封入体筋炎患者闘病記

 封入体筋炎患者のヒロです。病歴は2019年で満11年、12年目に入りました。在宅勤務の仕事とリハビリの日々を送り、細やかながらも家族3人で暮らしています。ブログ記事は闘病記と広島地元ネタ、社会保障などの時事ネタ中心です。希少疾患の封入体筋炎の周知が目的です。関心があれば、ツイッターなどでご紹介していただければ幸いです。疾患関係で直コメントが苦手の方は、ツイッターのダイレクトメールを利用してください。封入体筋炎の闘病史は各進行段階の症状や生活障害、必要な社会保障制度等をまとめています。良ければ参考にしてください。最新の封入体筋炎の状況は『近況について色々と』、取り組んでいるリハビリについては『2019年春~夏 筋疾患(封入体筋炎)リハビリ』にて素人の体感目線で書いています。モバイル版で読みにくい場合は、PC版に転換してからお読みください。

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カテゴリー記事 広島の都市交通 国内先進事例

今日の話題 4月25日日本経済新聞デジタル版より引用
富山地鉄とライトレールが合併 
路面電車を一体運行


画像1 富山ライトレールと富山地方鉄道の合併を伝えるニュース画像(画像 チューリップテレビより)

【記事詳細】
 富山地方鉄道(富山市)と第三セクターで路面電車を運行する富山ライトレール(同)は25日、2020年2月に合併すると発表した。両社が富山駅の南側、北側でそれぞれ運行している路面電車は20年3月に接続し、一体で運行することが決まっている。合併により従業員や車両の運用効率を高めてコストを抑えるほか、サービスも充実させる。
合併は富山地鉄を存続会社として実施、社名も『富山地方鉄道』のままとする。接続後の運行形態や運賃などは、今後協議を進めるという。

 
富山地鉄は富山市内を走る路面電車のほか、富山市内と立山(富山県立山町)や宇奈月温泉(同県黒部市)を結ぶ列車を運行している。信用調査会社などのデータによると、18年3月期の売上高は約66億円。富山ライトレールは富山市が33.1%、富山県が16.1%、残りを民間企業などが出資する第三セクターで04年の設立。JR西日本が運行していた旧富山港線を路面電車化し、運行を担当していた。鉄道事業による収入は約3億円。

【考察その1】
日本のLRT整備の先端を走る富山市
スピード感溢れる富山市(羨ましい・・・)


画像2 富山駅北口の併用軌道の路面区間を走行する富山ライトレール線(画像 日本経済新聞より)


画像3 富山地方鉄道市内線と富山ライトレールの路線図(画像 日本経済新聞より)

 OECD加盟国の中では、LRTやBRTの整備で大きく後れを取っている日本だが、それでも本場の欧州都市よりも遅々とはしているが、着実に推し進めている都市がある。既存路面電車都市では富山市、日本初の実質開業都市となる宇都宮市などである。日本においてはこの2都市は、LRT整備に関しては先端を走っている。97年、日本初の路面電車の建設補助制度の『路面電車走行空間改築事業』が創設された当時、先端を走るべきと期待された路線㌔数と利用者数で国内最大規模の広島市は、アストラムライン整備とのどちらつかずの姿勢に終始し財政難もあり、すっかりと後れを取ってしまった感がある。これについては後述ずる。富山市の既存路面電車を活用したコンパクトシティへの取り組みは、日本で初めてコンパクトシティを標榜した青森市同様に古く国土交通省が、集約都市構造(ネットワーク型コンパクトシティ)への転換を表明する以前からである。その端緒となったのが、JR西日本の旧富山港線の鉄道線からLRT線への転換(06年4月)である。流れをまとめると、モーターリゼーションの進行に伴う拡散都市化(都市のスプロール化)の影響で旧富山港線は利用者減少に歯止めがかからなかった。そこで富山市は、99年『富山市公共交通活性化基本調査』を開始。01年に北陸新幹線が事業認可を受け、03年にそれを受け富山駅周辺地区の連続立体交差化事業(富山市HP)の調査を採択した。同年、富山市の森市長が富山港線の路面電車化を表明し、話が一気に進み始めた。そして表明から僅か3年で開業した。基本インフラがあったとはいえ、このスピード感は日本の自治体では珍しい。現在の森市長(02年~)のリーダーシップには敬服するしかない。その後も森市長による既存路面電車を活用したコンパクトシティ建設は進み、09年11月日本初の公設民営上限分離方式-インフラ部は公(行政)が建設し、第3セクター及び民が運営する方式-にて富山地方鉄道富山市内軌道線の環状化の実現。15年『富山駅付近連続立体交差化事業』の関連事業で路面電車南北接続線(下記画像4参照)の第1期(160㍍)分が開通した。 ~路面電車南北接続事業『第1期区間の開業について』~(富山市HP)


画像4 富山市の『路面電車南北接続事業』の概要(画像 富山市HPより)

 引き続き第2期(90㍍)分が20年3月の開業の予定となっており、今回報道は現存する富山地方鉄道富山市内軌道線と富山ライトレールの別事業者間の相互乗り入れに備えた動きだ。他事業者間の相互乗り入れがなぜNGなのか?運賃が2社による二元化状態で、相当の割増運賃になるので相互乗り入れ効果を相殺するからだ。首都圏の東京メトロと大手民鉄線でも盛んに相互乗り入れが行われているが、運賃水準が地方都市よりも低いことや利用者の絶対数が桁一つ以上多いので然程問題視されていないが、圧倒的に人口が少なく公共交通の競合相手が自動車となる地方都市では、全くのプラスには働かない。そこでそうした弊害を取り除くべく、互いが合併して運賃を一元化しましょうになった。この2社の動きに富山市の強い意向が絡んでいるのは想像に難くない。それもその筈で富山ライトレールの筆頭株主は富山市で33.1%の株を保有し、第2位は富山県の16.1%。以下、北陸電力・インテック-10.0%、富山地方鉄道-6.0%と続いている。今回の合併劇にはこうした土壌があったのも理由だろう。広島市でいえば、アストラムラインを運営する広島高速交通を株主でもある広電(3.0%株保有)が吸収するイメージだろうか?都市交通事業が未だに営利事業として認識され、独立採算性が大前提の日本では、都市交通圏域の運賃を一元化させるドイツの運輸連合のような組織はない。これは運輸連合が、独占禁止法が定める競争の実質的制限にあたるとして企業連合とみなされ、NGとなっているからだ。近年この解釈の見直しが進みつつあるが、実現は当分先の話で現状では今回のような形がベター案となる。資本金が5億円弱の小企業だからこそ買収が可能だった側面はあるが、良い傾向には違いない。


画像5 現在進められている富山市の路面電車整備の事業計画群(画像 富山市HPより)


画像6 富山市のLRT将来ネットワーク構想図(画像 富山市HPより)

 今後の展開だが、現在進行中のものでは南北接続線第2期分以外では、富山ライトレール関連で新停留所の整備、一部区間の複線化(共に上記画像5参照)が進められている。長期構想だと現在は鉄道線である富山地方鉄道不二越・上滝線(12.4㌔ 11駅)と市内軌道線との相互乗り入れ(同線のLRT化)が検討されている。老朽車両では、同線の勾配の登坂応力の問題で不可能とされているが、登坂能力に優れた車両の投入や同線の600Vへの架線電圧の降圧処置、軌道線車両ホーム増設でクリア可能で、建設コストも新線建設よりも格段に安価だ。よって、掛け声倒れで終わりがちの他の地方構想路線よりも実現する可能性は高いとブログ主はそう考えている。実現の鍵は、行政の補助をどこまで適用可能かになりそうだ。LRT新線とみなしMAX補助の55%なのか、
それとも既存線区間の改良として国、地元行政(県と市)、事業者(富山地方鉄道)の1/3の均等負担なのか?。裏技的な整備主体の第3セクター会社を設立し、事業者負担をほぼゼロとした上で整備後第3セクター会社は清算し、運営を富山地方鉄道に一任する方式とするのか?見ものである。ブログ主は、整備主体の第3セクター会社設立方式が無難だと考える。ただこれには、公共交通網は社会全体の公有財であるとの住民合意が必要となる。富山市の恵まれている点は、その都市規模の割(失礼!)には、鉄軌道インフラがそれなりに整っており、少し手を加え高度化すると劇的に生まれ変われることだ。郊外地区への新規投資の労力を考えると大きなアドバンテージだ。もう一つ言えば、JR西日本の旧北陸本線(富山県部分-現あいの風とやま鉄道)、高山本線共にレール幅が1067㍉と同じで、相互乗り入れ(トラムトレイン化)の余地も十分残しているも好条件だ。まあ、可能性としての話だが・・・。2000年以降のデータはなかったが、99年の各移動手段の分担率では、徒歩13.5%、二輪車10.1%、自動車72.2%、公共交通4.2%と中核都市圏では最も高い自動車依存都市となっている。因みに広島市は、徒歩19.0%、二輪車17.1%、自動車47.6%、公共交通16.0%である。日本の地方都市はコンパクトシティの本場の欧州各国の地方都市よりも総じて拡散都市化が進行し、公共交通網が死滅寸前で、自動車依存度が高いのがその特徴だがその中でも富山市は高い。そうした現状に強い危機感を持ち、先陣を切ってのコンパクトシティ転換だった。下記画像7は公共交通の利用者数の推移だが、富山地方鉄道の鉄道線と軌道線が横ばいもしくは微減に対して、バスは51.3%、JRは7.8%の減少幅を示している。公共交通の利用者の増加は、整備だけでは成就しない。公共交通移動需要を増やす都市構造にしない限り、大きな成果は得られない。短・中期的な取り組みだけでは目に見える効果はすぐには上がらない。息の長い取り組みが肝要だ。コンパクトシティ=コンパクト・プラス/ネットワーク(集約都市)の先駆者である富山市の今後に注視したい。


画像7 富山市内の98~15年までの各公共交通利用者数推移(画像 富山市HPより)

【考察その2】
地下式鉄・軌道整備に引き続きLRT整備でも後れを取った広島市
富山市に見習うべきはスピード感


画像8 左が99年策定の『新たな公共個通の体系づくりの基本計画』で示されたアストラムライン延伸・新設計画。右が15年策定の『公共交通の体系づくりの基本計画』で示された同計画(画像 広島市HPより)

