封入体筋炎患者闘病記

 封入体筋炎患者のヒロです。病歴は2019年で満11年、12年目に入りました。在宅勤務の仕事とリハビリの日々を送り、細やかながらも家族3人で暮らしています。ブログ記事は闘病記と広島地元ネタ、社会保障などの時事ネタ中心です。希少疾患の封入体筋炎の周知が目的です。関心があれば、ツイッターなどでご紹介していただければ幸いです。疾患関係で直コメントが苦手の方は、ツイッターのダイレクトメールを利用してください。封入体筋炎の闘病史は各進行段階の症状や生活障害、必要な社会保障制度等をまとめています。良ければ参考にしてください。最新の封入体筋炎の状況は『近況について色々と』、取り組んでいるリハビリについては『2019年春~夏 筋疾患(封入体筋炎)リハビリ』にて素人の体感目線で書いています。モバイル版で読みにくい場合は、PC版に転換してからお読みください。

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シリーズ記事 海外先進事例 ドイツの運輸連合 
カテゴリー記事 
広島の都市交通 海外都市先進事例

【考察その5】
広島型運輸連合の提案 シュミレーション1
導入前の環境整備


画像1 広電市内軌道線本線を走行中の5200形車両(画像 アンドビルド広島より)

 今日の記事では、広島市に運輸連合を導入する場合の理想形みたいなものを追い求めてみたい。 

ステップⅠ 地域公共交通再編事業計画と広島市地域公共交通再編実施計画の
      策定(
初動から1年半~2年程度)
 広島200万人都市圏構想自治体を交通圏域と定め、広島市を始めとする自治体、広島県、国、交通圏域内の交通事業者から構成される
『広島運輸連合検討協議会』を設置。共通運賃・ゾーン運賃導入を大前提に事業者間の利害などを調整しながら、協議。市は、国と県と協力しながら地域公共交通再編事業の一環として①第1号 特定旅客運送事業に係る路線・運行系統・航路又は営業区域の編成の変更 ②異なる公共交通事業者等の間の乗継ぎ円滑化のための運行計画の改善、共通乗車船券の発行、乗継割引運賃の設定、交通結節施設における乗降場の改善、 旅客の乗継ぎに関する分かりやすい情報提供、地域公共交通の利用を円滑化するための措置 などを実施するための計画である『地域公共交通再編実施計画』を策定して、国土交通省に提出。国土交通省の認可後、公正取引員会に上申。審議にかける。認可後速やかに実行に移す(下記画像2参照)。

ステップⅡ 段階的な運輸連合への移行(初動から3~4年程度)
 本格運輸連合の導入を大前提とした壮大な社会実験の位置づけ。実施する政策は以下の通り。①
特別指定ターミナル(広島駅、横川駅など16カ所)での異種公共交通事業者乗り継ぎ割引制度導入と連動した運行計画策定と実施 ②各交通事業者内の個別ゾーン運賃制導入(運賃額は事業者の任意)と運賃の足並みを揃える ⓷交通系ICカードのイコカとパスピーの統合(発展的解消)、広島地域イコカの導入 実験期間を2年として、実験開始の半年後から『広島運輸連合設立協議会』を立ち上げる。委員会内の検証部会にて問題点の洗い出し作業と改善策の提案をして、2年目以降の政策に反映させる。実験と同時進行で結果などを踏まえ、運輸連合本格導入に向けた導入範囲のゾーン設定、適正運賃設定、運賃収入の各事業者配分比率などを本格導入の半年前までに決定する。同時期に独立行政法人『広島運輸連合-Hirosima Transit company Union』(HTU)を設立する。組織の運営や維持・管理の原資は各自治体の本会計予算からではなく、個人市民税の非課税枠を廃止した増収分を充てる。現行の日本の交通事業者の運営等の運賃収入カバー率は平均93%程度だが、フランス、アメリカの30%前半、ドイツの60%台よりも高い80%台前半を目指す。


画像2 各計画の位置づけ(画像 国土交通省HPより)

【考察その6】
広島型運輸連合の提案 シュミレーション2
Hirosima Transit company Union』(HTU)スタート以降


画像3 ゾーン運賃制のイメージ(画像 広島市HPより)

広島広域都市圏
画像4 広島200万人都市圏構想の自治体一覧(画像 広島市HPより)

ステップⅢ 
広島運輸連合-『Hirosima Transit company Unio
      n』(HTU)始動(初動から5年後)

①参加交通事業者:広島200万人都市圏構想の自治体で運営する鉄・軌道、バス、船舶等の交
        通事業者(上記画像4参照)

【鉄・軌道】 JR西日本 広島電鉄 広島高速交通 広島スカイレール(積水ハウス)
  【バス】 広島電鉄 中国ジェイアールバス 広島交通 広島バス 芸陽バス 備北交通
       エイチ・ディー・西広島 エンジェルキャップ 第一タクシー ささき観光
       総合企画コーポレーション 広交観光
  【船舶】 JR西日本宮島フェリー 宮島松大汽船など各社

②適用範囲(交通圏域):
広島200万人都市圏構想の全自治体(下記画像4参照)
➂適用外:タクシー、適用範囲外の都市間高速バス路線
④ゾーン制運賃設定:
  Aゾーン 都心部・デルタ内エリア 住吉町南交差点より半径2.5㌔内
  Bゾーン デルタ外エリア1 
住吉町南交差点より半径5.5㌔内
  Cゾーン 
デルタ外エリア2 住吉町南交差点より半径12.5㌔内
  Ⅾゾーンデルタ外エリア3  住吉町南交差点より半径25.0㌔内
  Eゾーン デルタ外エリア4 住吉町南交差点より半径25.0㌔以上
  運賃:ゾーン内移動-200円 ゾーン1つまたぎ-300円 ゾーン2つまたぎ
     
380円 ゾーン3つまたぎ-450円 ゾーン4つまたぎ-550円
  
新幹線については『ゾーン運賃+特急料金』とする

⑤各事業者への運賃分配&政策的割引の損失補填:
   分配額の決定-新年度の輸送計画立案の際に前年度の
輸送人員×平均移動距離により事
   業者ごとの分配額を決定。分配契約を締結する。運営コストと分配額との差額が事業者
   収益となる。計画分配額よりも実際の分配額が上回った場合は、その差額分を調整金とし
   て一部供出し、調整金基金に積み立てる。逆に下回った場合は、調整金基金より補填され
   る。


   
政策的割引の損失補填-各自治体が求めた追加計画に伴うコスト増については、国、県、
   市が全額補填する。各事業者へは、
分配契約に伴わない運営費補助は原則、行わない(
   独立採算制の部分維持)
⑥広島運輸連合の都市交通圏域のインフラ整備等について:
 【インフラ部】 鉄・軌道、専用走行路、駅・停留所施設、各ターミナル等の結節施設
  国庫補助率に基づき、国-55%、導入自治体-30%、県-10%、広島運輸連合-
  5%(
調整金基金から捻出) 事業者負担0%
 【インフラ外部】 車両、車庫、電力施設など
  国
庫補助率に基づき、国-33%、導入自治体-18%、県-16%、車両リース会社
  -33%(新規車両導入の場合、それ以外は広島運輸連合-33% 
事業者負担0%

 以上の負担率で設備投資額を決定する。新型車両のリース料は、各事業者の事業規模と前
 々年度の収支を鑑みて必要に応じて半額補助する。
⑦広島運輸連合の運営コストについて:
 国-20%、広島県-40%、広島市-15%、広島市以外の運輸連合加盟自治体-20%
 、金融機関その他-5%がそれぞれ供出。余剰金が発生した場合は、
調整金基金に積み立てる
 。県と各自治体のコスト負担は、本会計予算からの持ち出しではなく県、市、町民税の非課税
 枠の撤廃による増収分を特別会計でプールしておく(目的税化)。特別会計でのプールしたも
 のは、運営費と公共交通のインフラ部とインフラ外部の拠出金目的以外には使わない。


画像5 広島市のデルタ内エリアの範囲とその中心点(中区住吉町南交差点)

