封入体筋炎患者闘病記

 封入体筋炎患者のヒロです。病歴は2019年で満11年、12年目に入りました。在宅勤務の仕事とリハビリの日々を送り、細やかながらも家族3人で暮らしています。ブログ記事は闘病記と広島地元ネタ、社会保障などの時事ネタ中心です。希少疾患の封入体筋炎の周知が目的です。関心があれば、ツイッターなどでご紹介していただければ幸いです。疾患関係で直コメントが苦手の方は、ツイッターのダイレクトメールを利用してください。封入体筋炎の闘病史は各進行段階の症状や生活障害、必要な社会保障制度等をまとめています。良ければ参考にしてください。最新の封入体筋炎の状況は『近況について色々と』、取り組んでいるリハビリについては『2019年春~夏 筋疾患(封入体筋炎)リハビリ』にて素人の体感目線で書いています。モバイル版で読みにくい場合は、PC版に転換してからお読みください。

2016年01月

 いつもスタジアムや筋疾患の記事では、飽きるので別の話題を取り上げたい。広島大未来創生センターについてだ。同大学の東広島市への統合移転から約21年。今日はその動きを追いかけたい。それからもう1つ以下はいつものように中国新聞の要約文記事となる。
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広島大未来創生センター近く完成
医療系学生「都心回帰
  3学部400人東千田で教養教育
~1月15日中国新聞 1面より~


 広島大「東千田未来創生センター」が近く、東千田キャンパス内(広島市中区 1.8ha)に完成する。4月には、医・歯・薬学部の1年生が学ぶ教養教育のほとんどをセンターに移すため、3学部約400人が学生が学生生活の最初から殆ど広島市で過ごすことになる。東広島市(西条地区)への同大統合移転が完了した1995年以降、最大規模の「都心回帰」になる。
  
画像 1月15日中国新聞1面より

 同大は、幅広く学問への関心を高めるために全学生に教養教育科目の履修を義務付けている。年間400科目1500クラスがあり、現在は東広島キャンパスで開講しており、医療系3学部(医、歯、薬)は必要とされる約40単位分を主に1年生の時に受講する。2016年度は、年間37科目114クラスをセンター内に移す。3学部が殆どで、哲学や歴史学といった自由選択科目も4日科目4クラスある。全学部11学部の1年生約2,400人のうち3学部は計400人余り。同大では、その400人のうち約7割が、1年生時点では教育課程を受けるために東広島市で生活していたと見ている。

 霞キャンパス(下記画像参照)での専門科目が忙しくなる2年生に上がる際、広島市に引っ越すケースが多かったという。教養教育科目の移転には、学生の利便性向上につなげる意味合いもある。しかし、「他学部の多様な背景を持つ学生と接する機会も必要」(教養教育本部副部長 林光緒教授)として1年間のうち週2日は、東広島キャンパスで学ぶ機会も設ける。大規模な学生移動について東広島市内で不動産事業を営む男性(70)はこう語る。「少し寂しい。アパートの空き室が増えそうだ。」と。

 広島大未来創生センターは、広島大本部跡地の活用のために同大学や広島市が掲げる「知の拠点」構想(下記リンク参照)に位置付けた施設の1つ。鉄筋4階建て、延べ面積約4,800㎡。講義・会議室のほかに産学連携のためのプロジェクトルームも設ける。3月28日に完成の記念式典を開く。

 
ひろしまの「知の拠点」再生プロジェクト~(広島市HP)

imageimage
画像 1月15日中国新聞1面の拡大画像
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 この記事では、殊更「都心回帰」を強調しているが、元来広島市内のキャンパスで学ぶ学生を大学の方針で遠隔地の本部に通わせていたのを利便性向上の為に近隣地に移した、だけとも言える。この記事を書いていて思ったことがある。私が卒業した都内の某大学は、キャンパスが市ヶ谷、多摩、小金井の3か所にあった。縦割りは、学部によりキャンパスが異なる代わりに、4年間通じて同じキャンパスに通えるメリットがあった。私は市ヶ谷キャンパスで、定期利用で新宿に寄り道が出来たし、その気になれば渋谷や六本木なのも20分圏内。アルバイトするにも便利だったし、バブル期でもあったので人生で最高の時期を過ごせた。逆に横割りは大変だ。学部数が多い総合大学だと、横割りの場合1~2年生は郊外の多摩地区キャンパス、3~4年生は都心部キャンパスのパターンが多い。地方出身者が下宿先を決める場合、この両キャンパスの中間地点になる。3年生時に2年生の必修科目の単位を落とした場合、悲惨である。落とした必修科目の受講のために移動を強いられる。当然時間割設定も制限が出てくる。個人的には、総合大学は縦割りのほうが絶対に良いと思う。
広島大学病院構内地図の画像
画像 広島大学病院パンフレットより 広島大学病院と広島大学霞キャンパス構内地図(広島市南区)。上半分が霞キャンパスである。記事の3学部は2~6年生時は、このキャンパスで学んでいた。

 広島大学の場合、医・歯・薬の3学部は遠隔地キャンパス間で縦・横割り併用制を学生に強いていた。都内の場合、広島とは比較にならないほど都市交通(JR、民鉄・地下鉄など)が発達しているので深刻な問題にはならない。地方の広島の場合はこうはいかない。引っ越し費用など親の負担を考えると、「無茶させてるな」が正直な感想だ。文系学生に比べ、アルバイトするにも様々な制約が多い理系学生の親御さんに同情してしまう。入学して僅か1年で引っ越しを強要させるなど、親からすれば「悪魔の所業」(笑)に等しい行為だ。それを思うと、今回の東千田キャンパス内に完成する
広島大未来創生センターに移すことは学生にも親御さんにも朗報だと思う。寧ろ遅すぎたくらいだ。教育の理想を掲げ、学生諸氏に守らせるのは良いと思うが実態をよく見て判断してほしい。

