数と転入超過数(画像 『住民基本台帳人口移動報告 2022年結果』より)
毎年1月末に公表される総務省の『住民基本台帳人口移動報告 2022年結果』(総務省HP)で広島市は、東京特別区と20政令指定都市の21大都市の中で、転入超過数マイナス2,522人でワースト第2位で17年から5年連続の転出超過、兄貴分の広島県は転入超過数マイナス9,207人で、47都道府県で2年連続ワースト1位(合計3回目)となった。最早、どんな誤魔化しや言い訳が利かない衰退都市局面に入ってしまった。この報を聞いた広島県の湯崎知事は、『全国で一番多くなっているのと昨年からも2,000人強(転出が)増えているということで厳しい結果となったと考えてる』とし、早い段階で県内・県外の若い人に広島県内の企業の魅力を伝え県内での就職意識を高めていく考えを示した。広島市の松井市長はこの件についてのコメントは特に発していない。誰のせいとかの責任論は無駄な議論で、何かしらの手立てを講じないとただでさえ少子化による人口の自然減少が続く中、人口の社会減少-転出超過-が上乗せされたのでは、人口減少が止まらなくなってしまう。広島県の転出超過数を先頭を切ってアシストしているのは広島市で、本来であれば中国地方の中枢都市を自称しているのだから、東京圏の大都市に若年者層の流出を堰き止めるダム機能を果たすべきだが、決壊し機能していない。広島県23自治体の内、19の自治体が転出超過で転入超過は僅かに4自治体だけだ。湯崎知事の認識が甘いと思うのは、オンライン面接(大学生の就活)が増え、転出しやすい環境になったと分析しているが、これは広島県だけではないし新型コロナウイルスが蔓延する前の19年も、広島県は47都道府県ワースト1位を獲得している。湯崎県政時代だけが原因ではないので、責めるつもりはないがもう少ししっかりして欲しい。このシリーズ記事では、広島市だけにスポットを当て考えたい。
指標1 総務省の統計による広島市の転入超過数推移(単位:人)
80年 91年 98年 99年 00年 01年 02年 03年
6,855 -1,680 170 -1,276 -744 -863 -404 -594
04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年
2,180 364 409 997 1,123 1,152 1,650 1,984
12年 13年 14年 15年 16年 17年 18年 19年
1,123 1,152 -528 289 119 -359 -661 -1,220
20年 21年 22年
-427 -2,632 -2,522
指標2 地方中枢四都市の転入超過数の推移(単位:人)
14年 15年 16年 17年 18年 19年 20年
札幌市 8,609 8,106 9,315 8,952 8,283 9,812 1万,0493
仙台市 2,050 1,140 615 1,399 1,979 1,349 2,990
広島市 -528 289 119 -359 -661 -1,220 -427
福岡市 6,564 7,680 7,287 6,986 6,136 8,191 7,909
21年 22年
札幌市 9,711 8,913
仙台市 2,288 2,938
広島市 -2,632 -2,522
福岡市 7,158 6,031