【考察その7】
提案の補足説明とシリーズ総括


画像6 山陽自動車道付近の高架軌道を走行中のアストラムラインの様子

 最後に簡単な補足説明をしたい。運輸連合の都市交通圏域設定は広島200万人都市圏構想の自治体としたが、ほぼ1.5%都市圏の範囲で適正と考える。狭過ぎず、かといって広過ぎずである。ゾーン設定は、3~4ゾーンの設定が理想だが、自動車移動需要からの転移を目的にもしているので、5ゾーンとした。ゾーン設定の起点は当初、都心部地区のど真ん中の紙屋町交差点がイメージ的に相応しいとも思ったが、実は広島市のデルタ内地域の中心点は中区住吉町南交差点だ。地理的の正確性を根拠としそうした次第だ。運賃額については現行水準よりも相当の割安設定として、公共交通移動需要の増加を目指す。分配額については、ドイツの運輸連合のそれをそのまま参考とした。現在はIC系交通カードの普及で、諸データが正確に出る。インフラ整備等は、国の補助率はそのままとして、整備や導入の壁となっている事業者負担を原則ゼロとした。県と圏域内の自治体の県、市、町民税の非課税枠の撤廃で広島市規模で年間70~100億円の増収、広島県規模だとその2倍以上の確保が可能で、同時に専用財源にもなる。非課税枠の撤廃には賛否が分かれるが、税の公平性を鑑みれば非課税の理由に所得の多寡は絶対に該当しない。従来の事業者負担を求めないとした。この根底には『公共交通インフラは、社会全体の公有財である』との考えに基づきそうした。運営費については、国の補助を受けつつも県と交通圏域の自治体の拠出金にて運営する体制とする。その原資は今説明した県、市、町民税の増収分と運賃収入で、運賃カバー率は80%を基本線としたい。下記のドイツと日本の都市の市内移動に係る各移動手段の分担率を見て頂きたい。

市内移動に係る各移動手段の分担率 単位:%
【人口10~30万人台】
 ドイツ       徒歩   自転車等  公共交通    自動車
 フライブルグ   21.0  19.0  18.0   42.0
 ヴュルツブルク  24.0  18.0  17.0   41.0
 カールスルーエ  23.0  17.0  16.0   44.0
  
 日本        徒歩   自転車等  公共交通    自動車
 盛岡       20.4  16.0   6.0   57.4
 旭川       11.4  11.6   3.6   73.4
 長野       16.1  12.1   6.0   65.6

【人口40~80万台】
 ドイツ       徒歩   自転車等  公共交通    自動車
 ブレーメン    21.0  22.0  17.0   40.0
 ドレスデン    27.0  12.0  22.0   39.0
 ハノーバー※   23.0  16.0  22.0   39.0

 日本        徒歩   自転車等  公共交通    自動車
 熊本       15.7  14.1   5.9   64.5
 岡山       19.6  13.8   6.5   59.5
 金沢       16.1  10.2   6.4   67.2

【人口100万人台】
 ドイツ
       徒歩   自転車等   公共交通   自動車
 ミュンヘン※   24.0  15.0   25.0  36.0
 ハンブルグ※   22.0  12.0   21.0  45.0

 日本        徒歩   自転車等   公共交通   自動車
 仙台※      19.8  13.7   16.5  44.7
 広島       19.0  17.1   16.0  47.6
 福岡※      18.6  15.6   23.5  42.2

※はフル規格地下鉄及び、地下式LRTなど地下式鉄・軌道系公共交通が整備されている都市

 人口ごとの都市別移動手段の各分担率を書き足したが、日本の地方中枢都市クラスでは、そこまで大きな差はないが、80万人台クラス以下の都市では、日本は自動車移動中心になっているのに対しドイツの都市は(日本の都市に比べ)低い自動車分担率、高い公共交通利用率であることがお分かりだろう。これは公共交通網の整備水準が異なることも大きいが、運輸連合によるソフト面のバリアが少ないことも大きい。他の要因として、郊外開発フリーでこれまで格差都市化-都市のスプロール化-に邁進してきた日本の地方都市と郊外開発が厳しく制約されるドイツの地方都市の差異もある。公共交通利用率の高さはイコール強い都心部地区を有しているにもなるので、ドイツのコンパクトシティ建設が都市規模関係なく進み、成功していることの証左になる。地方都市の元気の良さがドイツの強みだ。ドイツは旧西ドイツ時代の1960年代より、程度の差はあれどモーターリゼーションの迎合した都市計画とは決別して、現在のコンパクトシティに連なる公共交通指向型開発(TOD)に邁進してきた。一般的には大都市ほど公共交通分担率が高く、中小都市ほど低い傾向が強い。日本の地方中小都市の公共交通が絶滅寸前なのは市場の縮小に歯止めがかからないからだ。広島市の話をすると、地方都市の割には高い公共公共交通利用率を誇っていると言える。自虐的な広島人思考だと、広島市の公共交通は貧弱に映るようだが、地下鉄網を複数保有している福岡、仙台両市と分担率の観点では遜色のない水準だ。これは速達性の問題は置いておいて、代替え交通機関が十分あり曲がりなりにも機能していることを意味している。公共交通が貧弱かどうかの判断は、地下式鉄・軌道系公共交通の有無など選定機種関係なく、階層化されたものがどれだけ整備されているのかによる。その意味合いでは、メニューとしては、それなりに揃っている。広島市も平野部が市域面積の18%しか平野部がない天然の要害で、日本の都市としては極端な拡散都市化は進んでいないが、モーターリゼーションの進行で自動車の分担率は他都市同様に上がっている(下記画像7参照)。それを是正するのが、集約都市構造への転換でその実現手段は公共交通移動中心の都市に改めることだ。その方法論の一つに運輸連合の導入がある。かっては独禁法という乗り越えられない大きな壁が実在したが、近年では取り組み次第では乗り越えられるようになりつつある。乗り継ぎのバリアのハード面は結節点改善が広島市でも至る所で進み、改善されつつあるがソフト面はまだまだである。広島市の公共交通が抱える問題点は一にも二にも路面公共交通(路面電車とバス)の速達性と定時性の向上であるが、これに併せて運輸連合の発足でソフト面も解決されれば、さらに便利になる。そうすれば未だにくすぶっている時計の針を逆さに回した地下式鉄・軌道系待望論など、愚論として見向きもされなくなるだろう。


画像7 1987年と2008年の広島市内の移動手段の各分担率(画像 広島市HPより)

終わり

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前回記事 ドイツの運輸連合 その1
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広島の都市交通 海外都市先進事例

【考察その3】
運輸連合発足前後のドイツ以外の動き
フランス、アメリカ、日本、そして広島市・・・


画像1 欧州都市初LRT復活開業都市のフランスのナント。
ナントメトロポール都市共同体地域の公共交通を一元管理する組織-Semitan(公式HP)を79年に立ち上げた (画像 20minutesより)

 旧西ドイツの第2の都市ハンブルグで、1965年世界初の運輸連合が誕生した。この動きが旧西ドイツから、全世界に伝播したかと言うと必ずしもそうはならなかった。欧州各国では、理由として公共交通を担う都市交通事業者の大半は国や地方自治体の公営事業者が多く、トラム(路面電車)やバスの運営をしていた。日本やドイツのように都市内、都市交通圏域内を複数の官民合わせた都市交通事業者が運営しておらず、その公営事業者が一手に引き受けているケースが多かったからだ。都市内に限れば、ほぼ運輸連合の本来の主旨である一元化が実現していたと言える。問題は市域外を跨るケースだった。日本とは大きく異なり、郊外開発に厳しい規制を敷くかの国々でもモーターリゼーションの進行でで都市のスプロール化やドーナツ化現象が顕著となっており、道路も含めた都市交通問題は一都市だけではなく、市域外を跨る問題になりつつあった。そこでフランスなどでは、日本のように広域合併ではなく、県と市の中間的な組織である都市共同体(ウィキペディア)を設立し、その枠内で共同体内の自治体の公共交通全体の運営を司る広域組織を設立した。ドイツの運輸連合とは手法が少し異なるが、都市交通圏域内の公共交通の一元化の意味合いでは、類似するものだ。市場原理主義の権化で、自己責任の国のイメージしかないアメリカにおいても、世界のトップを独走するモーターリゼーションの進行で60~70年代、都市の公共交通は瀕死の状態で民間の都市交通事業が営む環境ではなくなっていた。当時公営事業者がそう多くなかったアメリカでは、60年代後半~70年代にかけて民間事業者の路線を引き受け公営化させ公共交通の一元化を進めた。運輸連合設立と言う形では伝播しなかったが、営利事業から、建設と維持管理に欠損分を公的資金(税金)を導入し利用者負担の行政サービスの一環に転換する過程で、公共交通の一元化は進んだ。日本では70年代東京と大阪で運輸連合の導入が検討されてが実現しなかった。その理由としては、両都市圏においては高密度の公共交通輸送なので、インセンティブが働かなかったことがある。運輸連合ではないが、70年代広島市に本社を置くバス事業者の間で事業者統合の動きがかってあった。


画像2 広島駅バスターミナルに停車中の『エキまちループ』の広電バスの様子
(画像 広島・都市再生会議より)