  
次はこの決定を受けた周辺住民(千田地区)は、新聞報道によるとこの動きを大歓迎している。この地域一帯は広島大学本部があった時代も紙屋町・八丁堀地区に押され商業機能の低下(タカノ橋商店街)が著しかった。1995年の移転完了、そして2000年代に入り宇品・皆実町地区の大型商業施設進出(ゆめタウン・イオン)が相次ぎ衰退の一途だった。頼みの綱の広島大本部跡地利用計画(県庁・がんセンター・サッカー専用スタジアムなど)が、浮上しては消えた。2006年に「ひろしまの『知の拠点』」プロジェクトが発足して、アーバンコーポレーションを中心に開発する案がコンペ1位となった。しかし、アーバンコーポレーションの経営破綻で仕切り直しとなった ~広島大学本部跡地の活用~(広島市HP) そしてようやく2018年完成までこぎつけた。

 後この地区には、旧理学部1号館の保存・活用の課題が残る。1931年に建てられ、市の被爆建物指定されている。耐震基準を満たしていないので震度6の地震が起きた場合倒壊する可能性がある。現在広島市では、アイデアを募り
(※1月15日で終了)新年度内に方針を決める。~広島大学旧理学部1号館の保存活用にアイデアをお寄せください~(広島市HP) このリンクページを見ると、全体保存で40.6億円、一部保存でも18.5~33.4億円の改修費用がかかる。理想は全面保存だが、この金額だと現実には厳しい。一部または象徴保存で、被爆の惨劇が分かるように残すのがベターかなと思う。この地区の地元住民で作る「広大本部跡地活用促進委員会」では、被爆建物の一部は保存して、残りはすべての教養課程の学生が学べる高層ビルの建築を要望し、周辺商店街、町内会とで共同提案している。これは広大全11学部の教養課程を指していると思うが、流石にこれはどうかなと思う。移動手段が公共交通だけでカバー出来ない地方では横割り(学年ごとにキャンパスが異なる)は引っ越しを伴う。

 それに「何を今更」と思う。手狭な敷地が時代のニーズに応えられなくなり、郊外に新キャンパスを求めるのは仕方がなかった。これは何処の総合大学でもそうだ。70年安保の学生運動が契機になり1972年に西条、可部、五日市を統合移転先候補に挙げ、1973年に西条への統合移転を決定した。 ~広島大学の歴史~(P12参照)広島大学が学生運動で「迷惑施設化」していた背景があったにしろ、移転反対運動もせず指をくわえて見ているだけだった。広島市もまたそうである。移転候補地として可部、五日市地区が候補に挙がっている。五日市は1985年に市に編入なので置いておく。可部地区は1972年に広島市に編入されている。移転の受け皿として積極的に働きかけるべきだった。西条への移転が避けられない場合でも、文系学部の存続を強く働きかけ、他学部移転後東千田キャンパスで高層化させていれば、もう少し違った形になっていた。広大本部市外転出は空港の移転とともに、MICE戦略を掲げる広島市の大きな手枷、足枷になっている。学術・研究機能を軽視したツケが大きくのしかかっている。
これだけが理由ではないが、広島市の中枢性低下の一因となっている。

広大移転と千田町商店街活動


 
hirodai-image2014
画像 鯉党のひろしま街づくり日記より  「知の拠点」の整備イメージ図。広島大学東千田キャンパスが隣接する跡地(11.4ha)では、三菱地所レジデンス(株)主導による広島ナレジッアパークとして整備が進む(2018年完成) ~ひろしまの「知の拠点」再生プロジェクト~(広島市HP)
 





続く。



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シリーズ記事 2011年病名が変わった日
関連記事 2008年の出来事


 
この記事は2011年、病名がミトコンドリア脳筋症から現在の封入体筋炎に変わった当時の様子を書いている。文中ではわざと役職名、業界用語、他の表示する言葉も曖昧な表現にしている。前回記事では、当時「刑〇所」と言う隠語で、軽侮されていた「特定子会社」(厚労省HP)送りが決定的になり、そして大学病院から、検査入院のお知らせの連絡が入ったところまでを書いた。その続きから始める。

 敵ボスとのやり取りがあったその夜、家内に全てを打ち明けた。元々家内とは、行内恋愛で結婚した。私が33歳の時だった。この当時だと少し遅いほうなのだが、東京時代は彼女はいつの時代もいたが、「結婚と恋愛は別」と割り切り、気に入られていた上司(正しくは上司の上司)紹介の見合い結婚で、将来の布石にするつもりだった。諸般の事情で流れ、Uターンする際も当時の彼女との関係は、リセットしたので結婚が遅くなった。20代~30代前半の頃は、結婚などいつでもできると思っていた。広島に戻り、東京とは違う閉鎖的な村社会で、30代独身への注がれる偏見に嫌気がさして、家内と結婚した。話を戻す。どう話を切り出そうか、悩んだが考えているうちに面倒になり、そのままストレートに切り出すことに決めた。何か、向こうも話がありそうだったが、それを制して私の方から切り出した。以下はその主なやり取り。

ZONO「実は、社内のパワーバランスの問題で、
刑〇所送りがほぼ100%決まったよ。直接言い渡された。完全にジ・エンドだ。
家内 「
……………。刑〇所って、あそこだよね?あり得ない。何も悪いことはしていないのに
ZONO「そうだよ。〇〇〇〇の巣窟とも言われるあそこだ。あそこに放り込まれると、同化して同類になるか、別の病気を発症して1年以内に心身ボロボロで辞めていくかになるね。」 
家内 「パパがパパでなくなるの?」
ZONO「大人しく従えば、そうなるかもね。」
家内 「それって、本決まりの話なの?」 

ZONO「〇〇(上司)さんに頼んで手を尽くしたけど、仲間(自派閥)が先の人事でバラバラなんで限界がある。もう打つ手がない。」
家内 「なんで、パパがそんな仕打ちを受けるの?納得出来ない。」
ZONO「全くその通りだ。平身低頭で『是非うちで働いて下さい。お願いします』と言うから来たのに。10年後にはこの有様だ。恨むべきは、病気だな」

家内 「もう、〇〇(上司)さんに頼むのは無理?
ZONO「無理だね。あの人も今の自分を顧みずに助けてくれた。これ以上頼むのは流石に悪いよ」
家内 「パパはどうするつもり?」
ZONO「辞める。タイミングは決めていない。生き恥を晒してまで、しがみつくつもりはない。何れは進行して働けなくなるし予定が早まっただけ。」
家内 「あそこに行くぐらいなら、そっちの方が良いと思う。貯えもかなりあるし。」
ZONO「了解、助かるよ。で、お前の話は何?」