 広島人の面白い反応として、上位カテゴリー都市には遜(へりくだ)る癖に、下位カテゴリー都市には必要以上に偉ぶる点がある。『何だかな』と冷ややかな視線を黙して送るしかないが、物事をドライにしか捉えないブログ主目線だと不思議に映る。下位カテゴリーの都市を参考事例に引き合いに出すと『広島市は100万都市だから』『広島市は中枢(政令指定)都市だから』などと言い訳というか、虚勢めいた反論が来るのが常である。都市規模を論じているのではなく、その斬新な手法なりを広島市でもどうか?の話なのだが、通じない。広島市は過去にHATSⅡに代表されるフル規格地下鉄計画が反対でとん挫し、新交通システム(AGT アストラムライン)計画も第1期区間-本通~広域公園前18.4㌔-が開通したまま、それからは四半世紀が経過したが1㍉も延びていない。考慮すべき点として、二度の財政難があり約10年間の財政健全化計画期間があったことだ。これは進まなかった理由にはなる。もう一つはブログ主の主観となるが、公共交通網整備の柱をアストラムラインとするのか、それとも既存の公共交通機関の路面電車とバスの高度化(疑似LRT・同BRT化)とするのか、腰が定まっていないことがあるのではなかろうか?中途半端に二兎を追いかけている印象がある。現在アストラムラインの西風新都線は事業化され、30年頃の全線開通が予定されている。アストラムラインの延伸・新設については上記画像8の左側の計画が99年に提案されたが、東西線と南北線については中国運輸局から異例の待ったがかかり、認可されるに至っていない。待ったの理由は、①市の財政難(財政破綻の可能性) ②高い初期コスト(単年度黒字化が見込めない) ⓷低過ぎる費用対効果(ルート上の問題で速達性に難あり) ④民業の圧迫(共倒れの可能性) ⑤甘い需要予測 などが挙げられ散々の言われようだった。ブログ主の勝手な見立てだと、同時期に仙台市の地下鉄東西線論議との比較で①と②が理由の大半を占め、議論が過熱する2年前の97年に『路面電車走行空間改築事業』が立ち上げたこともあり、日本最大の路面電車王国の広島市をイメージリーダー的な都市にしたい思惑もあったのかも知れない。2度目の財政健全化計画終了直後の07年に、既存の交通機関の活用を代替え策とする方針を打ち出したが、市長の代替わりを経て、15年には2線の大部分を削除する形で都心線と改称して形式上は残した。西風新都線開業後に、導入の是非の議論を行うとした。物言いをつけ取り直しをしたが土俵際に追い込まれたとでも言えば良いのだろうか?縮小社会(超高齢化+大幅人口減)にまだ突入していなかった99年当時に拒否されたものが、広島市のような地方大都市部でも人口減少が顕著となり始める30年代に認可される可能性は、200%ありえない。ブログ主の予測だと結局、議論はしたが現実的な話ではなく代替え事業として平和市民団体の反対と緑大橋など3つの橋梁の建て替え費用が捻出出来ず、棚上げされている広電平和大通り線(西広島~小網町~白神社)がやっと採択されるだろう。


画像9 チューリッヒ旧市街地のトランジットモール区間の様子。人通りが絶えず都心部地区の賑わい性は日本の地方都市とは比較にならない(画像 ユーチューブ画面撮影より)

 本来あるべき姿は、アストラムライン整備を取り巻く状況や縮小社会進行、扶助費の高騰で硬直化する財政などの社会情勢の変化で国から認可されていない区間の建設は、完全に諦め、
15年策定の『公共交通の体系づくりの基本計画』(広島市HP)で提示されたデルタ内準基幹公共交通である路面電車とバスの高度化(疑似LRT・同BRT化)を前面に打ち出したものにするべきだった。半世紀にわたる地下式鉄・軌道系公共交通整備の強迫観念というか呪縛から解放される機会を失った。日本の都市では事例がないので、海外都市で求めればドイツのブレーメンは極度の財政難を理由に90年代前半に、スイスのチューリッヒは2度の住民投票の否決理由で70年代後半に、スウェーデンのヨーテボリでは住民の強い反対と高額な初期コスト理由で80年代前半に地下式鉄・軌道系公共交通整備とは完全に決別して、路面公共交通であるトラム(路面電車)の高速化(LRT化)に舵を切り直した。その結果、ブレーメンでは旅行速度19.8Km/h、1日平均26.5万人利用、チューリッヒでは旅行速度16.4km/h、1日平均53.9万人利用、ヨーテボリは旅行速度22.5Km/h、1日平均31.5万人利用とフル規格LRTと遜色のない水準にまで昇華させている。特にチューリッヒの階層化された公共交通網の充実ぶりは俊逸だ。先の各移動手段の分担率は徒歩28.0%、二輪車7.0%、自動車28.0%、公共交通37.0%と市域人口が37.6万人(都市圏人口約200万人)の規模の都市としては異例の公共交通分担率を誇る。『欧州で最も公共交通が利用される都市』と形容されるのもあながち誇張ではない。地下式鉄・軌道系公共交通などなくとも、定時性と速達性が担保された交通機関があれば十分都市交通問題に対応が可能であることを示唆している。広島市が現在の軌道法運転規則の規制の中で、努力の限りを尽くしてもこの水準に達することが可能かと問われると、難しいと言わざる負えないが、旅行速度9.0~9.5Km/hの広電市内軌道線の現状はあまりにもお粗末過ぎる。広島市が旧来からのアストラムラインの計画に固執して、諸般の事情で身動きが取れなくなっている間に考察1で振れた富山市、そして日本初のフル規格LRT導入都市となる宇都宮市にも大きく後れを取る羽目となった。『二兎を追う者は一兎をも得ず』とはよく言ったものだ。広電駅前大橋線の計画としての初登場は、99年策定の『新たな公共個通の体系づくりの基本計画』(広島市HP)以降だ。導入議論が始まったのが、10年の『広島駅南口広場再整備に係る基本方針検討委員会』(広島市HP)の立ち上げ以降。で、現在の開業予定は25年春である。何と26年の月日を要することとなる。富山市とのスピード感の違いは明白で、まさに亀の歩みとしか言いようがない。

http://livedoor.blogimg.jp/zono421128/imgs/1/5/15d0477e.jpg
画像10 停留所の統合の検討を伝えるニュース画像。その後の続報を全く聞かないのだが・・・(2017年12月の地元民放局ニュース画像より)

 広電市内軌道線の課題は今に始まったことではなく、古くて新しい課題でもある事は都市交通系記事で散々指摘した。疑似LRT昇華のメニュー-①軌道の準専用化(簡易式のセンターリザベーション)、②PTPS(公共車両優先システム)の設置、➂軌道容量を超えた本線の負荷を下げるBP線建設、④軌道法の運転規則6条(一編成長30.0㍍以下)、同53条(最高速度40km/h以下)の緩和 ⑤停留所の集約と高規格化、⑥信用乗車方式の導入、⑦100%超低床車両への置き換え、⑧交通結節点の改善-なのだが、そこそこ進んだのは⑧だけで⑤(高規格化)と⑦は僅か、⑥は最近になりようやく、といった感じだ。他のものは、全くの手つかずと言っても言い過ぎではない。路面電車やバスなどの路面公共交通の場合、速達性と定時制を上げる自助努力部分は驚くほど少なく、精々⑥と⑦ぐらい。これとて広電規模の中小事業者だと一つ匙加減を誤ると過剰の設備投資となり、会社存続の危機になりかねない。①~⑤については事業者側からすると、要望を出すぐらいが関の山だろう。道路所有者の国、県、市、そしてその道路を管理する県警、事業者の5者全体で取り組むべき問題だ。全くその動きがなかったと言えばそうではなく、05年3月に国や市、県警などで構成される『広島都市圏LRTプロジェクト推進協議会』(以下 推進協議会)を立ち上げ、路面電車の課題に共に取り組むこととなった。この協議会は、19年現在でも現存する。ブログ主が参考にしたい資料によると、課題は先に触れたことが書かれているが結果として残ったものは25編成の100%超低床車両導入、3ヵ所の旧式優先信号設置、4停留所のバリアフリー化のみに留まる。2~3年の成果であれば〇ではなく▲ぐらいだが、14年間の成果としてみれば✖✖✖でしかない。旧式優先信号の3ヵ所設置など、軌道沿線の交差点と信号数を考えると速達性向上には役に立たない。因みに先に紹介したチューリッヒでは、82年に現在のPTPS方式の雛形となる公共車両優先システムを独自に開発、市内の主要交差点400ヵ所に設置(カバー率90%)した。設置コストは、当時の価格で開発コストも含め50億円だった。PTPS設置の必須となる基本インフラとなる光ビーコンの設置は、広島市内の主要道路ではほぼ完了し、後は優先信号設置と車両に車載装置を搭載するだけだ。路面電車を含めた公共車両のみに道路通行の優先権を与えるのかの議論はさて置き、さしてコストはかからない。それでも『財政が厳しいので・・・』と言い張るのであれば、中国地方の自称中枢都市の看板を下ろしたほうが良い。自称であっても、中枢都市を語る資格すらない。財政が厳しいのは承知しているが、総事業費570億円、広島市負担289憶円のアストラムライン西風新都線は何なんだろうになる。本気度がまるで感じない。お役所仕事と言えばそれまでだが、本来であれば必達目標として設定し、期限を切って取り組むものだが・・・。こうしたお寒い現状の広島市と森市長の元、着実にLRTへの階段を自分の足で昇っている富山市の差は歴然だ。広島市は地下式鉄・軌道系公共交通整備でも他都市の後れを取り、次善策であるLRT整備でもそうなるのかと思うと、暗澹たる思いがする。上記画像10は一昨年の12月の広島市議会本会議のものだ。これは広島駅~紙屋町間に多過ぎる停留所が速達性向上の阻害要因ではないか?とある議員から指摘され、市の道路交通局長が『近距離間の電停統合については、交通事業者(広電)や広島県、沿線自治体等で構成する推進協議会の整備計画に超低床電車の導入や駅前大橋ルートの整備と共に、位置付けたい一連の取り組みとして検討したい』と答弁した。だがそれから、1年5カ月が経過したが、議論の形跡はなくその後が全くの不明だ。市のHPの推進協議会のページも以前はあったのだが、現在はリンク切れしている。こんな姿勢も疑問を感じる次第だ。道路や公共交通などの都市交通インフラは、時代は変われど都市活性化議論以前の課題だ。その辺を今一度考える必要がある。
 
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シリーズ記事 熊本市電のLRT化への取り組み 
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【考察その7】
広島市の過去の都市交通問題の取り組みについて その3
バスセンター(旧熊本交通センター)建て替えなど


画像1 19年夏頃完成予定(一部は12月)の
桜町地区第一種市街地再開発ビルのイメージ図(画像 熊本市HPより)


画像2 桜町地区第一種市街地再開発ビル断面イメージ図(画像 熊本市HPより)


画像3 現在鋭意工事が進む
桜町地区第一種市街地再開発ビル。手前は臨時(仮)バスターミナルの様子(18年9月頃 画像 アンドビルド広島より)


画像3(左) 再開発ビルと花畑地区の間のシンボルプロムナードが
臨時(仮)バスターミナルの場所となる(画像 熊本市HPより)