 その話の前に独占禁止法(以下 独禁法)について軽く説明する。この法律では一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる企業結合-株式取得(10条・14条)、役員兼任(13条)、合併(15条)、分割(15条の2)、 共同株式移転(15条の3)、事業等の譲受け(16条)-を禁止している。これを踏まえて話を進めたい。広島市も高度成長期下の強烈なモーターリゼーションに晒された。公共交通の中心だった路面電車とバスは、道路渋滞に巻き込まれ速達性と定時性を著しく失い、利用者離れが顕著となった。各交通事業者は、ワンマン化や運行計画の見直しなど合理化を進めたが芳しい結果は得れれなかった。そこで、市域と都市圏規模の割には多過ぎる事業者数が問題になった。67~68年にかけて広電バス・広島バス広島交通芸陽バス備北交通による5社合併が模索され、合併についてのバス運営協議会を設置した。芸陽バス
備北交通は既に広電バスの系列下となっており、残りの3社で協議を行った。広島交通が途中で離脱し、広電バスと広島バスとの2社の協議になったが、69年一度目の広島バスとの経営統合協議が行われたが成立しなかった。その後も合併の模索がされ、71年9月広島電鉄が広島バスに資本参加を行い、70%の株式取得、同年10月より新体制で運営することを発表した。当時の広島バスは県外資本の帝産オートの傘下だったが、広島バスの社長の説得で実現した。その後の会議で、広島バス株式の85%の譲渡が決まり、広島バスに役員を派遣した。経営統合の成果として、広島バス・広島電鉄間の路線調整、広島バスが運営していた宮島の観光船事業『広島観光汽船』を、広島電鉄系列である『宮島松大観光船』に譲渡が行われた。


画像3 広島市内に主要路線を持つバス事業者の合計損益推移。自由化元年のH15(03)年は収支が改善されているが以降は大きな赤字に転落している(画像 広島市HPより)

 順調にいくかと思われた矢先、これまで静観していた公正取引員会が72年2月よりこの件の調査を始めた。同年9月に私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)上の競争の実質的制限にあたるとして排除勧告を行った。その後の審判を経て、73年7月、広島電鉄から派遣役員の辞任、広島バスの株式の大半(8万5,000株)の処分で同意審決した。それに伴い、広島バスに派遣されていた役員4人は辞任、同年8月には広島バス株式の約77%を株式会社増岡組に譲渡した。独禁法の適用が肯定された理由は、軌道法(路面電車)と道路運送法(バス)の規制(認可運賃制)の下で均一運賃制が採用され、 運賃競争は存在していない。しかし、認可運賃制の下では、各事業者がそれぞれ独自の 判断で運賃の認可申請を行う仕組みが採用されており、本来、運賃競争が予定されてい る。また、サービス競争においても、路線、停留所、運行回数等について、申請・変更 の手続を経ることで自由競争が保証されている。従って、これらの範囲において、 運賃競争もサービス競争も存在し、独禁法の適用が肯定される、と判断されたかれである。よって、日本の都市交通事業において運輸連合の導入-競争の実質制限に相当する-との解釈が成立し、独禁法に抵触するため長らく、公の場で議論すらされなかった。都市交通事業の独立採算制の堅持を掲げている手前、絶対に外せない要素で不文律でもあった。世紀が変わった2002年、規制緩和の一環でイギリスのバス自由化施策を範とした乗り合いバス自由化が導入された。参入と運賃規制の垣根が取り払われ、市場への入退場が原則自由となったがこれは80年代半ばサッチャー政権時のバス自由化施策をモデルとしたものの日本版だった。当のイギリスでは賛否が大きく分かれ、行き過ぎた政策の修正が後の政権で行われていた。要は競争原理を明確にし、サービス合戦をさせることで需要全体を大きくすることを目的としていた。規制緩和による市場原理主義の導入は、成長産業分野など伸びしろが大きい場合や規制理由で停滞している分野などでは、大きな効能があるが停滞期を過ぎ市場が縮小し、斜陽化している産業ではプラスに働くどころか副作用が大きく衰退を加速させる側面がある。乗合バス自由化政策も例外ではなかった。


画像4 広島市のバス運行対策費補助金額の推移(画像 広島市HPより

 導入直後は一時的な利用者回復傾向があったが、その後当事者である多くの中小のバス事業者は導入前以上の赤字に悩まされることとなる。規制により、棲み分けがなされ少ないドル箱路線で閑散路線を含めたネットワークが辛うじて維持されていたが、そのドル箱路線に他事業者が参入するようになりその構図が壊れた。結果、収支は自由化政策以前よりも悪化して(上記画像3参照)、休止、撤退路線が増えネットワークが維持できなくなった。本来であれば改善すべきは身体が衰弱しきった乗り合いバスに鞭を与え、奮い立たせることではなく、バスを含めた公共交通利用に誘導するような都市構造-コンパクトシティ、集約都市-に改めることだった。結果、体調大不良のバス事業者を無理やり、競争の場に引きずり出し無茶をさせたために症状をさらに悪化させるだけで終わってしまった。休止・廃止予定路線を『市民の足確保』との名目で存続させるための市の補助金も自由化政策導入前年の1.4倍になるなど(上記画像4参照)、百害あって一利なしの結果となった。しかし見方を変えれば思わぬ副産物を生み出すことになった。

【考察その4】
『日本版運輸連合』設立に向けた下準備


画像5 LRT整備に係る国土交通省の制度ガ異様(画像 国土交通省HPより)



画像6 公共
交通再生の各計画の位置づけ(画像 広島市HPより)

 バス自由化政策以降、特に10年代に入り、行政-国と地方自治体-が地域の民間事業者中心の公共交通計画に関与する事例が増えた。LRTやBRTの整備制度(上記画像5参照)が創設、拡充され従来であれば、公営事業者(地下鉄)、自治体が主体性を持って設立した第3セクター(モノレール、AGTなど)のみを対象とした建設補助制度も、民間事業者もその対象となった。公共交通計画に関しては、①国が13年制定した交通政策基本法(国土交通省HP)、②地域の将来の公共交通のあり方の方向性を示した計画-公共交通の体系づくり(広島市HP)-、➂その中でバスだけに特化した計画-バス活性化基本計画(広島市HP)-、④②をさらに具体化させた計画-広島市地域公共交通網形成計画(広島市HP)-、⑤④を実現する個別計画-広島市地域公共交通再編実施計画 第1版 (案) の概要
 (広島市HP)-が民間交通事業者を交え(②以降~)、策定された。構図としては行政が主体性を以て、地域の公共交通計画を策定し民間交通事業者が実際の運営に当たる、である。先の考察で『思わぬ副産物』と形容した理由は、国の間違った政策で民間事業者が弱体化し、行政が手を差し伸べる形となり行政の関与の余地を生み出した。それを指してそう言った次第だ。民間事業者に関しては干渉せずの大原則が結果的に崩れた。今も経営には口は挟まないが、地域の公共交通計画を通じて干渉し始めた。10年頃から国家政策で集約都市-コンパクト・プラス・ネットワーク(国土交通省HP)-建設に舵を切り直した。集約都市とは平たく言えば、公共交通移動前提の都市構造に改めることでもあるので、担う役割は大きい。担う役割は大きいのに、特に地方の中小の交通事業者の衰弱ぶりは目を覆うばかりだ。そこに今回の記事主題の運輸連合の検討と導入の可能性を見出せるのだ。都市差はあるが、3大都市圏の都市、広島市のような地方中枢都市以下の都市の公共交通のシェアは、人口70~80万人台の岡山市や熊本市クラスでも5.9~6.5%と異常に低い。因みに日本の人口70~80万人都市は、ドイツの都市だと50万人台都市に相当するがこれらの都市の公共交通のシェアは、20%台前半ぐらいである。モーターリゼーションの進行で市場そのものが大幅に縮小している。いくら今後縮小社会(超高齢化+大幅人口減)に向かうので、集約都市-公共交通の役割が大きくなると力説しても、『笛吹けども踊らず』になり、机上の空論で終わりかねない。何か大きな転機となるカンフル剤が必要だ。それには運輸連合が適切だと考える。


画像7 現状の拡散都市構造から集約都市構造に転換するイメージ(画像 広島市HPより)