家内 「今日の昼間に大学病院から電話が来て今月(10月)下旬から検査入院の部屋が空くらしいよ。明日にでも大学病院に連絡して」
ZONO「前回は忙しくて、スルーしたもんな。良いタイミングだな。俺に少し考えがあるんだ。完全にはまとまっていないけど聞いてくれ」
家内 「考えって何?」
ZONO「検査入院後、真の病名が決まったら障害者申請したいと思う。俺的には痛恨の極みだけど、障害者として次の仕事を探したい。健常者であり続けるのがきつくなってきた。進行を考えるとそろそろ限界だ。再就職のための資格だと割り切る。」
家内 「その辺は任せる。でもいい考えかもしれない。」

 最後の「障害者として~」は、家内より大学病院から連絡がきたことを聞いて、咄嗟に思いついた。即興のアイデアとしては悪くないと思った。障害者になることへの抵抗はあったが、目的があれば大した問題ではない。こちらとしても扶養家族がいるのだ。プライド云々は私の中で消化すればいい。そちらの世界のことは関心が低く、知識もなかった。障害者雇用のイメージは記事にも再三出てくる「特定子会社」や知能障害者たちの作業所だった。しかし、21世紀に入り、「共生社会の実現」などのフレーズもよく聞く。「こんなのばかりじゃないだろ?」との気持ちもあった。勤務中に時間を作ってハローワークを覗いて見ようと思った。障害者雇用の実態を把握しないと動きようがない。その前に検査入院だ。これまでの説明の通り、入院に対しての大きな障害がなくなってしまった。担当医の話だと※注1筋生検を伴うのは確実で、4週間だ。本決まりになれば有給消化で仕事を休むしかない。どうせ退職前提で検査入院するのだ。気兼ねなく、持病と向き合える。大学卒業後20年間、馬車馬のように働いてきた。人生の骨休み期間があってもいいかな、と思うようにもなった。

※注1筋生検
 ざっくりと言って、筋疾患の病名特定の最終検査。各種検査(筋電図・MRIなど)を行い病名特定に至らない場合、実施する。摘出予定部位の皮膚のみ麻酔をかけて、5センチほど皮膚を切開。そこから筋肉組織を切開にて摘出する。脂肪及び筋肉には麻酔は打たない。摘出した筋肉組織を特殊な顕微鏡で観察、そして病名特定を行う。診察後、筋肉組織は本人同意のもと、
国立精神・神経医療研究センター同HP)へ送られる。広島県内では大学病院でのみ行われている。摘出部位は、上腕部が多いが、下肢の場合もある。下肢の場合、生検後、抜糸するまで(3~4日)車椅子生活を余儀なくされる。

広島大学病院の写真です。画像 広島大学病院HPより  大学病院入院棟。画像では低層に見えるが10階建て(2002年完成)である。この中は、世間の喧噪と乖離した別の世界が存在した。思い出しても不思議な空間だった。あれから4年、クライマックス(寝たきり)に近づきつつある。

 次の日の昼休みに大学病院の入院予約受付の窓口に電話を入れた。家内の話の通り、10月下旬に脳神経内科専用の入院スペース(4人部屋)が空くらしい。「期日ははっきりと決まっていないが、準備は宜しく。決まったら再度知らせる。」がその内容だった。こちらとしてもここ数日で大きな変化があり、願ったり叶ったりだ。快諾して、次の連絡を待つことにした。よく考えたら、私の携帯番号を知らせていなかった。自宅ではなく私の携帯の方に連絡するようにお願いした。早速事情を話し、有給の申請をしようとした。ただ正式な日程が決まっていない。通常であればこのような申し出は認められない。申請日の事務処理上の変更など、担当者の一存でどうとでもなる。「個人の意思ではなく上からの意向で~」と一言申し添えれば、相手も素直に従う。それでも難しい場合は、上司に頼めば簡単に通る。実際には案に相違して、この申し出はすんなりと認められた。担当者は阿吽の呼吸で、こう言った。「日程が決まったらすぐに知らせて」。申請日の欄は空白だった(笑)これについては感謝の気持ちは全くない。内心、「これぐらいの便宜は図れ」と思っていた。これで1つ大きな問題が片付いた。

 次は障害者雇用の実態を知ることだった。ハローワークを覗いてみた。このハローワークは広島在住の方なら、よくご存知のあのタワーマンション近くにある。1階は雇用保険の認定日でよく使う待合と総合受付がある。2階は受付、検索ルームと相談窓口がある。よく聞くと障害者は1階らしい。1階のトイレの左手に目立たない隠しエリアがある。そこがそうらしい。何やら世間の扱いを象徴しているようにも感じて、冷めた笑いが。この時は障害者予備軍なので、受付で相談は出来ない。2階とは異なりパソコン検索ではなく、ファイル形式だった。差し迫った相談でもないので、ファイル閲覧でも十分だ。求人企業は、割と名が通った企業が募集をかけていた。驚いたのは給与欄だった。非正規での募集が殆どなので、本当に低い。大学生の休み中のアルバイト並みだ。現在(2011年当時)の1/3~1/4程度が多く、中にはそれ以下もある。

 実は、ハローワークで求人募集を見るのはこの時が初めてだった。40代前半で初体験をした(笑)笑ったのは、私が勤めていた金融機関の例の特定子会社も求人募集をかけていたことだ。この日最大の笑撃だった。後は、企業形態だ。大きな企業グループの子会社であれば特定子会社で要注意だ。全ての企業がそうとは思わないが、やはり可能性が高い。このスペースにいる人間はみな私服姿でラフな格好だ。私一人がスーツであり、多少の気恥ずかしさもあり30分程度でハローワークを後にした。この時に実感したのは手ぶらではきつい、であった。これについてはこれからの話の中で語りたい。それから10日後、私の携帯電話に大学病院から連絡が入った。




続く。




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シリーズ記事 多機能・複合型スタジアムの実現に向けて
関連記事 広島市長会見(スタジアム問題について)