 熊本の都市交通施策で参考になる事例が他にもある。19年夏頃(9月とも)に完成予定(一部は12月)の熊本交通センター跡地一体で進められている
桜町地区第一種市街地再開発事業(公式HP)で閉鎖された熊本交通センター-広島で言うところの広島バスセンター(以下 バスセンター)-の建て替えに伴う臨時バスターミナルの設置だ。熊本交通センターはの九州産交HDの子会社九州産交ランドマークの運営で、熊本県庁跡地に69年3月に開業された。熊本駅と異なり市中心部位置して同駅よりも利用者が多く、熊本の公共交通における交通結節点となっていた。36もの乗り場を有し、最盛時には1日約6,000台のバスが発着し、約10万人が乗降した。県外行きの長距離バスや貸し切りバスの発着場としても活躍し『東洋一のターミナル』と呼ばれた。熊本都市圏のバス路線網はこの交通センターを起点として放射状に広がっている。開業当初は、九州産交の子会社の『株式会社熊本交通センター』の運営だった。ターミナルルビルもあり、ショッピングセンター(後に百貨店)やホテル、ボーリング場があり、ターミナルビル及びバスターミナルの地下はバスターミナルのホーム間を移動するための通路を兼ねた『熊本交通センタープラザ』と呼ばれる地下街があった。モーターリゼーションの進行でバス利用者が減少する中でも1日平均4万人の利用があった。15年9月30日、桜町地区第一種市街地再開発ビル建設のために閉鎖され、東側の市道(通称:シンボルロード NKK熊本放送局~花畑広場 230㍍)の地点に23ヵ所の乗降場所を設けた臨時(仮)バスターミナル(上記画像3~4)が設置された。翌10月1日からこの地での営業が始まり、再開発ビル内に設けられる新バスターミナルが完成する19年夏頃まで仮営業をこの地で行っている。各乗り場には簡易屋根を設け、臨時と言え26の乗り場がある。再開発事業主体である九州産交グループが熊本市から一帯の敷地を有償で借り受けて整備されたものだ。新バス民ターミナル完成後は、現在の臨時(仮)バスターミナルはシンボルプロムナードとして再整備される。


画像4 広島バスセンターも入居する紙屋町地区の旗艦商業施設のそごう広島店本館(画像 ひろたびより)

 一方の広島市に目を向けてみる。熊本交通センターと同様の立地で都心部中心の一等地にバスセンターがある。熊本市のバス1日平均利用者数が17年度で、約7万人で同施設が4万人。バス路線の押しも押されぬ結節点になっているのに対し、広島市のそれは
バス1日平均利用者数16.7万人(12年度)で、バスセンター利用者数は約3.3万人(年度不明)と依存率はそう高くない。これはバスセンターが都市圏内の郊外と都市間に特化した路線のターミナルであり、市内路線と棲み分けがなされているからである。形態としては、バスセンターは広島市も出資している第3セクター会社の一つでそごう広島店本館の3階に位置している。現在のバスセンターは2代目で、現在の建物は74年の完成だが、工事期間中は臨時(仮)の施設は県庁東館の場所に設けられ仮営業をしていた。築35年を超え、紙屋町地区を牽引する役割を担っていることからも、内外から建て替えを期待する声は非常に強い。昨年後半の地元紙報道の店長の話だと、将来的には建て替えの構想はあるようだがあくまでも中・長期の課題の匂いが漂っていた。短期間での建て替えはなさそうだった(ブログ主主観)。入居テナントの仮営業する場所の確保など自社だけの事情だけでは動けないからだろうと推察する。エディオン本店本館のように新館などに一時引っ越しさせて、というのもそごう規模だと難しいのかも知れない。バスセンターだけに話を絞ると建て替え時の臨時(仮)バスセンター候補地は、現在地に近くまとまった土地がある場所となる。となると、サッカースタジアムの最終建設候補地から解放された旧市民球場跡地(以下 跡地)ぐらいしかない。都市公園法の縛りが気になるところだが、跡地が大型バス駐車所として活用されているので、期間限定であれば問題はないのかも知れない。


画像5 広島中央公園内にある中央図書館。映像文化ライブラリーとの複合施設で74年の完成。バスセンターに隣接しており建て替えの際の有力候補地の一つ(画像 公式HPより)

 立地的には跡地の方がバス下車後の目的地までのアクセスが容易で候補地として優れているように感じるがここにした場合、市北西部、北部、北東部などの郊外路線が相生通り経由となり既存の市内バス路線とも相まって相生通りの交通渋滞に拍車をかける可能性が非常に高い。ただでさえ、相生通りの広島駅~紙屋町間の重複バス路線と本数(1日3,000本以上)が問題視されているご時世に、どうなのだろうと思う。下手をすれば朝のラッシュ時の相生通りがバス行列になる。第2案となるが、隣接する広島市立中央図書館の建て替え(築35年)とセットで行う案だ。まずは中央図書館を取り壊し更地とする。敷地の真横が現在のバスセンター入場のバス専用道路になっており、動線も無理がない。この更地に新バスセンタ-完成までの臨時(仮)バスセンターを設置。中央図書館の蔵書などは中区図書館を中心に各区の図書館に預けおくのだ。新バスセンター完成後、速やかに新中央図書館の工事に取り掛かる。空白期が5年以上になりそうだが、中央公園内の老朽公共施設の建て替えの必要性も指摘されているので、一番無理がありそうで無理がない案かも知れない。但し、コストはかかる(笑)。バスセンターの仮移転先は、工夫すれば見つかりそうだが、入居テナントに関しては工事期間中の代替え営業拠点を探し出すのは至難の業だ。何か良い工夫はないものかと思う次第だ。いっそのこと、紙屋町地下街-シャレオをはじめ商業施設の空きテナントを活用するしかないだろう。

【考察その8】
広島市の過去の都市交通問題の取り組みについて その4
環状道路計画など

 スクリーンショット (745)
画像6(左) 拡大図 福山市の福山環状道路の概要(画像 広島県HPより) 
画像7(右) 宇都宮市の3環状12放射線道路図 概要(宇都宮市HPより)



画像8(左) 拡大図(要拡大) 新潟市の放射・環状型の幹線道路網(画像 新潟市HPより)
画像9(右) 拡大図(要拡大) 姫路市の3環状道路(画像 姫路市HPより)

 これはどこからどう説明していいのか、悩むところだが欧州型のコンパクトシティや、日本型のネットワーク型コンパクトシティ-集約都市-への転換を標榜する場合、まず最初に手を付けるのは環状道路の整備なのである。 
~コンパクトシティの手順 ステップ1~2 3~4 5~6~ これは『広島には広島のやり方がある』などとの反論を食らいそうだが、絶対に押さえないといけない肝の一つだ。公共交通移動中心の都市建設にするのに、なぜ道路だ?と矛盾を感じるだろうが、都心部地区を歩行者中心の都市空間に再配分する場合、都心部地区目的外の通過交通の処理の問題が発生し、迂回路として整備するのだ。このステップ1をスルーしていきなり、都心部地区をそのようにしても市域全体の道路及び、都市圏域の道路渋滞に拍車をかける可能性が高い。『公共交通vs自動車』などという単純な対立の問題ではない。下手をすれば都市の物流機能の低下すら招く危険性もある。これでは何のための都心部地区の強化にもなってしまう。上記4都市の環状道路計画を引用してみた。大都市でも必要なのは言うまでもないことだが、政令指定都市クラス以下の中核都市や、県庁所在地クラスの都市でも開通はしていなくても計画自体殆どの都市が持っているのが普通だ。熊本市も同様で『2環状11放射線道路網計画』を段階を踏んで整備を進めているところだ。LRTやBRTといった、放射状の主要幹線道路の交通量を環状道路などに振り分け、交通量自体を減らし走行環境を改善する目的もある。交通量が減少すれば、専用走行帯やPTPS(公共車両優先システム)も導入ハードルがかなり下がる。全ての都市と言う訳ではないが、大体都心部地区を外周する内環状道、市街地の拠点地区を結びつける中環状道路などを既存道路の流用で設定し、それよりも一回り大きな外環状道路を既存の主要幹線道路の既存のBPを計画に取り込み、地域高規格道路として新線建設なども行うのが一般的だ。ところがである。広島市には一般道路での環状道路計画が存在しない。類似計画として広島高速道路でのそれは構想として存在する。 ~広島都市圏の高規格(自動車専用)道路の計画図~(広島県HP) 5号(東部)線2期や南北線は未だに構想路線の域を出ておらずその前に、西広島BP高架延伸や4号(広島西風新都)線の山陽道接続などが先に来ると思われるので、早くとも20年代半ば~後半の検討になるのでは?と考える。その頃になると社会情勢が変化し、必要性の有無すら議論されるかも知れない。こんなことを言ってもあれだが、順番で言うと複数の環状道路の整備を以てしても、深刻な経済損失を伴う道路渋滞が日常化している場合のみ、一般車両と業務車両の分離を目的とした都市高速道路などの有料式の自動車専用道路方式で整備するものだ。これが必要な大都市圏は首都圏、関西大都市圏、中京大都市圏、北九州岡大都市圏ぐらいだろう。一般道路での環状道路計画の欠如は広島市の都市計画センスの賜物かも知れない。個人的には今からでも遅くないので、加えるべきだ。


画像10 熊本都市圏の2環状11放射線道路網(画像 熊本市HPより)


画像11 
広島の通過交通の現状(画像 中国地方整備局HPより)


画像12 
①赤点線-市道高陽沼田線(アストラム高架下道路)、茶点線-草津沼田道路、青点線-広島南道路一般道路、緑点線-市道中筋温品線で繋がっているが広島高速2号線部分の一般道路がないので環状化していない

 画像11はデルタ内及び、都心部地区の通過、目的交通の様子だ。実に目的外の通過交通が多い。因みに広島市最大の交差点交通量は、紙屋町交差点で1日平均8万台もの通過があるそうだ。この数値は都市のダイナミックさを誇るものではなく、道路交通網の先見性のなさを謙虚に反省するべきだ。行き当たりばったり過ぎるのだ。これでは、都心部地区を歩行者中心の空間に改めるなど絵空事に終わるのは目に見えている。広島市の同情すべき点があるとすれば、市域面積32.3%としか可住地がなく平野部は市域の18%程度。少ない平野部に人が集まり、都市インフラも丘陵地や山間部をぬうように施設されている。そうした土地の制約上迂回路の選択肢が少なく、限られたコースに集中する傾向が強い。しかも主要幹線道路のBP整備は遅れている。こうしたいくつもの不運な条件が重なり合い現在に行っている、と考えられる。だからこそ、環状道路の整備は不可欠だ。画像12は広島市の道路計画を一部抽出したものだ。広島高速2号線の部分だけ一般道路計画がない。高速道路の代替えを果たすのでは?と思われがちだが、広島規模の地方都市では高速道路の環状道路は不要で、『時間をお金で買う』の意識が希薄なので効果は低いと考える。画像12を見ると、ここに高速2号線高架下道路を加えると、未着手の区間が意外と少ないことにお気づきになる筈だ。市道整備方式では2040年になっても全線開通していないことが予測されるので、地域高規格道路として、国費を以て整備するのが妥当だ。他都市もそうしている。ブログ主は、フル規格(全線開通)でも片側1車線で、謎の平野町止まりの西広島BP高架延伸よりも環状道路整備の方が有益と考える。