 かっては、独禁法の競争の実質的制限にあたるとして企業連合-公共交通の一元化に向けた動き-だが、徐々に見直しの機運が高まりつつある。企業連合が即=運輸連合の発足になる訳ではないが、偉大なる第一歩で最終形であることには変わりがないし、競争原理の排除の意味合いではイコールに十分なる。見直し機運とは、第21回未来投資会議での議論を受け、18年11月の経済財政諮問会議・未来投資会議・まち・ひと・しごと創生会議・規制改革推進会議の合同会議における成長戦略の中間整理で、『地方銀行や乗合バス等は、地域住民に不可欠なサービスを提供しており、サービスの維持は国民的課題である。経営環境が悪化している地方銀行や乗合バス等の経営力の強化を図る必要がある。このため、独占禁止法の適用に当たっては、地域のインフラ維持と競争政策上の弊害防止をバランス良く勘案し、判断を行っていくことが重要である。地方におけるサービスの維持を前提として地方銀行や乗合バス等が経営統合等を進める場合に、それを可能とする制度を作るか、または予測可能性をもって判断できるよう、透明なルールを整備することを来夏に向けて検討する』として、独占禁止法等の競争政策のあり方についての検討が始まった。青下線の部分は非常に重要で、条件付きながら場合によっては、競争原理を適用しないこともあり得ることを示唆し、予測可能性を以て判断可能な透明な新ルールを整備すると明言している。ブログ主の解釈では、いきなりはないと思うが将来の日本型運輸連合の誕生への扉を開いたと考える。 ~独占禁止法等の競争規制の地域交通への適用に関する相談窓口のご案内 ~(国土交通省HP) 最初は瀕死寸前の交通事業者が多い中小都市のみを対象とすることは容易に想像できるが、その成功を受け順次拡大するのではなかろうか?日本の都市交通事業の大前提の独立採算制を堅持して執り行うのか?部分的にそれを捨て、不採算路線に関しては適切な補助率で維持するのか?個人的にはこの辺に注視したいところだ。運輸連合も含めての話となるが、既に営利事業としての公共交通を捨てた欧米先進国の運営費等に関する運賃収入カバー率は、フランス32%、アメリカ33.5%、ドイツ71%。日本のそれは93%。不足分は、前者の3か国は公的資金で賄い、日本は広告収入や他部門から繰り越しで賄っている。ブログ主の所感ではあるが、地方都市の都市交通事業は既に行き詰り、事業者は瀕死及び瀕死寸前だと思っている。次回は広島市における運輸連合の可能性を考察したい。

その3へ続く

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カテゴリー記事 広島の都市交通 海外都市先進事例

【考察その1】
ドイツの運輸連合の誕生背景 




画像1 03年に完成したJR横川駅前広場の様子(画像 アンドビルド広島より)

 広島市の公共交通-JR、広電路面電車、アストラムライン、各バスなど-を使うと思うことがある。それは、他事業者間を乗り継いだ場合、乗り継ぐごとに初乗り運賃が発生し結構な割高運賃を徴収される。通勤的だと、会社負担で割引もされるので運賃を取られる心理的な痛みは伴わないが、プライベートの所用で移動時間1時間程度で合計500円以上(往復だと1,000円程度)、取られると運賃のコスト負担とドアツードアの利便性を考えると自動車移動に分がある事はこの点からも明らかで、公共交通全体の競合相手を自動車とした場合、公共交通利用の方に取られる痛みを感じてしまう。こうした試算をする場合、自動車の移動距離で要したガソリン代の計算だけではなく、保有コスト-ローン支払い、駐車場代、各保険の負担-なども含めて、厳密に計算しないといけないのだが、そこまでは考えが及ばないのが常だ。広島市の公共交通を担う交通事業者は鉄・軌道系が4社、バスは12社。タクシーや船舶なども含めると優に20社を余裕で超える。部分的な乗り継ぎの割引制度-同事業者間、フィダーバス-は導入されているがこれらは例外中の例外に過ぎない。バリアフリー、シームレスな乗り継ぎ制度になっているとはとても言い難い。地下式鉄・軌道系公共交通の整備がコスト面や財政面の問題から難しい広島市は、乗り継ぎなどの結節点改善に現在、鋭意努力しているところだがハード面のそれは進んでいるが、ソフト面のそれは諸般の事情もあり立ち止まったままだ。ハードの改善は抜本的なレイアウト構造の変更、交通施設の容量の増加、表示などの工夫でほぼ解決できる。しかし、ソフトの改善は独占禁止法のカクテルの問題がそびえ立ち、議論すら交わされないのが現状だ。公共交通優先を唱えながらも掛け声倒れ感が強い。同じ先進国でも、モーターリゼーションの黎明期である1960年代から、交通事業者間の不毛な競合に終止符を打ち、自動車を公共交通の競合相手と見立て営利事業ではなく、公共交通システムを社会全体の公有財とし、整備や維持管理に莫大な税金を投入し、受益者負担の行政サービスの一環にした国がある。それはドイツだ。そして、自動車利用から公共交通利用へ誘導するために運輸連合なる組織を立ち上げた。ドイツの公共交通は『地域化法』第1条第1項にて、『住民に対し、公共近距離旅客輸送における十分なサービスの提供を保証することは、生存配慮に属する任務である』と明確に定義、地域公共交通の提供=公共部門の任務としている。


画像2 世界的メッセ都市ハノーバー(人口53.2万人)のシュタットバーン(地下式LRT)の様子。1975年開業で、1日平均21.9万人を運ぶ。当時の主流だった高床式(床面高さ100㌢前後)規格で統一されている(画像 ハノーバー公式HPより)


画像3 マンハイム(人口30.8万人)のトランジットモールであるクアプファルツ通りの様子。69年にシュトラセバーン(トラム=路面電車)のシュタットバーン化(地下式LRT)の一環でダルベルクシュトラーセ電停が地下化されたが、規模拡大や70年代のUバーン(フル規格地下鉄)導入計画はコストの問題から見送られた

 運輸連合とは、定めた都市交通圏域内の都市交通事業者を一つの器(運輸連合)に集め、連合体を形成し、公共交通の運営を一元管理したものである。主だった取り組みとしては、以下のものがある。①共通運賃制度(ゾーン運賃制-下記画像4参照)の運用-各交通モードの運賃体系を一元化し ゾーン内の共通運賃を導入 ②ストレスが少ない乗り継ぎの実現-交通結節点の改善、共通ダイヤの導入、異種交通機関との情報共有化などの乗り継ぎ環境の大改善 ⓷各交通モードの特性-速達性、輸送能力など-を活かした棲み分けと役割分担-不毛な競争の排除 ④都市圏域の核となる都市を中心とした公共交通網の整備促進 などである。旧西ドイツでこの制度が発足した背景には、モーターリゼーションの大波が第2次世界大戦後の復旧と復興がひと段落した後に第二波として、押し寄せたことが契機となった。ドイツのモーターリゼーションの歴史は、多くの先進国が
第2次世界大戦後の高度成長期に入った時期だったのに対し、アメリカ同様に1930年代からと古かった。ナチスドイツの独裁者だったヒトラーが国民車構想を掲げ、アウトバーン建設を内需拡大策を打ち出し32~42年までに計3,900㌔を開通させたことがその端緒となった。戦後、西ドイツ分として2,100㌔のアウトバーン網が残った。瓦礫の撤去、破壊された橋梁の架け直し、 路面の補修に労力は要したがヒトラーが残した数少ない正の遺産でもあった。これのその後の旧西ドイツの経済発展に大きく寄与した。こうした歴史的な経緯もあり、他の欧州先進国よりもいち早くモーターリゼーションの大波が押し寄せたのである。国民の所得の向上と共に夢のマイカーは、もはや夢ではなくなり少し努力すれば手が届く現実的な移動手段となった。それまでの移動手段の主役であったシュトラセバーン(トラム=路面電車)やバスといった公共交通は、都市交通事業者がそれぞれ随意に輸送を展開してきた結果 として、サービスやインフラの重複が生じ、非効率な利用者の争奪が発生していた。また、異なる交通機関を乗り継ぐ際の運賃がかさむことなどから、市民にとっても利便性が高いとは言えず、ドアツードアの利便性に勝る自動車に利用者を奪われた。残った少ないパイの奪い合いをするかの如く、生き残りをかけた過当競争が激化して非効率性がさらに増し、利便性を損ない利用者の減少を招き、自動車利用に追いやるという負のスパイラル局面に入った。そして各交通事業者は収支を悪化させた。旧西ドイツにおいて都市交通事業は営利事業としての限界が近づきつつあった。何か絶滅寸前の恐竜のようでもあった。


画像4 ゾーン運賃制度のイメージ図。ゾーン内であれば、何度乗り換えてもの運賃は一定額で変わらない(画像 広島市HPより) 

【考察その2】
1965年にハンブルグの地で誕生した運輸連合



画像5 65年発足のドイツ初の運輸連合-HVV-のゾーニング(画像 公式HPより)