 前回記事では、万が一新スタジアムが建設される場合の最有力候補の広島みなと公園のアクセスについて考えた。現状では厳しいが本気で取り組むのであれば、解決可能とした。今日は、多機能複合スタジアム化で観客動員を伸ばした事例を紹介したい。オランダリーグ1部に所属するFCフローニンゲン(公式HP)のスタジアム 「ユーロボルフ」だ。参考文献を見ながら詳細をまとめてみた。その前に多機能・複合スタジアムの説明を貼り付けておく。

スタジアムの類型
1 優れた集客装置型
 欧州のビッククラブのスタジアムに多いパターン。スタジアム全体が「劇場」と化して、サッカー観戦視点で優れた機能と集客力を持つスタジアム
2 多機能型 
 スタジアム内に宿泊施設・会議室・映画館・その他スポーツ施設などの多目的機能を持たせたスタジアム。試合数の問題から、施設の稼働率向上を目的としている。

3 多機能・複合型
現在の世界のスタジアム建設の潮流となっている。このタイプは、2ケースに分かれる。
a 既存施設活用による多機能・複合型  
都心部など開発スペースが限られる場合、隣接する商業施設・ホテル・公共施設に複合機能を任せスタジアムを多機能化して相乗効果を図る。欠点は、立地上コスト高になること。既存施設は、コスト回収の対象外のために収益向上に難がある。建設コスト高額な場合やそれに見合う資金調達が出来ない場合は、実現が難しい。
b 大規模遊休地活用による
多機能・複合型
 都心部の隣接地域や郊外の大規模遊休地(5.0ha以上)に多機能スタジアムを建設して、開発エリアに
商業施設・ホテル・公共施設・住宅などを配置するパターン。郊外の場合は、大規模駐車場、交通アクセス整備も求められるのでトータルコストは決して低くない。
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動画 ユーチューブより  

ユーロボルフの概要

1 所在地
 オランダ フローニンゲン市 
2 開場年 2006年1月
3 施設所有者・施設管理者 EUROBORG N.V.(市100%出資の子会社)
4 建設費(2004年平均
相場 1ユーロ=130円で試算)
72.8億円
(多機能スタジアム部分59.15億円+土地代13.65億円)
5 収容人数 22,500人 6 使用クラブ 
FCフローニンゲン(公式HP)
7 立地条件
・建設地は元発電所跡地。市南東部の再開発事業(20ha)による複合開発でスタジアムの他複数の施設が誕生した。
・フローニンゲン市中心部より南東2km、自転車で10分、最寄り鉄道駅から徒歩5分、アムステルダム、オランダン南部、ドイツ北西部を結ぶ欧州自動車道の結節点となっており自動車利用も好アクセス。
8 多目的スタジアムの概要
・試合開催日以外の日の賑わい性を保つためにスタジアム内に映画館、レストラン、カジノ、オフィス、専門学校などを併設、1000台の駐車場も整備、スタジアム自体 多機能複合施設化。
9 複合施設の概要
・スタジアム以外の施設は、マンション、スーパー、オフィス、フィットネスクラブ等の施設が再開発エリア内に並ぶ。
 動画 ユーチューブより

10 管理運営体制
・スタジアム建設前 市とデベロッパー3社の合同会社で50%出資の
EUROBORG N.V.」を設立。
・スタジアム完成後 合同会社の株式を市が引き取り、100%出資とした。
・スタジアム建物 機能毎に7社による区分所有形態。利害調整組織を設立
11 スタジアム建設資金調達法
スタジアム建設費は59.15億円、土地売却益(22%)駐車場収入(32%)
、市と地方政府からの補助金、借入金などの公的資金(35%)が占める。土地は市の100%出資会社の「EUROBORG N.V.」が市から買い取り、その後開発を手掛けるデベロッパーに転売した。
12 建設効果
・興行収入が10.4億円から16.3億円に約1.56倍の増加。
・スタジアム新設により、安全性とイメージの改善に貢献。限られた階層の来場から多様な階層(家族連れ
)のサポーター化に成功する。開場後7年間 1試合平均19,000~22,000人台を維持。会場前は、1試合平均11,000人台だった(旧スタジアムは11,500人収容)
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 さて、始める。海外のスタジアムを見て思うのが、建設コストと地価の安さに驚く。今日紹介したユーロボルフは、多機能型スタジアムで22,500人収容で59.15億円、土地代は13.65億円だ。土地代はマツダスタジアムの54.63億円とでは4倍差。建設コストは広島みなと公園案では、スタジアム部分だけで143億円、ユーロボルフの2.4倍だ。耐震基準などの安全基準と資材・人件費の相違で、こうも変わるものかと思う。日本の公共事業の高コスト体質の一端がこの辺りにも見える。

 注目は資金調達だ。スタジアム建設資金の54%が土地売却益(32% 18.9億円)と駐車場収入(22% 13億円)で賄われている。推測だが、先に複合部分の商業施設などを建設してそちらで得た収益の一部を資金調達に回したのだと思う。上手いやり方だ。極力行政サイドの支出を減らす努力の跡が伺える。この方式を、かすかに可能性として残っている広島みなと公園に当てはめると、どうなるか?を考えてみようと思った。しかし、みなと公園は広島県の港湾緑地だ。多機能・複合スタジアム建設の主体者は広島市である。広島市がこれをやる場合は、県から土地を買い取らなければならない。因みに現在マツダスタジアムが立地する旧貨物ヤード跡地(11.6ha)は、1998年に広島市土地開発公社が約110億円で買い取っている。広島みなと公園の敷地面積は、8.4ha、買い取り費用は安く見積もっても70~80億円。多機能スタジアム143億円に複合施設部分の2万㎡のMICE施設が加わると、コスト回収など永遠の夢と化す。回収不可能となれば、当然将来の世代に重荷を残すことになる。この地でスタジアム実現する場合、買い取り方式ではなく県からの貸借で土地使用料を支払う方式になるだろう。