【考察その9】
シリーズまとめ
色々とざっくばらんに

画像12 広島市内にに主要路線を持つバス交通事業者の合計損益の推移(画像 広島市HPより)

 熊本市の各取り組みは欧州都市のそれと比べ、日本の都市と言うだけあって先進の形容に相応しくないかも知れない。広島市とて取り入れているものも多い。他都市在住の人間から見れば、真摯に取り組んでいる印象が強い。広島市が怠けているとは決して思わないが、広島市のそれよりは真摯さが感じるのだ。それもその筈かも知れない。市内の移動の公共交通分担率は、広島市が約16.0%(08年度)に対し熊本市は、僅か5.9%(13年度)、バス利用者は広島市-16.7万人(12年度)に対し、熊本市は7.0万人(17年度)。公共交通全体だと、広島市-55.6万人(12年度)、熊本市-14.5万人(17年度)と、都市と都市圏規模を考えると数字以上の差に感じる。その危機感があればこその真摯さではなかろうか?広島市に本社と路線の大半を有する都市交通事業者も、02年度より乗り合いバス自由化施策-運賃設定と市場の参入退出の規制緩和が実施され、市場原理がが都市交通活性化策として導入された。平たく言うと、同路線に複数の事業者を競わせ、サービス合戦をさせて利用者増と市場の拡大を図ろうというものだ。80年代のサッチャー政権時のバス会社の民営化と市場経済を導入した。一時的には成功を収めたが、中・長期で見ると公共交通の衰退とモーターリゼーションの進行を加速させ、失敗に終わった。既に結果が出ている施策を遅れる事20年、日本は始めた。イギリス同様に利用者が下げ止まり、微増に転じたがその内容を見ると利益率を大幅に下げての利用者確保に過ぎず、薄利多売になった。この施策自体は決して間違いではないが、成長している市場や停滞感がある市場にはカンフル剤となり有効策となるが、衰退もしくは斜陽化している市場には副作用が強い毒物になる。その証拠に、虫の息だった地方中小交通事業者は、競争を強いられ企業体力を著しく損ねた。OECD加盟の欧米先進国で、都市交通事業を営利事業として捉えているのはイギリスだけで、市場原理主義の権化のイメージがあるアメリカでさえ低所得者、貧困者、障害者などの自動車を持てない移動困難者の福祉施策として捉えている。施策の失敗は上記画像12を見ればもうお分かりだと思う。赤字幅が拡大している。日本でも特に地方の都市交通事業は60~70年代の欧米先進国同様に営利事業としてはそろそろ、限界に達しつつあるだろう。


画像13 
熊本内における移動手段の各分担率推移(画像 熊本市HPより) 

 先細る需要の話はひとまず置き、今後公共交通の役割はないのかと問われると答えは『否』だ。むしろ重要になる筈だ。その理由として、縮小社会(超高齢化+大幅人口減)したであっても都市として持続的な成長を図る術としてコンパクトシティ-または、ネットワーク型コンパクトシティ(集約都市)を日本をはじめ、アメリカ以外の先進国が国策として選択している。選択肢としての自動車移動を尊重しながらも公共交通移動前提の都市建設に舵を切っている事。そして平均寿命の伸長、貧困者の高齢化などで自動車保有を維持できない人たちが、超高齢化に移行する過程で急増することも予測される。買い物や病院への通院などに支障をきたす可能性すら示唆されている。ドアツードアで一部の地区以外駐車スペースがふんだんにあり、利便性と速達性に優れたもの(自動車)に慣れ親しんだ市民を今更ながら、公共交通に誘導するのは並大抵ではない。一番手っ取り早いのは、都心部地区の求心力を飛躍的に高めて、公共交通移動需要を掘り起こすのだ。それと同時に、熊本市が構想・計画する基幹公共交通網を積極的に整備するのである。熊本市の移動に関する公共交通分担率-5.9%だ。この水準は、アメリカのロサンゼルス-6.8%(00年)、ヒューストン3.7%(同)に匹敵する。この事実だけで推し量れないのが、アメリカの都市が公共交通と自動車の各分担率の合計が、96.2~97.6%で二輪車と歩行者の分担率が皆無なのに対して、熊本市の場合は計29.8%もあることが明るい材料だ。公共交通とこの2つは、競合関係にあると言える。ここから反転攻勢に転じる余地が残っている。アメリカの都市ほど拡散都市化が進んでいない。もうあそこまで行き着くと、リセットして最初からやり直したほうが早いのでは?と思ったりもする。自動車利用の5~10%、歩行者と二輪車利用の5%程度を公共交通に政策的に誘導し、20年後の公共交通の分担率を15~20%程度を目指す野心的な計画もありだ。現実的には大きな困難が待ち受けるだろうが、座して公共交通の自然死を、向かえると都市そのものが死んでしまう。記事を書くに当たり、20を超える行政や民間団体の文献を読んだ。選択肢の問題も大きいが、結果はさて置き既存の熊本市電やバス路線をあらゆる手段を講じて高度化し活用しようとする姿勢は好ましく感じた。広島市や熊本市のような政令指定都市に限らず、高齢化の進行で政策的経費(公共事業)の選択肢の幅は狭まり財政の硬直化は、今だけではなく今後も加速することはあっても大幅に改善することは2度とない。当然、を費用対効果を冷静に見極め
取捨選択を進めないといけないだろう。年々選択肢が狭まる中、ブログ主の主観だと補助金目当てで集約都市を標榜し、『バスの乗り遅れるな』ぐらいの意識で安閑としている広島市はどうなのだろうと思う。日本の都市では、本来のコンパクトシティや集約都市の実現を果たした都市はまだない。本気で考えている都市は富山、宇都宮、熊本など割とあるが・・・。市長、副市長を筆頭に市の幹部職員や市議の先生方を引き連れ、フランスやドイツの都市を4泊5日ぐらいで視察するのも決して無駄ではない。市の将来に有益なものであれば市民と手厳しい視線は向けないだろう。スタジアムやアリーナ、再開発ビルなどは所詮は上物の集客施設の一つ。何度も言うがこれらは対処療法の類で、根本治療ではない。縮小社会(超高齢化+大幅人口減)時代では外需の取り込みが都市の成長の可否を握る。ありきたりのものを他都市との対抗意識だけで揃えても、とても魅力ある都市には絶対にならない。他都市にはないものを大きな武器として複数持ち、『どこから切っても金太郎飴』的にな都市ではなく、いい意味で差別化が生き残る方策になるだろう。

終わり
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前回記事 熊本市電のLRT化への取り組み 1
カテゴリー記事 広島の都市交通 国内都市先進事例


【考察その4】
広島市と熊本市などの他市との比較 その1
確かに公共交通利用率は低くない
が・・・・


画像1(左) 広島市のデルタ内地域の範囲
画像2(左) 画像1同様にデルタ以内範囲の詳細

1 人口と市域面積に係る比較 ※日本の都市データは15年国勢調査準拠
 単位:人口-万人 
面積-平方㌔㍍ 率-% 数値は15年時点

【人口30~70万人都市】
      市域人口  1.5%都
   市域面積   可住面積   可住面積
              圏人口                   比率
熊本市   74.1  149.3   390.32 328.44  84.1  
 
岡山市   71.9  163.9   789.95 436.78  55.3
ドレスデン 54.7   ・・    328.31   ・・・    ・・・
チューリッヒ37.6   ・・     91.88   ・・    ・・

【人口100万人台都市】

       市域人口  1.5%都   市域面積   可住面積   可住面積
              人口                    比率
仙台市   108.2  225.7   786.30 341.74  43.5
広島市   119.4  209.7   906.53 293.19  32.3
福岡市   153.9  553.8   343.39 232.52  67.7
ミュン
ヘン 146.4   ・・・    310.43  ・・・     ・・・

2 市内移動に係る各移動手段の分担率 単位:%
  
【人口30~70万人都市】
       公共交通   自動車     徒歩    二輪車
        分担率   分担率     分担率   分担率
熊本市     5.9  64.5    15.7  14.1 
岡山市     6.5  59.5    19.6  13.8
ドレスデン  22.0  39.0    27.0  12.0
チューリッヒ 37.0  28.0    28.0   7.0

【人口100万人台都市】
       公共交通   自動車     徒歩    二輪車
        分担率   分担率     分担率   分担率
仙台市    16.5  44.7    13.7  19.8
広島市    
16.0  47.6    19.0  17.1
福岡市    23.5  42.2    18.6  15.6
ミュンヘン  25.0  36.0    24.0  15.0

 広島市の公共交通分担率は、熊本、岡山両市と比較すると高い水準にあると言える。同時に自動車依存の低さでもあるので拡散都市化傾向が両市よりも抑制されている。だが、理由としては都市政策上の誘導ではなく、可住面積率が低いことが幸いしている。平野部が少なく、山岳・丘陵地帯が多くこれが天然の要害となりそうなった側面は否定できない。これは上記画像1と2をご覧になればよく分かると思う。おまけに主要道路のBP整備などを遅れたことが後押ししているだろう。内部努力の賜物ではなく、外部要因に助けられている。地方中枢都市の仙台、福岡両市と比較するとその傾向が鮮明になる。自動車分担率が3市の中で最も高い。仙台市との比較では、ほぼ同レベルと言えるがこの数値は02年のもので、仙台市はその後市営地下鉄東西線が開通。開通当初は利用者が低迷していたが、昨年度辺りから利用者を伸ばしているので公共交通分担率は微増していると思われる。『自動車メーカーのマツダがあるのだから』の定型文の反論も的を得ていないと思う。海外都市の類似例を見ると、ボルボがあるヨーテボリ、BMWのミュンヘン、ダイムラーのシュトゥットガルトではモーターリゼーションに迎合した都市建設は行っておらず、公共交通移動を前提としたコンパクトシティを標榜しておりそれとこれは別儀だ。人口100万人台都市のカテゴリーでの公共交通分担率の低さの原因は、仙台、福岡両市のと比較で都心部地区の求心力の大幅低下-特に商業機能(下記画像3参照)-と、鉄・軌道系交通網の整備の遅れがあるだろう。都心部求心力の低下によって公共交通移動需要が下がり速達・定時性が低いものが多いので、需要の取りこぼしがあると考える。徒歩分担率と二輪車分担率の高さがそれを証明している。ブログ主の個人的見解と敢えて前置きするが、広島市は上手く政策誘導すれば、日本の大都市(政令市以上)では最高のネットワーク型コンパクトシティ(集約都市)になる素地があると思っている。その根拠としては、地形的に可住面積が狭く拡散都市化が偶然にも極端に進まなかったことや、実現の術としてLRTとBRTの整備が挙げられるが、高度化され昇華こそしていないが、(日本の都市としては)密なネットワークを今でも保有していることがある。ただ素地としては申し分はないが、郊外大型商業施設のオーバーストアぶりを理由とする都心部地区の求心力低下が気がかりだ。
 