画像3 転入超過が多い上位20市町村(画像 『住民基本台帳人口移動報告 2022年結果』より)
広島市は中国地方の中枢都市を自認し、都市カテゴリーでは三大都市圏の6大都市に次ぐ『札・仙・広・福』に属している。70年代頃から使われたもので、一種の都市のステータスシンボルになっていた時代もあった。この括りの都市で比較すると、広島市だけが転出超過に陥り、他の3市は相変わらず転入超過でブロックのプライメイトシティの誇りを保っている。広島市だけが、取り残され下位カテゴリー都市転落待ったなしになっている印象だ。広島市はかつてはこんな都市ではなかった。指標1は、広島市が政令指定都市に昇格した80年からの22年までの転入超過数だ。80年は、7,000人近い転入超過を記録し、今では地方最強都市になった感がある福岡市とそう変わらない水準だった。バブル経済が弾けた90年代初頭から雲行きが怪しくなり、基幹産業の自動車産業のマツダの姓遺産調整の影響もあり、転出超過が5年ぐらい続いた。その後は元の転入超過に復した。それがしばらく続き、14年頃から再び怪しくなる。17年に再度、転出超過に陥ると19年には遂に転出超過数は4桁の大台に乗り、翌20年は新型コロナウイルス蔓延による移動制限の影響で数は小幅なものにこそなったが、転出超過はそのまま。コロナ渦2年目の21年は遂に20政令指定都市の中でワースト1位になる。衰退都市のイメージが遥かに強い北九州市よりも多い2,632人は、かなりの衝撃を与えた。そして22年も同水準の2,522人も広島市が一過性の現象ではなく、衰退都市の新たな局面に入ったことを強く印象付けた。過去の転出超過は、はっきりと可視化された理由があったが、この6年のそれはそのような大きな理由が1つもなく、問題の根の深さを感じる。原因を究明しない事には有効な対策を打ち出すことなどほぼ不可能で、様々な角度からの検証が欠かせない。短絡的な『こうなったのは、市長の責任だ』だけでは起こり得ない状況なのだから・・・。原因解明の考察は次の考察からしていきたいと思う。今回の総務省の公表では、ワースト順に並べると神戸市3,174人、広島市2,522人、北九州市2,474人、岡山市2,467人、京都市2,228人になっている。広島市目線で明らかに格下都市の感がある都市を見ると、東京圏の大都市は同列視出来ないのでスルーするが、地方都市圏に限らせてもらう。転出超過だと静岡市1,379人、浜松市591人、新潟市754人、転入超過では熊本市857人で広島市と比べると、転出超過数はかなり少なく、熊本市に至っては転入超過だ。これらの都市が広島市よりも魅力的で、都市の総合力で優っているかと問われると、広島市の方がかなり上でむしろ劣っている点を探す方が難しい。そこで『だから、現在の市長や県知事に問題がある』と結びつけるのは浅はかな間違った感情的な思考で導いたものだ。そこで、広島市が転出超過都市の常連に陥った原因らしきものを素人なりに可能性があるものから下記に並べてみる。
指標1 広島市が転出超過都市の常連に陥った考えられる原因
疑惑1 『広島市の都市インフラ整備が遅れに遅れているから?』
疑惑2 『広島市政のかじ取りをした歴代市長に問題があった?』
疑惑3 『東京指向が強いから、仕方がない?』
疑惑4 『進学したい大学や働きたい会社が少ない?』
疑惑5 『広島市及び、中国地方の都市の立地に問題あり?』
疑惑6 『広島市の財政難が問題?』
などが可能性があるが、考察2以降でその疑惑を1つ1つ確認したい。
【考察その2】
広島市が転出超過都市に陥った原因の検証 その1
疑惑1『広島市の都市インフラ整備が遅れに遅れているから?』について

画像4 全国21大都市の都市計画道路整備率などの指標(画像 『21大都市都市計画道路進捗状況』より)

画像5 98~18年度までの広島市の一般会計予算の普通建設費(公共事業)の総額と道路・街路整備費の金額推移(画像 『広島市を取り巻く現状について』より)

画像6 日本の21大都市と世界都市の都市計画道路の旅行速度の比較(画像 『見える化改革報告書 『道路・街路整備事業』』より)
広島市の都市インフラは昭和の時代から遅れていると指摘され続けた。この場合の比較相手は、地方中枢都市の『札(幌)・仙(台)・広(島)・福(岡)』で、都市インフラ全体のイメージは主に道路や公共交通網を指している場合が殆どだ。本当にそうなのだろうか?ブログ主は都市インフラの蓄積との相関関係はそこまでないと考える。まずは道路についての検証だ。上記画像4は21大都市の都市計画道路整備率などの指標。広島市は、83.9%と第6位で上位に位置している。これは、広島市が政令指定都市に昇格した80年以降、下水道整備と共に聖域扱いにされ毎年巨額な投資をし続けた結果だ。その聖域扱いは最初の財政健全化計画期間の初年度の98年度には解除されたが、それでもそれなりの額が投資された(上記画像5参照)。広島市だけに籠っていると何となくの印象で『広島市の道路は遅れている』と先入観に囚われがちだが、数字を見ると俯瞰視点で見れるので興味深い。『実態を反映したものではない!』となお反論したい人には、上記画像6をご覧頂きたい。これは、日本の21大都市と世界都市の都市計画道路の旅行速度の比較になる。広島市のそれは、7位で転入超過都市の仙台市や福岡市よりも高い。都市高速道路などの自動車専用道路整備が財政難や整備反対などで遅れているだけで一般道路の整備水準はそこまで低い訳ではない。それでもイメージ的にそう感じるのは、先入観を刷り込まれた上で、広島市の道路を眺めているからそうなるのだ。実態は酷くはない。逆に道路渋滞が殆どない都市などこの世には存在しない。次は公共交通のインフラ整備についてだ。どの指標を用いて、根拠とすべきかはかなり迷う。市内移動に係る公共交通分担率、市民の満足度の指標が実態を示し指標だと思うのでそれで話を進める。市内移動に係る公共交通分担率は、東京特別区56.9%、大阪市45.8%、名古屋市29.6%と3大都市圏中心都市はこんな感じ。次は地方中枢都市だが、札幌市17.1%、仙台市16.5%、広島市18.2%、福岡市23.5%、それ以下の21世紀政令指定都市はかなり低く6%前後と完全に自動車移動都市だ。速達性と定時性の問題はあるにせよ、利用観点だとある程度のネットワークが構築されているからこその高い分担率と言える。日本よりも地方都市の公共交通網が段違いに整備されている欧州都市では、人口50万人以上だと概ね18~23%ぐらいで制度が異なるので単純比較は難しいが、広島市の公共交通分担率は決して低くはない。言い方はあれだが、フル規格地下鉄がない都市では一番高いとも言える。何度も言うが問題は広電路面電車とバスの低い速達性と定時性だけが課題なのだから。高い利用率は、公共交通インフラの充実度とイコールを意味する。次は満足度を検証する。