 スタジアム建設に「マツダスタジアム方式」を当てはめることへの多少の無理を感じる。新設施設でプロクラブがメインに使うので採算性を求めるのか?今後1970~80年代、高度成長期や政令市に移行(1980年)した際に建設した膨大な数の公共施設建て替えにもこの方式を当てはめるのか?後者であれば、公共施設の統廃合や建て替えなど進まない。恐らく前者だと思われる。判断基準が「公益性」の有無になる。アマチュアスポーツ中心で市民に浅く広く使われる場合のみ公益性があり、プロスポーツ利用には公益性が存在しないのか?非常に難しいところだ。「興行により収入を得ることが公益性の概念に反する」が判断の分かれ目なのだろう。その一方で、こうした公共施設の維持管理が財政難から捻出出来ず、ネーミングライツや指定管理者制度の活用で民需を取り込む形で行われている。施設使用に公益性を求めながらも、維持管理には反公益的なもの(ネーミングライツなど)を自ら使う。整合性に欠けているようにも感じるのだ。これは諸制度を批判しているのではなく、行政のWスタンダードを批判しているのだ。プロスポーツ興業であっても、その地に住み納税の義務を果たしている市民の支持があれば、公益性はあると考える。公益性の概念は時代とともに変わるものだ。カープとサンフレ、この2つのスポーツコンテンツは公益性がある広島市のソフトインフラだ。
 動画 ユーチューブより  旧市民球場跡地よりは敷地面積には余裕がある広島みなと公園。ただ、紹介事例のような数多くの複合施設を建設可能の広さはない。


 ~
機能・複合型スタジアムの実現に向けて 3~ の記事では、MICE複合施設化の問題点を指摘した。松井広島市長は先の定例会見で、サンフレの1試合当たりの観客動員数についても「15,000人を20,000人に上げる努力~」との発言をしている。これはサンフレのクラブ使用料の向上に言及したものだ。2014年のクラブ入場者収入は約5億円(ふっとぼーるがいすと)、リーグ戦1試合平均観客動員数は約15,000人だ(ふっとぼーるがいすと)。新スタジアムに移転した場合、その需要予測では約17,000人~約19,000人(J1平均値~J1優勝時)が予測されている ~広島に相応しいスタジアムについて~(P14参照) 入場者収入が5.6~6.3億円まで向上する計算だ。予算規模が決して多くないサンフレでは、一服の清涼剤になっても返済能力の向上に直結しない。マツダスタジアム例の5億円が収支ラインとしたら、デルタ地質で地下開発が高コストの広島にフル規格サイズの地下鉄を建設するようなものだ。個人的には、サンフレの1試合当たりの平均観客動員数は20,000人 ±2,000人が限界値だと思う。多機能スタジアムでも複合化施設を建設しても、現状では採算ベースに乗らないと帰結する。

 となると採算の壁の高さを下げるしかない。要は、資金調達部分の比率を上げて市債(借金)比率を下げれば当然、収支計算にも展望が開ける。今日紹介したユーロボルフは半分以上の54%も調達している。建設コストの違い(2.4倍)を考えると
最低でも70%、出来れば80%は調達したところだ。それを可能なものにするには、そうした意味合いで、サンフレの久保会長が昨年末からしきりに発信している「口も出すが金も出す~」に大いに期待したいところだ。広島みなと公園での理想的な多機能・複合スタジアム案については次回以降のシリーズ記事で考えたい。広島市案にもう少し付加価値を加えたもので提案する予定だ。多機能スタジアム部分にも複合機能を持たせ、もちろん複合施設も併設した多機能W複合スタジアムだ。ユーロボルフのようにだ。

続く。



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関連記事 自リハビリ

 今年に入っって広島関連の記事が圧倒的に増えて、このタイトルの名前負け状態だ(笑)少し持病関連の記事ネタが枯渇しているのもある。丁度、この冬一番の寒波が襲ってきた。この寒波繋がりで記事にしたいと思う。筋疾患の極寒対策だ。大した動きもない筋疾患患者が、防寒対策などあまり意味がないようにも思える。ところがどっこいだ大いに意味がある。今日はその話をしたい。

 寒さと筋疾患との関連性を最初に探ってみたい。これはあくまでも医学的な根拠はない。個人的な意見の1つだと割り切って読んだいただければ幸いだ。筋疾患とは関係なく、冬場は当然寒い(笑)そして寒くなると末梢血管が収縮して筋肉への血流量が減少する。そして軽い血行不良を引き起こす。そのために筋肉の体温は低下、活動に必要な酵素を血液から取り込む量が不足する。筋肉が酸欠状態となり、筋硬直現象が起きてしまう。筋硬直現象が起きると、柔軟性・持久力の低下を招き筋力自体の低下を招きかねない。この際の筋低下は筋疾患の進行とは基本的には無関係だと思われる(たぶん)

 私は、筋疾患歴約8年だ。ミトコンドリア脳筋症と封入体筋炎が各4年である。ここ2~3年まで冬場の筋硬直現象を切実なものと意識したことがなかった。これは筋疾患を発症する前もそうだった。その理由を考えてみたい。筋疾患発症前の筋肉レベル値を100と仮定する。寒さの筋硬直で95までダウンしても筋低下を体感で感じることが少ない。発症後3年(5年前)の筋肉レベル値が40とする。寒さの筋硬直で筋肉レベル値が30にまで落ちても動きにくさを感じることがあっても、筋低下の実感は少ない。発症後6年(2年前)だと筋肉レベル値が20とする。寒さの筋硬直で筋肉レベル値が15まで低下すると、筋肉レベル値の絶対値が少な過ぎて些細な変化でも敏感に感じて、筋硬直現象を強く実感するのではないだろうか?現在は筋力レベル値15で筋硬直で12ぐらいだろう。
動画 ユーチューブより  脳梗塞患者が引き起こした関節拘縮改善に効果的なマッサージの様子。介護用ベッドで行っているが、私の部屋にあるものと酷似している。ただデザインは、私のものは金具部分も木目調だ。