画像6 ドイツにおける公共交通事業者間の提携のあり方一覧

 その結果、都市の
主要幹線道路は麻痺状態まで陥った。特に狭隘な道路が多い旧市街地(旧来からの都心部)は、自動車で通りが溢れ返っていた。歩行の阻害要因にもなり、都市景観も損なわれ、排ガスなどで環境破壊も進んだ。魅力的な都心部空間が失われ、にぎわい性もなくなり、その求心力を大幅に低下させた。都心部に需要相当の駐車場整備をする都市空間などあろう筈もなく、郊外の自動車来店前提の大型商業施設に押され始めていた。危機感を抱いていた旧西ドイツの各都市は50年代より、都心部(旧市街地)のモー(歩行者専用道路)化を進めた。1960年には31都市、1969年には100都市を超えた。これは旧西ドイツ国内は元より欧州各国に伝播した。モールと並び、都心部の自動車利用の制限施策として交通セル方式』トラフィック・ゾーン・システム)が1960年ブレーメンで導入された。限られた都市空間内で、効率性に勝る公共交通の利便性を向上させるための再構築が模索された。そのソフト面の政策として運輸連合なるものがこの時に登場する。ドイツ人の賢いところは、現(モーターリゼーション)を追認・迎合して、都心部地区をどう改造するのかを考えたのではなく、一度立ち止まり行き詰まりを謙虚に反省し都市計画をモーターリゼーションに迎合したものではなく、公共交通指向型開発(TOM)に切り替えたことだ。話を戻すと65年、ハンブルグにおいて交通事業者間の協働組織としての運輸連合-HVV(公式HP)が結成された設立の目的は、自動車に奪われていた都市圏旅客輸送市場における公共交通機関のシェアの回復にあった。自動車交通との破滅的な競争から自己防衛 するための方策として、公共交通事業者の自由意志に基づいた結成された企業連合カルテルとして出発した。カルテルとして定義される理由は、公共交通機関間における競争を排除するという方針のもとでの運行計画の策定、自動車交通に対する競争力の確保を重視した低廉な共通運賃の運用、利用者の争奪競争を誘発しないような方法での加盟事業者への運賃収入の配分がその特色だった。『事業者ⅴs事業者』から『公共交通(都市交通事業者連合)ⅴs自動車』へシフトした。ハンブルグの成功は、70年代、旧西ドイツの5大都市圏-ハノーバー(GVH)、ミュンヘン(MVV)、フラ ンクフルト(RMV)、シュトゥットガルト(VVS)、ラインルール地域(VRR)-での運輸連合発足に発展した。80年代頃までは、中小都市など輸送密度が低く乗り換え頻度が低い地域での運輸連合など組織結成には懐疑的な見解が主流だった。部分的に提携(上記画像6参照)で十分事足りるとされていた。80年代も5つの運輸連合が誕生したが、殆どが旧西ドイツ定義の大都市圏中心で中、小都市圏の動きは鈍かった。この当時の動きは、全てそうだとは言えないが事業者中心の動きだったことが特筆される。


画像7 ドイツ全土における運輸連合設立状況

 こうした流れの一大転機となったきっかけは、90年の東西ドイツの統合、94年から始まる鉄道改革の議論があった。議論の末、地域公共交通全般に対する責務が各州に集約されたことが運輸連合の結成数の増加を促した。運輸連合結成、
各同盟や部分連携に留まっていた中小都市圏でも運輸連合が90年代後半以降に急増した。09年現在、国土面積の3分の2、総人口の85%、地域公共交通の輸送実績と運賃収入の90%をカバーするに至っている。ハンブルグの初結成以降、都市交通事業者が中心から、都市交通圏域の自治体が派遣した任務担当者中心に比重が移り、『任務担当者(自治体)主導型』『都市交通事業者+任務担当者(自治体)協調型』が多数を占めている。要は、行政の関与の度合いが増した事の証左となる。この日の記事の最後に全体補足をしたい。ドイツに限らず、欧米先進国では、都市交通事業は既に営利事業ではなくなり、公的資金(税金)投入大前提で建設、維持管理する利用者負担の行政サービスの一つになっていることは既に触れた。そこで必要となるのは、それを可能とする財源の担保だ。一般会計予算からの拠出だけでは心もとない。特定財源としては、フランスの都市交通税(交通負担金)、アメリカの売上税の増税分があるが、ドイツでは日本のガソリン税に相当する鉱油税の存在がある。日本のガソリン税同様に60年代半ばまで、道路整備のための特定財源扱いだったが、67年にこれを改め鉱油税収入の約40%を鉄・軌道系公共交通整備の原資とする租税改正法を施行した。その後も比率が引き上げられ、50%超(下記画像8参照)にまで達している。この特定財源があればこそ、鉄軌道系公共交通のインフラ部施設-鉄・軌道、駅・停留所-、インフラ外部施設-車庫、車両、パーク&ライド施設-、交通結節点改善などの整備に高い補助率(75%)が可能となっている。当然この中に、運輸連合の運営費等も含まれている(下記画像9参照)。日本のそれのガソリン税は道路整備の特定財源からは外されたが、社会保障費の高騰に伴い一般財源化されてしまい、その大枠の中で公共交通の整備に振り分けられるようになった。日本は世界に冠たる鉄道王国ではあるが、それは世界一の巨大都市圏の首都圏の公共交通輸送と、東西に細長い独特の地形による都市間輸送で支えられている側面が強い。地方都市の公共交通のみにカテゴリーを絞れば、ドイツに整備水準と利用率においては後塵を拝している。次回は日本との比較を通じて考えたい。

190417-3 (1)
画像8(左) 15年度の鉱油税使途内訳
画像9(左) 15年度の鉱油税の公共交通整備に振り分けた分の使途内訳

その2へ続く
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前回記事 ドイツの公共交通無償化 その1
カテゴリー記事 
広島の都市交通 海外都市先進事例

【考察その4】
ドイツでは、荒唐無稽な案ではない公共交通の無償化
論理的思考を好み、絶対正義に邁進するドイツ人気質


画像1 ドイツのブレーメンのトランジットモールの『オーバーン通りの様子』(画像 ユーチューブ画面撮影より)

 話が本筋から外れるが、ブログ主がドイツに少しだけだが過去に縁があった。それは、大学卒業後、10年間就労した金融機関の本店勤務時代、フランクフルトに海外出張する機会が数多くあった。仕事内容はまちまちでその中の一つに、うちがメインバンクを務める企業が国際見本市に大々的なブースを構えることになり、その応援があった。期間は2~3週間程度で、現地のドイツ人スタッフとも懇意となった。ある程度、人間関係が出来上がり人となりが分かってくる。会話は英語が通じるのでドイツ語は必要なかった。ドイツ人は日本人と相通じる点として、ユーモアが比較的苦手で職人気質と言うかストイック。全く異なる点としては、合理的と言うか論理的思考を好み、公の部分(この場合は仕事の意味)ではそれ中心。私の部分ープライベートではそれ+感情的思考を織り交ぜることが決定的に異なった。別に感情的思考を好む日本人を悪し様に言うつもりはないが相違点として、比喩した。安易な妥協を許さず、大義、社会的正義の前では現実論や妥協論などは、決して重きを置ない(ケースにもよる)ことが多い。ブログ主も他の日本人よりもその傾向が強かったので、本当に仕事がしやすかったことが記憶に鮮明に残っている。新たな発明や思想の潮流の発生、様々な行政制度などが欧米社会初のものが多い現実と照らし合わせても、人間的な優秀さよりもその思考方法によるところが大きいと言わざる負えない。時期的には90年代後半~00年前後だったが、日本ではようやく環境問題への啓発がスタートした頃だったが、ドイツでは一周期以上も前(80年代頃)から意識が高まっていた。


画像2 
世界初の『トラムトレイン』(ウィキペディア)が導入されたドイツの地方都市カールスルーエ。鉄道線と軌道線(トラム)の相互乗り入れは『カールスルーエモデル』とも言われる。人口31.8万人程度だが、DBのSバーン(都市近距離鉄道)との相互乗り入れ㌔数は、829㌔にも及ぶ。系統数と本数が増え過ぎて、軌道内渋滞が発生。路面区間に拡張の余地がないので、軌道を地下に増設する工事が始まっている(画像KVV公式HPより)