画像3 広島市都心部地区中心地(紙・八地区)の小売売上高と売り場効率の推移(画像共に日本政策投資銀行HPより)

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画像4(左)福岡市都心部地区中心地の小売売上高と売り場効率の推移
画像5(右)仙台市都心部地区中心地の小売売上高と売り場効率の推移(画像 日本政策投資銀行HPより)

 一回り以上市域、都市圏規模が小ぶりな岡山、熊本両市との比較で『広島は余裕じゃん』と安閑とするのもありだと思うが日本での同カテゴリーに所属する都市、海外欧州都市と比較すると取り組みの遅れぶりが顕著と感じるのはブログ主だけだろうか?道路を含めた都市交通インフラ投資は、災害対策と並び他のインフラ投資よりも上位に位置する。スタジアムや再開発ビルなどその下だ。広島市の取り組む姿勢が熊本市ほどの真摯さがあるのかと問われると疑問が残る。広島市と熊本市を比較すると結果においては(実現の有無)、大きな差は今は出ていないが、今後それも変化するかも知れない。必要以上にネガティブ要因のみを挙げて怯えるのは問題だが、呑気に構えているのも禁物だ。広島市は高度・安定成長期に弟分だった仙台市に今現在では、都市立地のハンディもあって後塵を拝しつつある
事実を忘れてはいけない。バブル期の頃までは辛うじて背中が見えていた福岡市などは、自身と比較する対象の都市は地方中枢都市ではなく、世界都市ランキングで同順位帯にいる人口規模が似ている都市になっている。このシリーズ記事の範囲で言えば、熊本市となるが広島市以上に深刻な公共交通が置かれている現状に危機感を強く持ち、行政主導で真摯にこの問題に取り組もうとしている熊本市の姿勢は評価できる。これは、富山市や宇都宮市に対してもそう感じる次第だ。都市規模や格を語っているのではなく、その姿勢がそうである。見習うべき点は多いと考える。広島市の都市交通問題への取り組みは言うほど酷くはないと思うが、かといってベストやベターでもないのも事実で、結果(現状)から逆算するとそう断じられても仕方がないだろう。次の考察では、過去のものも含め取り上げたい。

【考察その5】
広島市の過去の都市交通問題の取り組みについて その1
存路面電車の延伸論議


画像6 02年九州運輸局調査委員会が検討して提案した路線一覧(画像 面電車ニュースより)


画像7(左) 拡大図(要拡大) 05年中国運輸局中心に路面電車の LRT化を中心とした 公共交通体系の再構築の検討調査で提案された複数ルート
画像8(右) 各ルートの1日平均利用者数予測 ケース⑤が広島駅~西広島駅間の東西基幹路線
になる(画像共に中国運輸局HPより)

1 既存路面電車延伸についての取り組み
 熊本市では02年、広島市では05年各運輸局が主導する形で既存路面電車の延伸検討が詳細に行われた。『路面電車のLRT化を中心とした公共交通体系の再構築の検討調査報告書【本編】』 
『路面電車のLRT化を中心とした 公共交通体系の再構築の検討調査報告書 【要約版】』(共に中国運輸局HP) 双方の隅から隅まで読み尽した訳ではないが、熊本市の計画は構想路線で提言後の議論の必要性がある感が漂うが、広島市のそれは導入前提のレベルで実際の需要予測を複数のパターンを組み合わせ検証しており国の支援ぶりの強さが伺えた。広島市のそれには実は伏線があった。05年の提言だが、議論自体は04年頃でこの頃よりさかのぼること5~6年前、広島市はアストラムラインの都心部区間の延伸(南北線)と新設区間(東西線)の導入を検討していた。ゼロベースから始まり、各選定機種選びから始まり、様々な経緯を経てアストラム案に落ち着こうとしていた。ところが、議論後半戦に入り中国運輸局が異例の待ったをかけた。『広島市のアストラムライン都心部区間の延伸と新設は認めない』との主旨だった。理由として、①建設コストが膨大(2線計2,300億円)で速達性向上などの費用対効果が低い ②広島市の財政状況に問題がある ➂需要予測が過大 ④他の交通機関との連携が考慮されず民業圧迫と同時に共倒れの可能性が高い と介入を受けた。結局今も認められていない同計画はこうした過去の経緯があった。広島市に何らかの鉄・軌道系公共交通が必要との認識はあり、路面電車の LRT化を中心とした公共交通体系の再構築の検討調査をして、その代替え基幹交通機関の意味合いの提言(ブログ主主観による)を行った。ブログ主の所感だと、形式上5線だが実際には2線で見た感じだと新規延伸というよりは、走行環境に問題がある既存線の移設と広電全体の課題解決に大きく寄与する具体的な案だと思った。実現しても、少なくとも大赤字には絶対にならないだろう。

 熊本市は、実現こそしていないが
九州運輸局調査委員会提言の10ルート案をたたき台に議論を真摯に続けた。一方の広島市だが、市も参画していたのだがこの提言を真摯に議論した形跡がまるでない。駅前大橋線については、『広島駅南口広場再整備に係る基本方針検討委員会』(広島市HP)にて10年度から、検討されたが、そもそもこの提言とは関係なく02年開催の中国地方交通審議会広島県地域交通計画に広電短絡線(平和大通り西ルートの一部 西観音町交差点~小網町交差点間 0.9㌔)とアストラム西風新都線と共に認可されている。平和大通り西ルート(小網町~白神社)、同東ルート(白神社交差点~稲荷町交差点)、段原線+宇品東ルート(的場町2丁目~宇品海岸3丁目)については音沙汰なしである。詳細検討して諸般の事情で、時期早尚や断念であれば納得もするが検討らしきものをしていないのはどうなのだろうと思う。市の事情としては、市の第二次財政健全化計画の期間中(04~07年度)やアストラムラインの都心部地区構想を捨て切れなかったこと(当時)、平和公園周辺の軌道施設することに『平和の聖地の穢れになる』と反対する市民団体の存在、平和大通り西ルート建設に3つの橋の建て替え(約150億円)費用の捻出が難しいなどがあったのではと推察する。こちらの反論としては、財政健全化計画期間中であっても議論は出来るし、『平和の聖地の穢れ』とは蜘蛛の巣のような架線と老朽車両を指していると思われるが、03年開業のフランスのボルドーでは地表集電(イノレール式APS)方式の架線レスLRTが実用化されているし、これがコスト高で問題というのであれば07年開業した同国のニースのように、バッテリー搭載型の架線レスLRTのように景観保護地区のみ架線レス化する方式も00年代後半には確立され実用化されていた。3橋の建て替え費用が捻出云々など、政令指定都市の資質を疑うレベルだ。そんな都市がアストラムライン西風新都線の地元負担分(約289億円)が本当に出せるのか?疑問だ。他に含むところがあれば別だが・・・。広島駅(陸の玄関口 新都心)~紙・八地区(都心部地区中心)~広島港(海の玄関口&物流拠点)を結ぶ路線なので、集約都市建設の観点から結果ありきの議論ではなく、再検討の必要性を感じるのはブログ主だけだろうか?

    【考察その6】
    広島市の過去の都市交通問題の取り組みについて その2

    既存区間の走行環境の改善など


    画像9 広島電鉄市内軌道線の運行時間の構成比(画像 広島市HPより)

     熊本市電は
    PTPS(公共車両優先システム)を併用軌道(路面)区間の42.9%に当たる5.1㌔の区間に10年度設置した。これを設置したからといって、大幅に信号停車時間が減少する訳ではないが、運行時間の約50%が停車時間に費やされる(上記画像9参照)路面公共交通に取って速達性向上の一助になるのは事実である。一方の広島市であるが、路面電車専用のPTPSはなく(バス路線ではあり)、旧型の路面電車専用のトロリーコンタクタ-式の電車優先信号が横川駅前、八丁堀交差点、宇品地区、天満橋付近に4地点あるだけである。これでは効果が限定される。さらに言えば、欧州都市で最も公共交通の分担率が高いスイスの都市チューリッヒでは、主要交差点400ヵ所に設置され(カバー率90%)、郊外と市内とを結ぶ約20カ所の道路においては、市内流入方向の交通に対して青信号時間の短縮化で、実質的な自動車の流入規制まで行う俊逸なシステムを構築している。これにより停留所間隔約350㍍で、LRTの標準の500㍍よりも短いのに旅行速度16.42km/h(広電の1.82倍)を実現している。日本の都市でここまでの水準を求めるのはハードルが高過ぎるが、自動車利用を意図的に不便にして公共交通に誘導するのも手段の一つだ。特に郊外⇒都心部地区方向に関しては、この観点からのPTPS設置もありではなかろうか?チューリッヒのシステムは1982年の導入である。高価なフル規格地下鉄やAGT(アストラムライン)の地下・高架線が建設できないのであれば、様々なシステムを複合化させることで速達性を向上させる技術自体は既に確立されている。市や広電だけの責任ではないが、本気で実現を目指し、道路管理者の県警と交渉しているのか?少し疑わしい。


    画像10 2008年12~09年3月まで行われた広電江波線PTPS社会実験の概要 拡大図(要拡大)

     日本ではPTPS(公共車両優先システム)導入は熊本市電など一部事例にとどまりバス路線導入が圧倒的に多い。広島市でも08年12月~09年3月にかけて、江波線舟入川口町~江波間にPTPSの社会実験が行われた。 ~PTPS社会実験~(P270~)期待するほどの結果は得られなかったようだが、この実験が熊本市電のPTPS設置に繋がった。実験をした当の広島市はと言うと・・・である(笑)。実験の結果、①路面電車の優先信号制御の方法として、赤信号の時間を短縮するよりも、青信号 の時間を延長する方が有効であることが確認 ②その理由としては、路面電車とバスの赤信号時の待機の方法の違いが挙げられる。路面電車は、交差点 まで走行せず、あらかじめ手前の電停で待機し、青信号で通過できるように時間調整を行うことが多い ➂今回作成した光ビーコンの設置基準の妥当性が確認されたことから、この設置基準を用いることでこれ まで導入してきたバス優先のPTPSを路面電車優先制御に適用できることが確認 などを知見・教訓として得た。このPTPS設置の段取りが不明なので、何とも言えないが市と事業者が設置要望を県警に提出して、それを受けた県警が検討するとの考えるのが妥当だ。『PTPS設置拡大』が改善努力目標に掲げられているが、絶えず働きかけて早期実現する努力は絶対に払うべきだと考える。