 
 ここで示した数字は私の感覚を適当に数値化したものなので、数字自体の信憑性はない(笑)ここ2年の特徴として3月に入り、暖かい日が徐々に増えてくると、筋力向上を実感することが多々ある。裏を返せば、気温の上昇で硬直減少から解放されて、落ちていた筋力が戻ったのかも知れない。これに関連して、新たに別の要因を加えたい。それは廃用性筋萎縮だ。この説明からする。
期間の絶対安静状態や、骨折等でギブス生活を余儀なくされた場合、筋肉の活動が大幅に低下して起きる症状のこと。関節拘縮(コトバンク)も併発して、1週間で10~15%程度の筋委縮が見られる。高齢者の場合、2週間の床上安静でも下肢筋肉の筋肉の20%が減少すると言われている。活動性の低下により、更に筋低下が進み、寝たきりになるケースが多々ある。とのことだ。4年前に検査入院後、入院前より筋低下を感じたこともある。高齢者の方の格言(?)で「入院したら悪いところは治るが、悪くないところが悪くなる」がある。言い得て妙である(笑)
 
 しかし、現在は長期入院などはしていないしこうした現象が起きる筈はないだろうと思ってしまう。これは一面正解で、間違いでもある。その理由は、先に述べ筋硬直との関連性だ。寒さによる筋硬直現象が起きると他の季節よりも運動量が減少する。筋疾患の進行で大幅な筋低下が起きている状態で動かなくなると、これに似た現象が起きる可能性があるそうだ。上肢よりも下肢の方が影響がある。筋低下のきっかけを筋硬直が作り、廃用性筋萎縮が止めを刺す、といった感じなのだろうか?その対策を少し考え、実践してみた。

1 筋硬直対策
a 自室、リビングなど頻繁に利用する部屋のエアコン使用(20℃が目安)
b 自室の電気カーペット使用 c 貼るカイロを大腿四頭筋(膝上の太腿)に使用
d 腹巻(遠赤外線タイプ)使用 e 衣類の重ね着 f ヒートテック使用
g 入浴時、シャワー温度を45度設定にする。筋低下が激しい部位は入念に温水をあてる。
h ベッドの敷布団に毛布を巻く。 i 外温が10度以下の日は外には出ない。

2 廃用性筋萎縮

a 筋トレよりもストレッチに重点を置いたリハビリ

b 立ち上がる回数を増やして暖かい部屋で動きを増やす(室内の歩行距離の大幅増加)
c 立ち姿勢の時間を増やす。

エアコンや電気カーペットは、昨シーズンも意識せずに使用していたので今更である。衣類の重ね着とヒートテック使用だが進行により、脱衣や着衣が難しくなっている。その割には硬直を解すほどの効果がない。思いついたもので現在実践しているのは、カイロ、腹巻、シャワーである。カイロは左右の足の大腿四頭筋に貼り付け、シャワーも四肢中心に温水をあてている。腹巻きは家内に頼み昨日購入して使い始めた。腹巻きが意外と思うかもしれない。最近ではダイエット効果でも注目を浴びているが、お腹を温めると体温が上昇して血流改善効果が働き、身体全体の温熱効果があるそうだ。個人差がありそうだが、さっそく試している。2~3日で効果が出るとも思えないので今シーズンは使い続ける予定だ。

 現時点での速効性があったのは、45度設定の温水シャワーだ。風呂上り直後であれば、筋硬直現象が緩和されている。ただ、その状態が永遠に続かないのですぐに元に戻る。ただ、風呂上がりの下肢の着衣の時、足の上りが少し高くなった気がする。コスト負担ゼロで多少の効果があるだけでも良しとしたい。敷布団に毛布を蒔くのも意外に悪くなかった。就寝時の体温低下がある程度は防げるし筋硬直の予防効果がありそうだ。気温10度以下の日の外出も取りやめている。諸般の事情でやむ得ないときは諦めているが、極力避けるようにしている。次の関節拘縮対策だが、全て実践している。寒い環境下での動きは先の理由で控えているが、一定の高い温度の場所であれば、問題はない。関節拘縮を誘引しないためにも疲れや痛みが出たりしない範囲で積極的に行うつもりだ。時間が許す限りだが。

 まあ、こんな感じで色々と試しているが、効果のほうはまだ「???」である。ただやらないよりはやった方が良いとは思うし、筋硬直や廃用性筋萎縮は医師も認めている。ミオパチー系筋疾患は、対処療法しか対応が出来ない。試してみて足掻くのも悪くない。こうした絶望的な状況でも人生を1つのゲームとして余裕を持って楽しむ自分がいる。最近、特に思うのが人生は「一時の夢」に過ぎない。だからこそ、精一杯頑張るしかない。世の中こうした割り切りも必要だと思う。

画像  封入体筋炎で服用している薬(記事内容とは無関係)左のピンクの錠剤は、プレドニン錠(CK値を抑える)、上はタナトリル錠(肺炎予防)、下はスピロペント錠(筋力向上)、右はガスター錠(消化剤)である。毎日欠かさず服用しているが、所詮は対処療法でしかなく、効果は殆どない。




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 今日は国内都市のLRTの話をしたい。日本初のフル規格LRT着工目前の宇都宮についてだ。まずはLRTについて説明する。LRTの概念は1972年頃、アメリカ連邦交通省都市大量輸送局 によって制定された。「路線の大半を専用軌道、一部を併用軌道(路面区間)を1両、もしくは数両編成で電気運転で走行して誰でも気軽に利用可能な交通システム」とした。高架鉄道・地下鉄のような大量輸送機関とバスのような少量輸送機関の中間的な中量輸送機関としてモノレールやAGTシステム同様に定義された。世界初のLRT開業は1978年カナダのエドモントンでモデルは、旧西ドイツで中量輸送機関建設の主役の座にあった※注ュタットバーンである。1990年代前半までLRTは都市交通の主役の座にあった訳ではない。北米・フランスなど欧米の一部の国で建設されていたの過ぎず、フランスなどでも財政規模の大きい自治体では、地下・高架式のVALシステム(ウキペディア VALの欄参照)導入が主流だった。