 97年12月、
気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書』(COP3 ウィキペディア)が採択された。90年対比で、温室効果ガス排出量を08~12年の間で-8%の義務を課されたドイツでは、何と07年に-22.4%削減という常識破れの数値を1年前倒して達成した。これには多少の背景があって、日本も同様に-6%の目標が課されていたが、他の先進国に先駆けて技術革新や排ガス規制で取り組んできた日本には『絞り切ったボロ雑巾をさらに絞る』という高いハードルとなっていた。一方のドイツは、旧東ドイツ地域を抱えそこそこの努力で達成可能な素地があった。ただそれは、-8%前提の話であり、さすがに-22.4%を1年前倒しで達成した日にはぐうの音も出ない。この事実にドイツ人気質が凝縮されている。環境問題-この大地に将来人が住めなくなるかも知れない-という危機に直面した場合、やれ景気がどうとか、財政上の問題がとか、産業に多大な影響があるとかなどは二の次として、絶対的な正義(環境問題)の前では語るに値しない本気で考える人たちである。この気質が間違った方向(ナチスとか)に邁進したらとんでもないことをしでかす恐れがあるが、正しい方向に発揮された場合、良き道標を示すことが多々ある。日本の環境問題の取り組みは自動車利用を減らすという観点が自動車産業の影響力を鑑み、見事に欠落しているがドイツのそれは企業への負担増加を強いることは言うに及ばず、公共交通利用率の大幅向上で問題を解決しようと本気で取り組んでいた。環境問題クリアのためには産業が衰退しても止む無しの固い決意がそこにあった。日本の自動車量の問題は、数を減らすのではなく、技術革新によりクリアする点に主眼が置かれていたが10年前後で、目を見張るような技術革新などあり得なかったが、日本も結果的には-8.4%でクリアした。恐ろしいほどのストイックさは東西ドイツ統合にもその気質が如実に現れており、感服する次第だ。


画像3 ドイツ第4の都市ミュンヘンのトランジットモール区間を走行するシュトラセバーン(トラム)の様子(画像 ミュンヘン公式HPより)

【考察その5】
動き始めた公共交通無料化への取り組み

  
動画1 
Straßenbahn Mannheim / Ludwigshafen - Der Typ RNV6-ER(ユーチューブ動画より) 
 
 先の考察の12年度以降の輩出削減目標
-『ポスト京都議定書』-の議論が続けられ、15年12月、第21回気候変動枠組条約締結国会議(COP21)『パリ協定』が採択された。ドイツを含むEU圏は90年対比では排出量-20%が課された。それとの関連で、EU圏では地球の温暖化に悪影響を与えている自動車の排ガス規制を課している。92年にユーロ1(規制名)から始まり、14年の『ユーロ6』にまで移行し、20~21年には『ユーロ7』が予定されている。この厳しい規制が、15年のディーゼル車をめぐる排ガス規制不正問題に発展した。ドイツでは、京都議定書での削減目標を大幅に上回ってクリアしてことで、EU圏内での環境問題のトップランナーの自負が生まれた。EU圏-20%削減の目標値に対し、ドイツはその2倍の-40%削減という途方もない設定とした。自動車利用の削減だけでなし得るものではなく、全産業挙げての取り組みは不可欠だが視覚の上での悪者にはしやすい。 ドイツ連邦環境庁の目算では、『都市交通における自動車利用の5%が公共交通機関の利用に切り替わり、走行距離5㌔未満の自動車利用の30%が自転車利用に切り替わった場合、CO2排出量は20年までに約300万トン減少する』などとしていた。ブログ主の推察の域になるが、今回のドイツの公共交通無料化は、環境問題のトップランナーとしての自尊心がその伏線になったのではなかろうか?。前回記事に転載した報道だと、これまでフランスのオーバーニュ、エストニアの首都タリン、ベルギーのハッセルトなどで、無料化の事例があるが国単位で検討していたのはドイツだけである。

 この報道が世界の驚きを以て報道されたのは、18年2月頃。その後、様々な紆余曲折を経て、ボン、エッセン、マンハイム、ヘレンベルク、ロイトリンゲンの5都市での無料化社会実験は、公共交通運賃の大幅値下げ施策を中心とした『模範都市における革新的な輸送プロジェクト』として19年度から実施されることになった。 ~
クリーンエアと近代的な公共輸送のためのもう1億3,000万ユーロ~ ~連邦政府は模範都市における革新的な輸送プロジェクトを促進する(エッセン公式HP)~ この5都市先行プロジェクトのコストは、166.8億円となっている。ブログ主の所感だと『本当にこれだけのコストで済むのか?』だ。運賃値下げによる差額損失分の事業者個々への補填額も馬鹿にならない。新たな自動車利用からの転換策を打ち出すとしてもそれ相応のコストがかかる筈だ。まあ、ドイツの場合都市交通事業者の62%が公営で、18%が第3セクターで民間は20%に過ぎないので、同組織内での調整になるのだろうが・・・。先行5都市のボン、エッセン、マンハイムの主な取り組みは以下の通りとなる。

ボン
 ①公共交通の運賃値下げ施策
  1 日 1 ユーロの年間定期券(365ユーロ定期券)の導入(新規利用者のみ対象)  通勤定
  期に関する企業との提携の拡大(企業が公共交通機関から定期券を購入し、従業員に割引価格
  または無料で提供) 1 日券の 5 人グループ同価格での利用
 
 ②公共交通の利便性向上
  週末の主な路線における路面電車やバスの本数の増加  郊外へのバスの接続の改善、連結バス
  の使用  乗り換えを避けるための新しいバス路線の設立
エッセン
 
①公共交通の運賃値下げ施策
  24か月定期券の購入時におけるカークラブ(会員制のレンタカーシステム)への無料加入権
  付与  
  イベントの鑑賞券・入場券の公共交通機関の切符としての使用許可 ・週末の公共交通
利用のた
  めのバウチャー導入
 ②公共交通の利便性向上
  路面電車とバスの主な路線における本数の増加
 ➂その他
  複数の自転車専用道路の建設
マンハイム
 ①公共交通の運賃値下げ施策
  ネット販売の魅力を高めるため、通常券の基本料金を値下げ  
  その他のネット販売のためのインセンティブ ・マンハイム・ルートヴィヒスハーフェン広域の
  通常切符基本料金の値下げ  
  通勤定期のための雇用者当たりの基本料金を企業に対して免除(新規契約企業)  
  定期券の基本料金の値下げ
 ②公共交通の利便性向上
  市中心地以外の乗り換えを改善するため、外回りの重要路線の本数を増加
  市内新開発地区の公共交通連絡の改善(路面電車線の建設終了までは、バスによる接続)
  市内交通の排気ガス削減のため、ハイブリッドバスを購
 ➂その他
  トラックの市中心部への進入をなくすため、個人宅への小包の配達の際に、最終部分を電動バ
  イクで配達するためのマイクロ・ハブを設置

画像5 エッセンのシュタットバーン(地下式LRT)の様子。複々(4)線構造で、中央の2線が低床(床面高さ30㌢台)路線専用、外2線が高床(床面高さ100㌢程度)路線用となっている。(画像ユーチューブ画面撮影より)

 ドイツの各都市は日本とは異なり、前回記事で指摘したように公共交通が階層化され整備されている。移動手段のモビリティ選択で公共交通分担率が地方の中小都市でも高い。日本の地方都市が、自動車なくして生活が成り立たないのとは対照的だ。運輸連合に代表される安価で使いやすいシステムの構築といったソフト政策と運営コストに公的資金導入が前提であることを背景とした公共交通整備のハードルの低さもあり、そうなっている。先行5都市のプロジェクト内容を見ると、政策は自治体の個々の判断を委ねているようだ。ボンの1日1ユーロ(年間365ユーロ定期券)などは効果がありそうだ。これなど、日本円に換算して約4.7万円で住む都市交通圏域の公共交通が乗り放題など、日本では間違っても実現しない施策だろう。月額だと3,864円である。『確かにそうだけど、日々使うのは結局自宅から会社までだから言われるほどのメリットはない』との反論が出そうだが、自動車保有コスト(ガソリン代、ローン、各種加入保険)の月額換算よりも安価であるのは言うまでもない。ただ、自動車の快適性と利便性に慣れ親しんだ利用者が果たして手放すのか、と考えると特にそう思う。高い自動車所有率を鑑みて、これ以上の公共交通への誘導が果たして可能なのかの疑問がある。公共交通利用のインセンティブを与える強力な誘導施策も確かに効果的だと思うが、自動車利用の一定の規制でも課さない限り少し厳しいのではないだろうか?先進国であればどの国でも憲法で保障している移動の自由に抵触する可能性が高いが、効果はそちらの方が高いのは明らかだ。公共交通への誘導施策はそれはそれとして、オランダのABCポリシーのような事業所立地地区ごとの駐車数規制や、一部にとどまるアウトバーンの私的交通(環境基準に適した物流車両は無料維持)への全面課金なども検討すれば、より効果が高まるだろう。ただ、この取り組みは日本では絶対に無理なのは確かのようだ。同様の取り組みは、フランスの首都パリでも検討されている。ドイツの偉大な取り組みは緒に就いたばかりだが、今後どのように発展するのか注視したい。

終わり
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カテゴリー記事 広島の都市交通 海外都市先進事例