    その3へ続く
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    関連記事 広島の都市交通 広電の話題 14 
    カテゴリー記事 広島の都市交通 国内都市先進事例

    【考察その1】
    過度の自動車依存都市-熊本市の実態
    先細る公共交通ネットワーク


    画像1 熊本市内における移動手段の各分担率推移(画像 熊本市HPより)

    OECD加盟国の中では、新設のLRTが走っていない国がある。韓国と日本である。BRTに限ると、BRTの少量輸送版のBHLSや走行路を軌道敷内に持ったものも広義のBRTとした場合、日本だけとなる。都市交通の世界の潮流に乗り遅れていることは明白だ。確かに中量輸送の軌道系交通だけの話で、大量輸送のカテゴリーである都市近距離鉄道、フル規格地下鉄などでは日本は冠たる鉄道立国である事実は否めない。日本の鉄道利用者が多いのは、国土が東西に細長く都市間移動の鉄道シェア(新幹線)が高いことや世界一の巨大都市圏の首都圏輸送を鉄道が担っていることが理由となっている。大都市部以外ではどうなのかと問われると、福岡市や広島市のような地方中枢都市では鉄・軌道系を含めた公共交通利用率はそこそこ健闘しているが、それ以下のカテゴリーの都市では歯牙にもかけられず、自動車移動が当たり前の都市構造となっている。他の都市交通先進国の各都市と比較すると、都市差はあるが、公共交通分担率では日本の地方都市は欧州同規模都市よりも半分以下の水準にとどまり、自動車分担率は15~20%も高い。ドイツやフランスでは、鉄・軌道系公共交通導入ハードルが、都市交通事業が独立採算制ではなく受益者負担の公共サービスの一環として位置づけられ、しかも整備のための独自財源がある関係上、日本よりも低い。制度が根本的に異なるので単純比較が難しいが、地方都市で事業展開している都市交通事業者が瀕死の状態にあることは確かだ。そんな日本の地方都市でも国策としてネットワーク型コンパクトシティ-集約都市への転換が方向転換される中、公共交通移動中心の都市構造を標榜する都市が出てきた。既存路面電車の活用に一番熱心な富山市や日本初のLRT新規開業都市になりそうな宇都宮市、そして九州第2の都市機能を有する熊本市(人口では3番目)である。今日はそんな熊本市の取り組みに注目したい。

     
    画像2 熊本市内の公共交通の事業者別の1日平均利用者数(画像 熊本市HPより)

     熊本市は市域人口74.0万人(18年12月)、1.5%都市圏の括りだと149.3万人(15年)である。12年に九州の都市では3番目の政令指定都市に移行している。日本の大都市基準(政令指定都市以上)に該当する。その割と言ったら語弊があるが、自動車への依存率が高く12年度の市内の移動の自動車分担率は64.5%、公共交通分担率は僅か5.9%にとどまっている(上記画像1参照)。広島市のそれとの比較すると、自
    動車分担率は47.6%、公共交通分担率16.0%(08年)と深刻な自動車依存都市と言える。日本の人口70~100万都市未満は、欧州都市の人口50万人台の都市に該当する。そう言い切るのは、かの地の都市はアイデンティティを重視するので安易な合併を絶対にしない。市域をまたがる都市問題は都市圏政府のような組織をつくり解決するからだ。ドイツの類似都市のドレスデン(人口54.7万人)は、旧共産圏(東ドイツ)の都市で統一後、モーターリゼーションの大波が押し寄せているのにも拘らず、自動車利用抑制策が功を奏して自動車分担率39%、公共交通分担率22%としている。熊本市の3.7倍の公共交通分担率である。熊本市の市電を含めた1日平均の公共交通利用者数は、14.5万人(上記画像2参照)で都市規模相応とは言い難い。どうしてこのような事態になったのかと推測すると、開発可能な平野部が都市圏全体に広がり、日本特有の都市計画のザル法が災いして、都市のスプロール化-無秩序な拡散都市化-が進んだことや沿線に公共交通の基本インフラが少なかったことが理由だろう。その中で、1日平均利用者数3.0万人の熊本市電は熊本の公共交通の中心を担っている。全盛期は路線㌔数25.3㌔を誇り、1日平均11.5万人もの利用があった。ご多聞に漏れず、モーターリゼーションの進行とそれに伴う拡散都市化で利用者は激減し、合理化のために閑散路線から順を追って廃止された。80年前後を目途に全線廃止をして、モノレールに切り替える構想が当時は浮上していた。市民からの廃止反対の声が挙がったことや第1次石油ショック、過度の自動車依存の都市計画の見直しなど社会情勢の変化により廃止方針を撤回して、79年に存続が決定した。存続決定後は、路面電車日本初のVVVFインバータ車両の導入や日本初の100%超低床車両導入などの導入など、限られた範囲での積極策を打ち出した。

    【考察その2】
    熊本市電延伸の議論


    画像3 通町筋停留所に停車中の熊本市電9200形車両(画像 アンドビルド広島より)


    画像4 熊本市電ルート図(画像 熊本市交通局公式HPより)

     話が前後するが、97年に路面電車走行空間改築事業(国土交通省HP)が創設された。日本初の路面電車の軌道線建設の国庫補助制度だった。これまで大量輸送機関-地下鉄、ニュータウン鉄道などの鉄道線-は運輸省、中量輸送機関-モノレールやAGTなどの軌道線-建設省の管轄で両省は犬猿の仲でその関係性が少なからず、日本の鉄・軌道系交通機関の整備に悪影響を与えていた。両省統合(現国土交通省)を01年に控え、雪道解けムードになりかっての対立はなくなった。この制度(道路局、都市・地域整備局)は地方公共団体が運営する公営事業のみを対象としたものだったが、後に鉄軌道事業者、法定協議会を対象とした『LRTシステム整備費補助』 『地域公共交通活性化・再生総合事業費補助』(鉄道局)などの制度が発足。19年現在では、軌道や停留所などの都市インフラ部整備に関しては、55%、車両などのインフラ外設備は1/3の補助がモノレール、AGTなどの中量輸送機関の括りに組み込まれ97年当時と比べ手厚いものになっている。 ~BRT整備等に対する総合的な支援スキーム~ 補助制度創設後、全国で導入を検討する自治体が星の数ほど現れた。民間団体、自治体の勉強会レベルまで含めると政令指定都市、中核都市は言うに及ばず県庁所在地クラスの都市の殆どがバスに乗り送るなとばかり、検討し始めた。広島市も含む既存路面電車都市も既存区間の延長戦や新線建設構想を打ち出した。熊本市も同様の動きを見せた。02年、九州運輸局調査委員会が検討して提案した路線は下記画像5の通りとなる。この案が導入路線検討のたたき台となった。04年熊本市は、健軍町方面延伸案として、健軍線動植物園入口電停から分岐し、熊本市東区の庄公園の東側に単線を敷設、動植物園正門まで単線で0.8㌔延伸する案(建設費約10億円)を打ち出した。続いて同年9月には02年提案路線の健軍町から東部への延伸と自衛隊方面の新設の2案(建設費60~70億円)が追加された。庄口公園方面の延伸は採算が取れないとして12月には中止され、健軍町の東部方面の延伸は引き続き調査がされた。

      

    画像5 02年九州運輸局
    調査委員会が検討して提案した路線一覧(画像 面電車ニュースより)

     2つ目は熊本電鉄接続案が検討された。同電鉄は典型的な地方小民鉄線で営業2路線計13.1㌔で鉄道線事業を営んでいる。17年度の1日平均利用者数は約6,000人である。起点となるターミナルが藤崎宮前駅と上熊本駅で都心部地区から外れた立地で、これが同電鉄利用低迷の一因にもなっていた。そこで04年7月、同電鉄は藤崎宮前駅と熊本市電の接続乗り入れ計画を発表した。具体的には、電鉄全線を市電に合わせて改軌した上でLRT化、国道3号バスレーンに軌道を敷設して市電に接続、都心部地区及び熊本駅方面へ直通させるもの(下記画像6参照)で建設費は約100億円と見込んだ。電鉄では負担しきれないことから、公的支援を要請した。また、受け入れられない場合は08年3月に鉄道事業を廃止すると表明した。これは、建設直前で推進市長の落選でとん挫した大阪府堺市の東西方向のLRT新設計画と似ている。会社存続を東西LRT線との乗り入れにかけていた阪堺電気軌道は完全にはしごを外される形となった。同計画推進側の説明不足があり、反対側にその説明不足と矛盾点を突かれた上、反対候補者が当時ブームを巻き起こしていた橋下徹氏の支援を受けていた影響もあった。この事業が後2~3年先に進んでいれば、実現していただろう。結果的に反対派の新市長は、同計画を撤回し阪堺電気軌道へはこれまでの経緯を踏まえ公的支援を実施した。話を戻す。熊本電鉄は05年10月に計画を市に譲り渡し、その後熊本市は熊本県と合志市と共同で、譲渡電鉄案のほかにも、市電を藤崎宮前まで延長して電鉄と同一ホーム乗り換えを行うという形も含めて検討することとし、委員会を設けて事業計画の策定を行うことを07年3月に決定。これを受けて熊本電鉄側では廃止案を撤回。しかし、交通渋滞の可能性があることや、採算性の問題などで、計画は一時凍結された。その後、熊本県・熊本市・合志市は電鉄案のほか、市電の藤崎宮前までの延長と同一ホーム乗り換えという形も含め、都心結節計画検討委員会を設けて事業計画の策定を行い、08年3月、鉄道を廃止して線路敷をバス専用道に転用し、新バスシステム(BRT)導入を軸に検討を進める方針を決めた。その後、同年6月に熊本電鉄が7カ年での経営再建計画を発表し、新規投資ができる環境にないことから、8月に検討委員会は計画検討の凍結を決定した。


    画像6 熊本電鉄と熊本市電の接続の2ルート案(画像 
    面電車ニュースより)

    【考察その3】
    既存の公共交通の改良など
    PTPS設置、結節点改善、P&Rなど・・・

    俯瞰昼
    画像7 熊本駅東口(白川口)広場の完成イメージ図(画像 熊本駅HPより)

     熊本市及び同都市圏では、先の考察で触れた新線建設の検討と併せ既存の公共交通の各改良にも積極的に取り組んでいる。主なその取り組みを紹介したい。

     1 PTPS(公共車両優先システム)の設置 
      バス(02~04年度)~設置区MAP~(熊本市HPより)
       ①県道熊本高森線 桜橋南交差点 ~ 健軍交番前交差点 6.4㌔
       ②国道3号線 水道町~浄行寺 1.2㌔
       ➂県道熊本浜線 辛島町東~中の瀬 6.9㌔
       ②国道3号線 水道町~浄行寺 1.2㌔
       ➂県道熊本浜線 辛島町東~中の瀬 6.9㌔
      熊本市電(10年度) ~設置区間MAP~(熊本市HPより)
       ①熊本駅前~辛島町 2.2㌔ ②上熊本駅前~辛島町 2.9㌔