動画1 
ユーチューブより
 
 この流れが多く変わったのは、1994年開業のストラスブール(フランス)からだ。コンパクトシティ(都心部機能集約)を都市ビジョンに掲げ、様々な都市活性化策の包括メニューの1つとして導入した ~フランスのLRTを中心とした街づくり~ 結果大成功を収め、フランス国内でVALシステムに傾いていた自治体はLRT整備に方針転換した。コンパクトシティのモデル都市として今も世界各国から視察団が訪れる。2014年現在では世界140の国と地域で導入されている。21世紀の都市交通の潮流はLRTと言っても過言ではない。この流れは日本にも周回遅れで訪れた。1997年に路面
電車走行空間改築事業(日本交通計画協会HP)が導入された。これ以降整備に向けた諸制度は手厚くなり、今や欧米各国と遜色のない制度が整っている ~LRTの整備に対する支援~(国土交通省HP) しかし、最初の制度が確立して19年経過した今も新規開業都市はなく、2006年に旧富山港線をそのまま転用した富山ライトレールだけだ。後は、既存区間の電停バリアフリー化、超低床車両の導入、軌道改良、部分延伸、結節点改善のみにとどまる。新規導入が進まない理由は、以下の通りとなる。

日本でLRT整備が進まない理由


1〕 
採算性の壁
交通事業が独立採算制が大前提(欧州では運営費の
大幅補助あり)の日本では、導入都市が中核都市以上に限られる。官民合わせて、数多くの構想が持ち上がったが具体化した例は少ない。
2〕 住民合意の壁
車線縮小や、一方通行化等都心部や導入沿線の自動車利用制限が伴うので、住民合意形成が困難。
3〕 軌道法の壁
軌道法の縛り 1編成長30m(定
員150名程度)、最高速度40km/hの制限があるのでLRTが中量輸送機関として機能しない。海外では編成長50m以上の車両がトランジットモールを平気で走行している。軌道法がある限り、18mの連接バス(定員130名)のワンマン運転の方が、コストパフォーマンスの点で優れている結果に終わる。

 この辺を踏まえて、今日紹介する下野新聞の要約記事を読んでほしい。下野新聞の画像は、ツイッターで相互フォローしている海速亭桎梏斎さんに協力して頂いた。この場を借りて感謝したい。


※注1シュタットバーン
 従来の路面電車(トラム)の都心部区間を地下軌道、都心部近隣・郊外区間を専用・準専用軌道(高架区間は少ない)に改め速度向上を図った。優先信号等を導入して路面電車の欠点である交通信号停車を減らし、車両も改軌(1000→1435mm)、大型化、高床化(通常鉄道規格)して高速・連結運転可能にした。路面電車(トラム)の欠点を潰し、昇華させたシステム。現在のLRTの雛型にもなった。1966年にシュトゥットガルトを皮切りに1992年までに13都市で導入された。それに比べてフル規格サイズの地下鉄は、ベルリン、ハンブルクなど5都市にとどまる。~世界の地下鉄データ一覧表(メトロが地下鉄、LRTがュタットバーン)~ 近年は、地下電停の治安問題、高コストが災いして新規導入都市はない。ドイツでは地下区間があるュタットバーンをメトロ(Uバーン)と呼び、軌道整備状況が優れた路面走行のみの路線をュタットバーンと言う。類似システムでベルギーのプレメトロがある。プレメトロは、フル規格地下鉄への移行前提で整備されトンネルや駅施設は、地下鉄サイズで建設される。そこに路下電車を走らせる。

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LRT19年12月 宇都宮市特許へ実施計画
国に月内申請
 1月20日下野新聞

画像提供 海速亭桎梏斎さんより
 
 宇都宮市は19日、次世代路面電車(LRT)事業実施に必要な軌道法上の特許取得に向けた※注2「軌道運送高度化実施計画」を市議会に説明した。同計画は20日の芳賀。宇都宮基幹公共交通検討委員会、21日芳賀町議会での説明を経て月内に国土交通省関東運輸局に提出、2016年早期の認定を目指す。特許を取得できれば、7月中に施工認可を申請して速やかに事業着手。同年度内に着工する予定だ。開業予定を2019年12月とした。計画は、宇都宮市・芳賀町・宇都宮ライトレールが策定し、事業の概要や資金計画、事業効果、軌道施設の管理方法などを11項目にまとめている。

 JR宇都宮駅東口の宮みらいから芳賀町下高根沢までの14.6kmに複線軌道を施設。19の電停と車両基地1か所、変電所4か所を設置する。必要な資金は、土木費、軌道施設費、車両購入費を含めて税別で約458億円の予定だ。ワンマン運転で、最高速度は開業後当面、併用軌道区間は軌道運転規則の上限40km/hとする。その後、一部区間の50km/h運転を目指す。高架区間の専用軌道区間の一部で最高速度70km/h運転で走行して表定速度向上を目指す予定だ。軌道法の「特認」を早期に実現することを目指す。肝心の収支計算は、開業2年目の2020年に単年度黒字化を果たし、9年目の2027年に累積赤字の解消が終わる、と弾く。ただ国の人口減に伴う収支計算の見直しに従い、人件費と物価の伸びを毎年0.3%と0.2%に設定し直した。この再計算により、開業30年目の累積黒字は、31.4億円から12.2億円に引き下げられた。これについて市担当者のコメントは「より厳しい条件で試算をした。30年間を黒字で営業を継続可能だということを示したかった」と胸を張る。また計画区間の距離を15.0kmとしてきたが、施設軌道の線形などを精査した結果、14.6kmとなった。これにより運転士が4人減り、開業時の運営会社のスタッフは93人となった。
 
 

※注2「軌道運送高度化実施計画」
路面電車などの軌道運送について、より優れた加減速性能を持つ車両を用いることや利用者の乗降を円滑をするための措置などにより定時性確保、速達性向上、快適性向上などサービス向上を図る事業。実施計画の認定を受けることで、軌道法の
特例として、上下分離方式(軌道整備者と運営者が異なる方式)による軌道事業の実施が認められる。
動画2 ユーチューブより
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 この宇都宮市のLRT新規導入計画を注視する理由は、この計画が成功するか否かが、今後の日本のLRT事情の大きな試金石になるからだ。宇都宮市が成功すれば、後に続く都市が現れるだろう。失敗に終われば、現行のまま既存区間の改良のみにとどまる可能性が高い。そういう意味で大きな期待がかかる。一都市の導入成功・失敗例がその後に大きく影響した事例として、先に述べたストラスブール(フランス)とシェフィールド(イギリス)だ。両都市ともに1994年開業の路線だ。ストラスブールの大成功は、世界の都市交通を含めた都市の在り方(コンパクトシティ)にまで、大きな影響を与えた。フランス国内に目を向ければ、ストラスブール以降の新規開業(ゴムタイヤ式トラムも含む)は24
都市、工事中都市は6都市(2015年現在となっている。