日の話題 サイエンスニュース(18年2月)から引用

ドイツ、EU規制対応に向け公共交通機関の無料化検討



画像1 世界的メッセ都市であるハノーバー(人口53.2万人)のシュタットバーン(地下式LRT)の様子。1975年開業で、1日平均21.9万人を運ぶ。高床式(床面高さ100㌢前後)規格で統一されている(画像 ユーチューブ画面撮影より)相生上夫かきくけこ

【記事詳細】

 ドイツは公共交通機関を無料にすることで、国内を走る乗用車を減らし、二酸化窒素などの排出
 を減らそうとしているようだ。無料化に関わる資金の一部は、ドイツの自動車企業が負担すると
 している。これは、ドイツ環境相バルバラ・ヘンドリクスらがEU環境長官カルメヌ・ヴェッラ
 に宛てた手紙に記されていた提案に記されていたとして、AEPが2月13日に報じたもの。

 EUは『命に係わる』汚染がヨーロッパの130以上の都市に影響し、年間40万人以上の死
 と、200億ユーロの医療費負担となっているとして排気規制に積極的だ。しかし、二酸化窒
 素や、PM2.5などで知られる微細粒子排出量のEU規制に、ドイツは今のところ適合できて
 いない。当初この排出量規制の締め切りは1月30日だったのだが、実はドイツのみならず、ス
 ペイン、フランス、イタリアなど8か国が締め切りに間に合うことができていない状況となって
 いる。環境長官ヴェッラはこの締め切りを延長するとしたが、最終的に排出量基準を超過したま
 まだと、法的措置がとられることとなり、違反国には罰金が課せられる。これを回避したいドイ
 ツ
は、公共交通機関を無料化することで、乗用車を使う人を減らし、排気を削減、規制に適合し
 たいとい
うわけだ。とはいえ突然全国の公共交通機関を無料化するのも大変なことだ。無料化に
 かかる費用は10億ユーロ、約1,331億円掛かるとされるが、これに関してドイツは自国の
『罪深い』自動車会社に一部負担させる。

 罪深い自動車会社とは、フォルクスワーゲン、BMW、ダイムラーなど、15年にディーゼル車
 をめぐる排出ガス規制不正問題に関与していたドイツの会社たちだ。排気ガス試験の時には規制
 に適合する排出をすが、通常走行時には規制を上回る排気となる不正ソフトウェアによって、全
 世界で1,100万台以上に影響がでたとされる事件を起こした。報道によれば、これは各社が意
 図的に合同で行っていたもののようだ。提案では、政府がそんな自国の自動車会社に『この緊急
 対策を確実に融資させるべきである』とされ、フォルクスワーゲン、BMW、ダイムラーなどの
 自動車企業が2億5,000万ユーロ、約333億円を公共交通機関無料化に提供することに合意
 しているとされる。この提案では、ボンやエッセンなど、ドイツ西部の5都市で遅くとも年末ま
 でにこれを試験的に実施するとのことだ。 

 EU国内には一部の都市に限って公共交通機関の無料化を行っているところは他にもあり、例え
 ばフランスのオーバーニュでは09年から地域市民とそこで働く労働者が、エストニアの首都タ
 リンでは13年から市民に限り、公共交通機関が無料で使えるようになっている。タリンの例で
 は、無料化により年間2,000万ユーロの利益が出ているとされるが、他方97年から公共交通
 機関の無料化を行っていたベルギーの都市ハッセルトは、コストが増えたことなどもあり14年
 に有料化している。人口7万人の年ハッセルトと、人口42万の一国の首都タリンを単純に比較
 することはできないが、両都市が無料化に関して金銭コストが真っ先に論じられていることはど
 ちらの例も同じだ。しかし公共交通機関無料化に関わる表面的な金銭コストの先にあるのは、人
 の健康や地球環境という表面的に数値で表しにくいコストである。今後のドイツの試みではその
 部分もより明確になれば、EU圏外の公共交通機関の役割にも貢献することが期待できるだろう。

【考察その1】
自動車大国でありながら、公共交通大国でもあるドイツ その1
日本とドイツ、鉄・軌道公共交通網整備水準の比較


画像2 各トラムラインの軌道が、東西南北に縦横に交差するドレスデン市内大通りの様子(DVB公式HPより)

 先ずはうんちくを色々と語る前に以下のデータをご覧頂きたい。JRや大手民鉄線のような都市近距離鉄道を除いた日本とドイツの鉄・軌道系公共交通の整備の比較だ。

 1) ドイツの鉄・軌道系公共交通(JR、民鉄線除く)
 出展-
世界の地下鉄一覧より(日本地下鉄協会HP)
 Uバーン(フル規格地下鉄)-5都市
  ベルリン ハンブルグ ミュウヘン フランクフルト(アム・マイン) ニュルンベルク
 シュタットバーン(地下式LRT)-13都市
  ケルン シュトゥットガルト ボン ボッフム ハノーバーなど
 シュトラセバーン(路面式LRT)-44都市(シュタットバーン13都市除く)
  ベルリン ドレスデン ミュウヘン ライプツィヒ ブレーメン カールスルーエなど
 2) 日本の鉄・軌道系公共交通(JR、民鉄線除く)
 地下鉄(リニア式ミニ地下鉄含む)-9都市 

  東京 大阪 名古屋 横浜 札幌 神戸 京都 福岡 仙台
 モノレール・AGT-11都市 路線㌔数-計97.5㌔
  東京 多摩地域 西武山口線 山万線 横浜 千葉 大阪 千里地域 広島 神戸 北九州
 路面電車ー20都市 
  札幌 函館 東京 京都 大津 堺 広島 松山 熊本など
 3) 日本とドイツの鉄・軌道整備㌔数比較
 中~大量輸送機関
  日本(地下鉄、AGT、モノレール)-路線㌔数892.1㌔
  ドイツ(地下鉄、シュタットバーン)ー路線㌔数1351.1㌔(日本の1.51倍)
 小~中量輸送機関(一部鉄道線区間含む)
  日本(路面電車)-路線㌔数254.3㌔

  ドイツ(シュトラセバーン)-路線㌔数1,400~1,500㌔(?) 日本の5.5倍以上
  ※正確には不明。ベルリン ブレーメン ドレスデン ライプツィヒ ミュウヘンの5市
   だけでも路線㌔数が650㌔を超える。残りの39市が、1市平均20㌔と仮定しても
   20㌔×39市=780㌔なので、この数字と予測。
  

 合計数
  日本-1164.4㌔ ドイツ-2751.1~2851.4㌔(日本の2.4倍程度の水準)

 日本とドイツ、明らかに整備水準が別次元だ。では、ドイツのほうが人口や大都市が多く日本のほうが少なく、鉄軌道系公共交通網整備の導入ハードルが低いのか?と問われるとそうでもない。
100万人以上の都市はベルリン(352万人)、ハンブルグ(174万人)、ミュンヘン(146万人)、ケルン(106.0万人)の4都市。人口50~100万人の都市は、11都市。日本基準だと中都市以上、大都市未満の規模の都市が多い。日本は人口100万人の都市は、11都市、人口50~100万人都市は17都市となり、むしろ日本が有利だ。なぜ、ドイツのほうが比較にならないほど公共交通網が整備されているのか?考察その2以降で明かしたい。

【考察その2】
自動車大国でありながら、公共交通大国でもあるドイツ その2
日本とドイツ、鉄・軌道系公共交通網の整備制度の比較


画像3 
ラインルール都市圏最大、ドイツ第4の都市ケルンのシュタットバーン(地下式LRT)。路線㌔数194.4㌔ 216停留所 11系統を誇る。1日平均利用者数は約57.0万人。都心部は地下区間が大半で、その他区間は路面や新設軌道などの地上区間を走行する。低床(床面高さ30㌢台)と高床(床面高さ100㌢前後)の路線を分割し運用している。同都市圏の主要都市間を結ぶ都市間交通の役割も併せ持つ(画像 ユーチューブ画面撮影より)

 1)日本とドイツの鉄軌道系整備制度の比較 
 日本 
  大量輸送機関その1
  対象選定機種-
地下都市高速鉄道(地下鉄)
  対象事業者-公営事業者、準公営事業者、東京メトロ
  補助率-補助対象建設費の35%+導入自治体の建設費(65%)の35%補助=計57.7
      
%程度
  導入可能都市-人口100万人以上の政令指定都市
  運営について-運賃収入などによる100%に近いカバーが必須。行政による補助なし(独立採
         算性が大前提) 独立採算制で単年度黒字化が必