画像7 広島市民の公共交通に対しての満足度(画像 『平成31年度(2019年度)広島市市民意識調査報告書』より)

画像8 日本の政令指定都市の中枢性偏差値(画像 『“大都市”にふさわしい行財政制度のあり方についての報告書』より)
実際にその広島市の公共交通を利用している広島市民をどう感じているのかを考える。上記画像7は、広島市民の公共交通に対しての満足度だ。サンプル数は2,000前後なので、信用するに足るものだ。一定の満足層が19年度は、64.2%と、一定の不満足層の33.4%の約2倍もある。ブログ主は半々ぐらいを予想していたが、思いのほか高い。これには少しだけ驚いた。話は少し逸れるが、速達性と定時性さえ担保可能であれば、選定機種など何でもいい。広島市の公共交通インフラの遅れで語られるのは、フル規格地下鉄のような地下式鉄・軌道線が存在しない事だ。しかし、導入の目的を大都市ステータスの獲得以外に置けば、なくても高い公共交通分担率を達成している時点でなくても問題はない。都市発展の装置の観点だと、安定成長期の90年代初頭までは地下式鉄・軌道線が都市発展に大きく寄与すると言われてきた。間違いではないが、都市の中枢性向上に一定の寄与はするがそれ以上のデメリットも馬鹿にならない。交通局の建設に際しての数千億円単位の企業債、赤字を垂れ流し積み重なる累積債務など発展の果実の実である市税増収効果だけでは賄いきれない。京都市のように東西線建設で市財政が破綻直前まで追い込まれるなど、負の側面も小さくはない。注目したいのは今回の総務省の発表で、広島市よりも地下鉄も含めた公共交通の利便性が遥かに高い筈の京都市は、16年から7年連続、神戸市は14年からの9年間の内8年間が転出超過に陥っている事実は、転入・転出超過と都市インフラとの相関関係はあまりないと断ずる証左になる。冷静に考えるとそうかもしれない。進みたい大学やその後に働きたい会社が少ないのに、『公共交通の利便性が高いから、他所に移り住むのはやめる』にならない。都市の一定の中枢性に向上に寄与すると書いたが、転入・転出超過数というのは中枢性云々の問題は多少はあるが、基本、都市全体の需要の問題で中枢性偏差値(上記画像8参照)を見ると広島市は、53.9で『札・仙・広・福』の括りでは一番低いが、極端に低い訳ではない。中枢性が転入・転出超過数が影響するというのであれば、60.2の名古屋市が転出超過数551人と言うのは説明がつかない。フル規格地下鉄などの地下式鉄・軌道線の存在がその中枢性向上につながるというのであれば、複数路線が走る札幌市、仙台市、福岡市との偏差値格差は広がっているだろし、近畿大都市圏の構成都市に過ぎないが、京都市や神戸市が広島市よりも低い事も同様に説明がつかない。都市インフラの代表的なものがまだある。地味過ぎてあまり注目はされないが、人口1人あたりの都市公園面積も欠かせない指標だ。広島市のそれは、8.3平方㍍で21大都市の中では、12位とそこまで高くはない。平均が6.8平方㍍で及第点と言えばそうなる。昭和の時代からの信奉で『広島市は都市インフラ整備が遅れているから中枢性が低い』があり、令和の時代に入り随分と減ったがまだその信者は政治家、行政、経済界に根強く居る。その教えを絶対視すると、『だから広島市から人が逃げていく』の結果となるが、これが間違いだと断言させてもらう。よって疑惑1の『広島市の都市インフラ整備が遅れに遅れているから?』は、それが原因ではないとさせてもらう。
『広島市を転出超過都市から救う方法 その2』へ続く
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