    2 交通結節点の改善
      熊本駅東口(白川口)広場整備(11~20年度) ~東口広場整備~(熊本市
      HP) 上記画像7参照
      新水前寺駅地区結節点改善事業(07~11年度) 
       ~新水前寺駅地区交通結節点改善事業~(熊本市HP)
      熊本交通センター整備 (19年度夏頃)
       桜町地区第一種市街地再開発ビル内に地下1階地上5~15階建ての商業施設
       (約150)、ホテル(205室)、分譲マンション(159戸)、公益施設
       (最大3,000人収容)、シネマコンプレックス(9スクリーン)、駐車場
       (830台)などが入居する複合施設に26+予備3バースの新バスターミナ
        ルを整備 ~桜町再開発概要~(九州産興HP) ~完成図~(熊本市HP
        )


    3 熊本都市圏P&R(パーク&ライド)整備 
       ~熊本都市圏パークアンドライド駐車場マップ~(熊本県HP)
      熊本電鉄-新須屋駅(09年度) 北熊本駅(10年度)
      JR-
    ゆめタウン光の森第5駐車場(06年度) 宇土駅東口(11年度) 
      熊本バス-イオンモール熊本(09年度) 九州産興バス-西部車庫(07年
      度) 現在計18か所 計472~537台

    4 熊本市電の軌道の走行環境改善 
      
    熊本駅~田崎橋 約0.6㌔ サイドリザベーション化(10年度)
      (下記画像6参照)

    5 熊本市電の新線の検討
       8方面の熊本市電の延伸の検討 
        16年度、8方面の延伸検討路線から自衛隊ルート南熊本ルートの2候
        補路線から
    り込むとした。翌17年度に自衛隊ルート(熊本市HP)に
        決定した。早ければ19年度に事業着手をして22年度着工、26年の開
        業を目指す。沿線には、自衛隊病院や19年完成の熊本市民病院がある。
        路線㌔数は1.5㌔で全線複線構造になる。
    他ルートも中止ではなく、自
        衛隊ルートを最優先して整備するとしている


    6 2環状11放射線道路の整備
       熊本市及び同都市圏では熊本市の集約都市構造への転換に当たり、2環状1
       
    1放射線道路(熊本市HP)の整備を進めている。公共交通との関連で外環
       状道路の整備
     を特に力を入れている。この道路は、熊本北BP、植木BP
       、熊本東BP、熊本環
    状連絡道路、熊本西環状道路の5道路から構成されて
       いる。全線開通したBPも一部あるが、暫定2車線開通区間や調査区間も数
       多くある。全線開通すると、要らざる通過交通の迂回路になり市電やバスの
       走行環境の改善に大きく寄与するものとして期待されている


    7 熊本市公共交通基本条例の制定(13年度)
       みんなで支える公共交通~(熊本市HP)



    画像8 10年度に熊本駅-田崎橋間約570㍍が県道熊本高森線の市電軌道の移設工事にあわせ、軌道敷を歩道側に敷設された(画像 アンドビルド広島より)

     いつも注目して動向を探っている都市でもないので、にわか仕込み感が満載だが、調べた範囲で主なものを並べ立ててみた。都市圏全体の公共交通を含めたマスタープランは次の通り ~熊本都市圏都市交通マスタープラン~(熊本県HP) 熊本市の計画はこちらになる。 ~熊本地域公共交通網形成計画~(熊本市HP) 冷静に見ると広島市の施策と比べ特に目新しいものはないのだが、強いてあげれば『熊本市公共交通基本条例の制定』と日本の都市にしてはパーク&ライドの駐車場が多いこと、02年九州運輸局調査委員会が提案した熊本市電の10ルート延伸案をたたき台に、延伸前提に時間こそかかっているが、真剣(たぶん)に議論を続けている事、積極的なPTPS(公共車両優先システム)設置、地域高規格道路の外環状道路の整備が挙げられる。この辺の比較は次回記事でたっぷりとしたい。PTPS設置率は、洗馬橋~新町間(0.2㌔)は新設(専用)軌道なので、42.9%と他都市よりも群を抜いて高い。気になった点も同時にあった。余所者なので経緯は定かではないが、熊本駅東口広場で熊本市電停留所が広場端にあるのが少し気になった。広場完成図を見ると、駅舎正面からの広い動線は確保されているが、離れ過ぎているのでは?と思った。起点停留所ではなく、中間停留所が理由かもしれない。素人考えだが、スイッチバック方式でもう少し広場内中央に乗り入れて良かったような気もする。伺い知れぬ事情があるのかも知れない。

    その2へ続く
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    関連記事 両備ホールディンス(HD)バス31路線廃止
     
     今日は、お隣の岡山県の都市交通に関する話題をお届けしたい。話題はJR吉備線のLRT化だ。他記事でも散々書いているが、LRTが都市交通の潮流に躍り出て四半世紀が経過した。持続的な都市の成長を実現するツールとして、コスト安もあり導入都市が後を絶たない。日本は残念ながら、先進国の中では最後塵を拝し、未だ新規開業都市がゼロという有様だ。欧米都市とは異なり、都市交通事業の独立採算制と軌道法運転規則が、導入を阻む高い壁として立ちはだかっていることが最大の要因だろう。長い議論期間を経て、ようやく着工に漕ぎつけた宇都宮LRTの成功が日本のLRTの将来を握っていると言っても良いだろう。宇都宮がこければ、日本では未来永劫に普及しないと考える。都市の基幹公共交通としてのLRT、(厳密な意味合いでの)BRT導入は、皆無に等しいが、不採算鉄道線のLRT、BRT化は遅まきながらも進みつつある。その都市の1つに岡山市がある。まずは中国新聞記事から紹介する。
    …………………………………………………………………………………………………………………
    ▼今日の議題 4月5日中国新聞29面より引用
    吉備線のLRT化合意
    岡山市・総社市・JR西 初期費用240億円


    画像1 4月5日中国新聞29面(ブログ画像記事からは全て読めません)

    【記事詳細】
    ▼岡山市と総社市を結ぶJR吉備線について、両市とJR西日本は4日、岡山市の大森市長、総社
     市の片岡市長、JR西日本の来島社長の3者が岡山市役所で会談、LRT化することで合意した

    ▼導入時期は未定。運行はJR西日本で富山市の『富山ライトレール』に続き、2例目となる。
    ▼岡山-総社間の単線非電化路線20.4㌔の路線に100%超低床車両を導入。区間内の既存8駅に加え7駅を新設。運行本数も現在の1時間1~3本を同3~6本に増便する予定
    ▼初期費用額は約240億円。内訳は電化、行き違い施設、車両などの整備費が約171億円。新
     駅設置、道路拡幅などに約69億円。それぞれの分担は、岡山市が約70億円(29.2%)、
     総社市が約21億円(
    8.8%)、JR西が約58億円(24.1%)、国が約91億円(37
     .9%)

    ▼吉備線のLRT化は、岡山市が市内での交通渋滞解消の要望を受け、JR西が03年頃提案し
     た。14年頃から3者が検討作業に入っていたが、費用負担を巡り調整が難航していた  


    画像2 JR吉備線ルート図
    …………………………………………………………………………………………………………………
    【考察その1】
    JR西日本吉備線LRT化構想の歴史と今回の概要


    画像3 岡山電気軌道軌道線の岡山駅東口広場平面乗り入れのイメージ図(画像 岡山市HPより)

     新聞記事にも書かれているが、JR吉備線のLRT化構想は03年頃からあった。JR西はほぼ同時期に富山港線(現富山ライトレール)のLRT化もセットで提案していたが諸般の事情で、早期には実現しなかった。この時期(2000年代前半)、1997年に『路面電車走行空間改築事業』が創設され全国の自治体でLRT構想が官民合わせ、数多く打ち上げられた。都市人口20万人以上であれば、本格検討までいかなくとも勉強会レベルで導入について、検討経験があると言っても言い過ぎではない。しかし、AGT・モノレール整備制度創設の時同様に、殆どが構想倒れで終わった。いくらフル規格地下鉄(㌔当たり建設費300~400億円)やAGT・モノレール(同100億円)よりも安価とは言っても、20~30億円はかかり、事業費全体だと建設㌔数にもよるが数百億円は余裕でかかる。国の補助制度を活用-インフラ部55%。インフラ外部33%-しても財政難が蔓延している自治体の負担は、馬鹿にならない。しかも運営費は独立採算性が大前提で、採算ラインも低くない。事細かに検討していくうちに、現実的には難しいとなる。費用対
    効果も日本の場合、問題視される。軌道法運転規則6条(一編成長30.0㍍以下)、同53条(最高速度40km/h以下)の縛りでLRT本来の中量輸送機関(一編成当たり200人以上、最高速度は60km/h以上)になり得ない。コストが掛かる割には、それに見合う効果が乏しいとなる。結局、日本ではバス輸送の改善のほうがマシとなってしまう。

     既存の路面電車を運行していた都市でも、多くの延伸構想や別事業者との相互乗り入れ構想が打ち上げられた。熊本市(計画路線の項目参照 ウィキペディア)、広島市-~路面電車の LRT化を中心とした公共交通体系の再構築の検討調査報告書~(P38
    ~ 中国運輸局)などがそうである。その中の都市に富山と岡山も入っていた。富山港線のLRT化は構想から僅か3年強で実現したのに対して、岡山市のそれは構想から15年経過してようやく実現の運びとなった。この差は、富山港線が電化路線で吉備線が非電化路線だったことや、都市の基幹公共交通としてLRTの位置づけを明確にしていたか否かによる(後述)。当時の岡山の構想では、市内に路面電車を運行する岡山電気軌道の軌道線の環状線化(複数)やJR大元駅方面の延伸、岡山駅前東口広場内乗り入れ、JR吉備線のLRT化、そして岡山電気軌道との相互乗り入れなどだった。市民団体のRACDA(ラクダ)、岡山商工会議所、岡山電気軌道を運営する両備グループなどから各種提案がなされていた。 ~エコ公共交通大国おかやま構想実現の提言~(両備グループHP) 当の岡山市の腰は重く、悠久とも思える検討期間が続いた。特に岡山電気軌道の軌道線の環状線化については、前向きに検討する姿勢は示しながらも、導入については慎重姿勢を崩していなかった。2010年辺りから、JR吉備線のLRT化の本格検討をJR西と共に入る。インフラ外部(車両など)の補助制度創設され、導入ハードルが下がったことも背景にあった。