  大量輸送機関その2
  対象選定機種-空港アクセス鉄道、ニュータウン鉄道
  
対象事業者-公営事業者、準公営事業者
  補助率-補助対象建設費の空港アクセス鉄道-18%、ニュータウン鉄道-15% 但し大臣
      の定める場合は33%
  運営について-運賃収入などによる100%に近いカバーが必須。行政による補助なし(独立採
         算性が大前提) 独立採算制で単年度黒字化が必

  中量輸送機関
  対象選定機種-LRT、BRT、AGT、モノレール、ガイドウェイバスなど
  補助率-インフラ部(対象選定機種のの走行空間(走行路面、停留所、シェルター等)、 車両
      基地等の整備、ICカードの導入など) 55%
     -インフラ外部(システムの構築に不可欠な施設(連節車両、 停留所施設、PTPSの
      導入等)の整備、ロケーションシステム、ICカードシステムの導入等)33%

  財源-一般財源と一部道路特定財源(専用財源無し)
  導入可能都市-LRT 政令指定都市以上(人口70万人以上)、それに準ずる都市 
        -BRT 県庁所在地、中核都市やそれに準ずる都市
  運営について-運賃収入などによる100%に近いカバーが必須。行政による補助なし(独立採
         算性が大前提) 独立採算制で単年度黒字化が必須

 
 ドイツ
  中~大量輸送機関
   対象選定機種-フル規格地下鉄、都市近距離鉄道、LRT、BRTなど
   補助率-自治体交通助成法に基づく助成(インフラ、結節施設、P& R施設、整備場、車
       庫、優先信号、高速化設備、車両)75% 大規模事業で連邦プログラムの場合
       は60%。
インフラ部とインフラ外部の区別なし
   財源-GVFG、エネルギー税(旧鉱油税) GRegR(エネルギー税がほぼ専用財源化)
   導入可能都市-Sバーン 人口20~30万人以上の都市 
         -フル規格地下鉄 人口50万~100万人以上で財政に余裕がある都市
         -シュタットバーン(地下式LRT) 人口30~100万未満の都市
         -シュトラセバーン(路面式LRT) 人口10万人以上の都市
         -BRT 人口数万人規模以上の都市
         ※上記はあくまでも目安。都市圏内に中心的な大都市がある場合、ネットワー
          クに組み込まれる場合がある
   運営について-運賃収入による運賃カバー率は平均71%程度。実際には50~60%台が多
          い。差額補填は、連邦・州政府や自治体の助成


利用者が多い市場を抱えている点だけでは、日本のほうが有利なのだがただそれだけだ(笑)。国庫補助制度の手厚さの相違、運営ではほぼ100%の運賃カバー率が求められる独立採算性が大前提の日本に対して、40~50%で事業化検討の目安となり、差額不足分は連邦(国)、
州政府や自治体の助成で賄えるドイツとでは、こうも大きな違いとなる。鉄・軌道系公共交通整備のハードルが日本の半分以下だ。ドイツも冠たる世界的自動車メーカーのフォルクスワーゲン、BMW、ダイムラーがあり、高速道路のアウトバーンがヒトラーの時代から国策で整備され、人口千人当たりの全四輪車保有台数は、日本-594台/千人 ドイツ-604台/千人(共に06年)と高い。なのに、欧州有数の建設に際しての各補助制度が整っている。運営に関しても、日本のように『税の無駄遣い』『民間企業に税金の導入など絶対にあり得ない』などの批判はほぼ皆無だ。なぜこのような日本とは真逆な世論が醸成されるのかを、次の考察で考える。

【考察その3】
自動車大国でありながら、公共交通大国でもあるドイツ その3

公共交通に対しての欧米諸国の考え方

 

画像4 13年制定の日本の『交通施策基本法』の概要(画像 国土交通省HPより)

 それは都市交通事業を営利事業として捉えるのか?はたまた非営利事業として捉えるのか?の違い非常に大きい。日本では都市交通事業は営利目的で、独立採算制で執り行うことが信じて疑われていないが、欧米先進国においては営利事業としての都市交通事業は40年以上前の70年代に終焉を迎えている。イギリスだけが、かっての英国病(イギリス式社会主義)の反動から、営利色を前面にうちだしてくらいだ。ドイツでは、
65年、ハンブルグにおいて交通事業者間の協働組織としての運輸連合(HVV)が結成された運輸連合とは、都市交通圏域内の都市交通事業者を一つの器の元に集め、あたかも単一事業者が運営しているかの形態を指す。公共交通を一元的に管理・運営する組織である。その後、旧西ドイツの5大都市圏に70年代新たな運輸連合誕生につながり、現在では運輸連合とそれに準ずる組織は60あまり存在するまでに発展した。国土面積の3分の2、総人口の85%、地域公共交通の輸送実績と運賃収入の90%をカバーしている。フランスも似たような経緯を辿り、一部の例外を除き都市交通圏域の公共交通を一元管理・運営するのが常態化している。要は、自動車に対しての競争力の強化だ。市場原理主のイメージが強いアメリカでも60~70年代にかけて絶滅しかけていた民間都市交通事業者の手を離れ、公営事業に集約化された。欧米でのこの流れの背景には、モーターリゼーションの進行で、従来の事業者間の公共交通機関同士の競争から『自動車vs公共交通』に変化し、利便性が大いに優る自動車の一方的な勝利が濃厚な中で、モーターリゼーションに迎合した都市計画の行き詰まりがある。『都心部地区の求心力低下』『慢性的な交通渋滞がもたらす経済損失』『環境問題』『インナーシティ問題』『都市のスプロール』などがそうである。新たな道路建設は、潜在需要の掘り起こしとなりいたちごっこの様相を呈していた。その過程で、公共交通は、受益者負担の行政サービスの一環との考えが浸透し始める。都心部地区の再生、公共交通指向型開発(TOD)、都市のスプロール化抑制が都市計画の潮流となり、様々な要素が時代のニーズとして加わり、現在のコンパクトシティに連なる形で昇華している。

 話が前後するが、受益者負担の行政サービスの一環だと言った。行政サービスの一環である以上、先の考察で触れたように国、州、都市交通圏域の自治体による手厚い建設制度の整備や運営などに係るコストの一定負担や税での支援をする大義名分と言うか、法的根拠が必要となる。以下はドイツとフランスの公共交通の理念・考え方とそれを正当化する根拠法令だ。

ドイツ
 理念-都市内公共交通サービスを提供することは、生存配慮(行政サービス)の一環
 根拠法令-連邦地域化法第1条
フランス

 理念-基本的人権として交通権を定義し、公共交通整備により斬新的に実現する
 根拠法令-交通法典第 1部(共通事項 )Ⅰ

色々とうんちくを語ったが、平たく言うと欧米国では公共交通サービスは、上下水道利用や公的大病院受診と同列のサービ
スと言うことになる
。欧米人特有の先進的な意識の高さと言えなくもないが、先に理念が
あり実現したものではなく、モーターリゼーションに迎合した都市計画の行き詰まりを感じその弊害が社会問題化して、政策転換したところに意義がある。ドイツのそれは既存の法律での対応だがフランスのそれは、交通権というこれまでなかった概念を創造し、それを82年12月に制定された『国内交通基本法』(LOTI)の中に盛り込んだ。理念を具現化するには、それ相応の財源確保が最大の課題となる。フランスでは、
交通税=交通負担金(VT)が71年、首都のパリに導入され、地方都市は73年より導入が始まった。官民関係なく、9名以上の従業員を抱える事業者に給与総額にの外形標準に対して低率(0.55~2.60%)課税し、その収入を全額都市圏内の交通政策のみに用いるという枠組みをつくり、道路建設優先の交通施策から公共交通整備の方針に大転換した。ドイツでは、旧鉱油税(現エネルギー税)-日本のガソリン税、自動車燃料税に相当-が恒久財源化された。第二次大戦前から課税された税だが、60年代半ばまで、日本同様に道路整備の特定財源扱いだった。67年より、鉱油税増税分の60%は道路整備に残りの40%は公共交通整備に充て、個別事業の建設コストの50%は賄うとした。この方針は4年後の71年、『市町村交通資金調達法(GVFG)』として法制化された。鉱油税廃止の1年前(05年)では、約4.6兆円の徴収額だった。アメリカでは、売上税(日本の消費税に該当)の増税分が専用財源として、公共交通整備と維持・管理の原資に充てられている。日本では長らく専用財源となるものはなく、09年道路特定財源(ガソリン税)が国の財政難理由から一般財源化されたが、公共交通整備専用ではなくそれも含めた一般財源で専用財源ではない。日本でも『交通施策基本法』(国土交通省HP)が13年にフランスの32年遅れで制定された。日本の公共交通に関する理念・考えはこの法律で明確化されたが、実現を裏付ける財源はなきに等しい。今日の各考察を踏まえ、本題のドイツの公共交通無料化について論じたい。

その2へ続く
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