 失敗例としては
シェフィールド(イギリス)だ。この都市は、起伏が激しい地形でLRT走行には不向きであった。急こう配が中心部に存在するので、それを迂回するルート選定をした結果、最短コースで路線設定をするバスとの競合に負けた。結局経営破綻してライバルのバス会社に転売された。明確な都市ビジョンを持たず、他の交通機関との調整を行わず路線ありきで導入し失敗した好例だ。急勾配が数多くある都心部は、高コストであって地下式にしたほうが成功したかも知れない ~シェフィールドスーパートラム~(ウキペディア) 結果的には、シェフィールドの失敗は後に続こうとしていた都市の計画変更、白紙撤回を招いた。日本でも堺市(大阪府)が住民合意のプロセス抜きで、「路線ありき」で導入計画を進めていたが着工目前の市長選で反対派候補が当選して計画見直しを余儀なくされている。宇都宮市のLRT計画は、一定の住民合意を得て着工目前まで漕ぎつけている。その点が異なるところだ。

 宇都宮市のLRT計画の成功が、遅々として進まない広電市内軌道線のLRT化に好影響を及ぼすことに期待する。こうした路面公共交通の高度化は費用対効果に優れた現実的な政策だが、実現の絶対条件である住民合意、道路管理をする警察の合意を得るのに時間がかかるのが難点だ。特に警察の協力なくして一歩も先に進まない。路面軌道の専用化(※注3センターリザベション・PTPS設置など)広島の鉄軌道計画としては、広電駅前大橋線(広島駅ー稲荷町交差点)、江波線接続線(西観音町交差点ー江波線)、アストラムライン西風新都線(西広島駅ー広域公園)がある。江波線接続線以外の2つは具体化している。改良計画がある区間以外の高度・LRT化の話が止まったままだ。昨年のJR山陽本線とアストラムラインの結節
(新白島駅)改善で完了の匂いさえする。
 


中国運輸局2005
左画像 路面電車のLRT 化を中心とした公共交通体系の再構築の検討調査報告書(2004年 中国運輸局)で提案された新規路線。平和大通り西・東線・駅前大橋線は飽和状態の本線BPとして、段原線・宇品東線は現行の皆実・宇品線の走行環境改善を目的に提案された。右図は、実際に認可された路線(赤矢印)。右側の駅前大橋線(稲荷町ー広島駅間)が2024年頃開通予定だ。左側の江波線接続は、緑大橋の建替え費用の問題で10年以上棚上げされている。


 現在の広電市内軌道線の表定速度は10.0km/h未満。アストラムラインの30.0km/hの1/3の水準だ。今回紹介した宇都宮市LRTの表定速度目標は20.0km/h、海外の新規導入都市のLRTの表定速度は17~25km/hだ。走行条件の差があると言え、この差は非常に大きい。鉄道ターミナルの結節点改善(乗り継ぎ時間短縮
)で速達性向上を図るのも悪くない。しかし、これだけでは弱い。海外の事例では、既存の路面走行だけで、路面電車(トラム)の高速化に成功している都市がいくつかある。ドイツのブレーメンは路面走行オンリーで表定速度22km/h、スイスのチューリッヒも表定速度17km/hで新規LRTと遜色のない水準だ。郊外新線の建設で速度平均値を上げている側面はあるが、既存区間の専用軌道化やターミナル結節点改善など積極的に取り組んでいる。この2都市は過去に地下鉄建設計画が何度か持ち上がったが、ブレーメンは財政難が理由で、チューリッヒは大きな反対運動で挫折している。広島市と何やら似ている。広電市内軌道線も表定速度15.0km/h程度まで引き上げる必要があると思う。

 動画3 ユーチューブより 既存路面電車(トラム)のLRT化が進むチェコの首都 プラハ。
 
 ある都市交通学の専門家の話だと、表定速度30km/hの地下鉄と表定速度20km/hのLRTの移動のトータル時間(出発点~目標場所までの時間)を競争させたとする。3km以内だとLRTの方が早く、5km以内だとほぼ互角、5km以上で地下鉄が早いとのことだ。電停間隔が短くかつアプローチしやすいのでこうした結果になるのだと思う。幸い、紙屋町交差点を基軸にした場合、半径2.5~3.0km以内に広島のデルタエリアがすっぽりとはまる。広島市は、次期「新たな公共交通の体系づくり(P11参照 広島市HP)の中でデルタ内の移動は、デルタ内準基幹公共交通の広電市内軌道線とバスに一任する方針を示している。費用対効果に優れ、理にかなった現実策だと思う。ただ、LRT化への施策に乏しい(PTPS設置と信用乗車方式採用のみ)。
 
 行政と交通事業者のみで解決出来る問題ではなく警察の協力が不可欠なのは言うまでもない。宇都宮市のLRT計画が成功に終われば、警察の協力も取れやすくなり行政側も今以上に積極策に打って出られる可能性があると思うのだ。その辺を期待したい。広島市政の課題として最優先されるべきは、2014年土砂災害の復興だ。次に現在進行中の大規模再開発事業で、この次に来るのがこうした路面公共交通の高度化や広島南道路の一般道部分の拡幅や延伸だと考える。スタジアム問題は市政全般目線だと、これより下位に位置するものだ。アストラムラインの都心部延伸というベストの選択が出来ない状況下で、如何にベターな選択が出来るか?、これが重要だと思う。


※注3センターリザベション
 路面軌道区間の専用化に最も効果的な方法。路面の併用軌道を車線から分離することで、Uターン等の侵入車両を防ぎ電車のスムーズな運行が可能となる。諸説あるが、これを実施すると表定速度が2.0~2.5km/h程度向上すると言われる。方式は、併用機道の白線部分に縁石やポール、生垣を設置する簡単なものから道路中央に大規模な緑地帯を設ける場合もある。センターポーール化とともに、LRTには必須の軌道整備方法。
 




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