     岡山市は直近の岡山市都市交通戦略(岡山市HP)策定に当たり、
    岡山電気軌道軌道線の岡山駅東口広場乗り入れとJR吉備線のLRT化に焦点に絞り、具体的な議論した。前者は、岡山駅構内に接続する平面乗り入れ、岡山駅2階の中央改札口に接続する高架乗り入れ、現在の岡山駅前電停からエスカレーターなどで2階の中央改札を結ぶ高架乗り入れ、駅前電停付近から地下に入る地下乗り入れの4案が提示された。コスト、利便性などから協議の結果、2015年に平面乗り入れ案が採用された(上記画像1参照)。そして18年度より事業着手される。そして今回、JR吉備線のLRT化が正式決定された。当面の最大の課題は解決の目途が立ったとも言える。肝心の都心部地区の軌道線延伸については、岡山市都市交通戦略ではトラフィックゾーンとして位置づけ、歩行者、自転車中心の都市空間として再配分(自動車を削減、締め出すとは言っていない)する目標を掲げている(下記画像2参照)。都心内の面的公共交通サービスを提供(LRT・バス)する軸線も設定(あくまでもイメージ)されている。この計画を進める議論の中で、延伸論議も併せてなされるのではないだろうか?当面は、目の前の岡山駅東口広場内乗り入れと、JR吉備線のLRT化に注力すると思われる。


    画像4 岡山市の都心部都市空間再配分イメージ図 拡大図(要拡大) 画像 岡山市HPより

    【考察そ
    の2】
    現行計画では単なる鉄道線の軌道線化に過ぎない
    既存軌道線(岡山電気軌道)との相互乗り入れを果たしてこそ意味がある。

     今回のJR吉備線のLRT化のニュースは長年の課題解決の意味合いでは、目出度い限りだ。しかし、底意地の悪い見方をすれば鉄道線を多少利用しやすい軌道線に転用するだけの話。都心部の軌道線を運行する岡山電気軌道との相互乗り入れを果たさないとその効果も半減する。鉄道線の軌道線(LRT化、都心部直通しない場合も含む)化-富山ライトレール(19年度直通運転予定)、パリのT4線 や鉄道線(JR線など)と軌道線(LRT、路面電車)との相互乗り入れ-カールスルーエ、デン・ハーグなど をトラムトレインと呼ぶ。本気で集約都市を目指し、都心部地区の求心力回復を目指すのであれば、都心部区間に乗り入れないとあまり意味はないと考える。ここで、いくつかの先進事例を紹介する。

    ドイツのカールスルーエモデル】
     中央駅(鉄道線都市最大ターミナル駅)からの乗り入れない『カールスルーエ型』


    画像5 1992年、世界初トラムトレインを実現したカールスルーエ。画像は、トランジットモール区間を走行する3連接車両の2連結運転中のS2(DBの都市近距離線)。乗り入れ系統を増やし過ぎて、軌道内渋滞が常態化。線増の土地空間が地上ではないので、地下化工事を進めている(画像 ユーチューブ動画撮影より)

     カールスルーエはドイツ南西部のバーデン=ヴュルテンベルク州の、人口約31.8万人の都市である。以前から路面電車線のネットワーク拡大に熱心であり、それも既存の鉄道網を活用した方式に特徴がある。1958~71年にかけて市の南側へ延びる軌間1000㍉のアルブタール鉄道を路面電車線と同一の軌間1435㍉、直流750V電化に順次改築して乗り入れを開始、79年には市の北部ホホシュテッテンへの路線延長に際し、ドイツ連邦鉄道(DB-現在のドイツ鉄道)の貨物線であるハルト線を借用し軌道を共有した。後のカールスルーエモデルの原形となる。更なる路線網の拡張を目指して、84年に連邦鉄道の旅客線への乗入れの研究を開始。運行規則や路線規格の大幅な違いを乗り越えて、92年に実現した。これが世界初のトラムトレインとなる。市街東部に全長2.8㌔の連絡線を敷設、連邦鉄道クライヒガウ線のブレッテンまでの約21㌔を交流15KV・16.7HZ電化、駅の増設等を実施、車輛はデュワグ社のシュタットバーン用車輛を鉄道線対応・交直両用化したGT8-100C/2SG(全幅2.65㍍、長さ37㍍)を投入した。最高速度は100km/hである。開業後1年で乗客が5倍に増加した。その後、中央駅付近と市街北西に連絡線を増設し乗り入れ区間を大幅に拡大。更に、ドイツ鉄道線内のみを運転する列車をトラムトレイン用の車輛に置きかえるなどの結果、その走行区間の総延長は829㌔にも及んだ。 このうち南東方面のライン線ラシュタット、バーデン=バーデン方面はドイツとスイスを結ぶ幹線路線であり、超高速列車のICEが在来線とはいえ200km/hで走行する区間にトラムトレインが乗り入れる。

     ドイツのカールスルーエで始まった鉄道線と軌道線の相互乗り入れ方式は、新しい軌道線の在り方として『カールスルーエモデル』と称された。その後、同じドイツ国内のケムニッツノルトハウゼン、ツヴィッカウ、カッセル、オランダのデン・ハーグ、フランスのストラスブールなどに伝播した。広電の宮島線(鉄道線)の市内軌道線乗り入れ(2号線)も広義では、トラムトレインに近い形態と言える。現在
    カールスルーエでは、乗り入れ系統を拡大させ過ぎてカイザー通りのトランジットモール区間などでは軌道内渋滞が常態化している。複線軌道の容量の限界を超え、線増(複々線化)の空間上の余裕がないので地下化工事が行われている。 ~Kombilösung Karlsruhe~(公式HP) 


    画像6 
    カールスルーエ市内の郊外線区間を走行するSバーン系統(トラムトレイン)。かさ上げされたセンターリザベーションを軽快に走る(画像 カールスルーエ公式HPより)

    【オランダのデン・ハーグのトラムトレイン】
     
     鉄道線を跨ぎ、
    中央駅(都市最大ターミナル駅)からの乗り入れる『デンハーグ型』


    画像7 ハーグ中央駅の高架区間を走行中の3系統電車、しばらくすると地下区間に入る(画像 ユーチューブ動画撮影より)


    画像8 ハーグ中央駅を貫通して軌道線区間に乗り入れる(画像 ユーチューブ動画撮影より)

     カールスルーエなどでは、ターミナルである中央駅に達するかなり手前から連絡軌道経由で、軌道線区間に乗り入れ、都心部地区に達するパターンが多い。中央駅経由だと、大回りになる上に鉄道線から軌道線に遷移する構造が複雑化するデメリットがある。これに対してデン・ハーグのトラムトレインは、中央駅経由で軌道線に乗り入れる。HTM(ハーグ市営交通会社)のトラムと相互乗り入れ先の
    ランドスタット鉄道が、オランダ鉄道線により東西で分断されているからだ。このような構造だと、跨ぐ(高架化)か潜る(地下化)しか連絡する術がない。ハーグのトラムトレインは高架方式を採用している。運行開始は06年からで、カールスルーエとは異なりトラムもランドスタット鉄道もHTM(ハーグ市営交通会社)による運営なので、一体運用がされている。呼称も特別扱いされていない。上記画像7は中央駅舎内を縦貫する姿だが、駅舎内ではオランダ鉄道線と十字型で結節されている。駅及び周囲の鉄道線が高架化されていないので、このような構造となっている。ドイツのフライブルグでも駅舎内ではないが、ⅮB(ドイツ鉄道)線中央駅を跨ぐ時に同様の結節をしている。カールスルーエでは鉄・軌道線乗り入れ専用車両の開発がなされたが、デン・ハーグでは最高速度が60km/hなので、従来の100%超低床車両で運用されている。

    【富山ライトレールと富山地方鉄道との相互乗り入れ計画】
    宇都宮と共に日本のLRTを引っ張る存在


    画像9 富山ライトレール(青色)と富山地方鉄道富山軌道線(オレンジ色、水色)の位置図。類型は『カールスルーエ型』ではなく、ターミナル(都市最大駅)経由で軌道線に乗り入れる『デン・ハーグ型』(画像 富山市HPより)

     他国の紹介ばかりもあれなので国内の事例を紹介する。福井鉄道とえちぜん鉄道の相互乗り入れを、と考えたが、乗り入れパターンが福井駅経由ではなく、カールスルーエ型なので富山市の事例を紹介する。06年にJR富山港線をLRT化して一定の成功を収めた。同時期に構想に挙がっていたがコスト面の問題もあり、ぐずぐずしていた(ブログ主印象)岡山を尻目にコンパクトシティ構想を国土交通省が集約都市への転換する前から、ぶち上げそれを実現する手段に路面電車のを基幹公共交通の柱と位置付けていた。『LRT・NETWORKS・TOYAMA』(富山市HP) 06年の富山ライトレール開業後、09年に富山都心線 丸の内 - 西町間開業、環状運転を開始(上記画像9参照) ~富山市の路面電車を活かしたまちづくり「富山環状線・セントラム」~、12年には富山大橋架け替えに伴い安野屋 - 新富山間複線化。15年、北陸新幹線延伸・富山駅立体交差化事業に合わせ、『路面電車南北接続事業』の第1期開業(下記画像10参照)を果たした。19年度に第2期が完成して、念願の富山ライトレールと富山地方鉄道富山軌道線の相互乗り入れが実現する。その後は、現在終点となっている大学前電停から同大工学部前までの延伸や、富山地方鉄道線の上滝線との相互乗り入れなどが検討される。既存路面電車都市のLRT化に最も熱心かつ、着実に実践している姿勢は岡山市だけでなく広島市も見習う点が非常に多い。富山市が恵まれていたのは、JR線だけではなく富山地方鉄道という鉄・軌道インフラがあった点だ。典型的な地方閑散路線だが、LRTにリメイクして再活用する題材としてはうってつけだ。純粋なLRTにはまだまだ及ばないが、路面区間が多い既存都市で一番それに近い。何よりも森富山市長のリーダーシップが素晴らしい。

     岡山市のLRT化された吉備線と岡山電気軌道線との相互乗り入れを阻むのは高架化されていない岡山駅の存在だ。乗り入れる場合、高架、もしくは地下で接続するしかない。現状の岡山電気軌道線の東口広場乗り入れ案は、コスト面では最良だろうが岡山都市圏全体の公共交通網整備の観点から見ると、決して最良とは思えない。事情に詳しくない他県人の目から見てもそうだ。コストが跳ね上がるが、岡山電気軌道軌道線は高架で東口広場内乗り入れ。併せて広島駅同様に駅ビルを建て替え、ビル内にも乗り入れる。当然反対側の西口から、JR吉備線も高架で乗り入れさせて新駅ビル内で結節。相互乗り入れを実現させる。これがベスト案と考える。そう、『デン・ハーグ型』のトラムトレインとするのだ。岡山市が、広島市を押しのけ中四国地方の中心都市、いや中枢都市を本気で目指すのであれば、これぐらいの野心的なプランがあっても良いと思うのだが。


    画像10 北陸新幹線延伸と並行して行われた
    『路面電車南北接続事業』一環で、高架駅真下に乗り入れた富山地方鉄道富山軌道線。申し分ない結節だ(画像 ユーチューブ動画撮影より)


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