「どうしようか…」と思案に暮れていると、やはり神様はお見捨てにならないのですね。丁度タイミング良く、リョウがいつも通っているホームから

   一つ部屋が空いたので、こちらに移れますョ。どうしますか?

と連絡が入ったのです。当初は和やかなお婆さんが沢山いる事だし、この際ここでガールフレンドでも作ればと思っていたのですが、リョウが口をポカンと開けて天井を見上げる姿を見るに及んで、こりゃダメだと思いました。渡りに船で、速攻で「移ります」と返事をしたのは言うまでもありません。それをリョウに言いますと、小躍りこそしませんでしたが大喜びです。

 その日からリョウは指折り数えて退所の日を待ったのであります。それまで毎晩ヨネの元に電話を入れて、ヨネから嫌われても「電話でもしないと気が狂いそうだ…」と言っていたリョウは、それ以後は「あと4日で出られるんだよ」、「あと3日で…」、「あと2日で…」と電話口で唱えるようになりました。

 いよいよ当日の朝ホームに迎えに行くと、リョウは荷物をまとめ服も着て、いつでも退所スタンバイの状態で待っていました。リョウの護送はレンタカーを借りて、一旦家に寄って時間調整してから、次のステイ先に向かいます。「リョウさん、もういいですよ」と職員が言いに来ると、リョウは部屋を出ていつものたまり場で、一人一人に出所の挨拶をしています。「オレ、帰るからさ」、「頑張ってね」、「元気でね」とまるでお釈迦様が慰めるような慈愛に満ちた顔をしております。玄関を出て車を出すと、リョウは建物を見ながらこの一週間は長かった…と言いました。

 20分程で我が家に到着。リョウにしてみれば骨折の入院から今日まで、90才の老人にとっては目まぐるしい地獄の日々だったのであります。車から出て我が家を見上げると感極まったようで、塀に両手をついて

    ううっ、やっと家に戻れた…あぁん

と男泣きしたのでありました。

男泣き





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