
3/8日、前日の三瓶山に続く山陰3days2日目ということで、鳥取県の大山を歩いてきた。オオヤマではなくダイセンと読む。オオヤマは神奈川、ダイセンは鳥取。
ダイセンは日本百名山の一画にして中国地方最高峰(1729m)、言わずと知れた名峰中の名峰であるが、自分の地元の神奈川での知名度はオオヤマのほうが圧倒的に高かったりする(職場の人がダイセンを全然知らないことに驚いたり、、)。ので混同を避けるという意味でも、伯耆大山と呼ぶことにしたい。
まあそういうのは良いとして、今回の山陰3daysのコンセプトは【伯耆大山で完璧なバースデー雪山登山をキメる】です(個人的には、もう1人のほうは知らない)。んで2015/3/8は自分の31歳の誕生日にあたりまして、この日に晴天になってくれれば、、、と祈りつつ旅の準備を整えていた。ただ冬の日本海側の晴天率の低さを鑑み、【3/7-9のどれか1日でも晴れてくれればいい】覚悟で山陰に至り、結果的に初日は完全な曇天。2日目のこの日の晴天を祈るような気持ちでわけだが、、、、、、、、
結果としては登山体験で得られる多幸感というものはここまで凄まじいものなのか、、、という強烈な、一生モノの記憶が残った至高の1日について、以下記録します。
↓flickrアルバム↓
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前日7日の三瓶山登山が終わったあと、三瓶山は島根県中西部とだいぶ西のほうなので、鳥取県西部の大山登山に備えて国道9号を東にノロノロ移動。7日の夜は米子市の手前の手前の道の駅・あらエッサにて30男2人で車中泊することになった。
・・・たまに誤解されることがあるので書いておくと、車中泊が好きだから車中泊してるわけじゃないんです。朝一からの登山に便利だから、フットワークが軽く動けるから車中泊という選択が合理的なだけで、、決して宿代の工面が困難なわけではない(棒)
さておき、道の駅からスタートした2日目はいきなり大山へとは向かわず、中海の北側に位置する枕木山に立ち寄った。中海越しに大山方面から上がるご来光を見たかったのと、この日は9時台前まで曇りという予報だったのでその時間調整に。だがしかし、大山方面は深い雲の中。やや不安がよぎる展開となる。ちなみに枕木山はクルマで眺望ポイントまで上がれて時期によってはダイアモンド大山とかも観れるらしいんで、狙いとしては悪くなかったかと、、、

枕木山ご来光不発後に大山へ向かう、この旅何度目かの江島大橋(境港⇔大根島をつなぐ「(アクセル)べた踏み坂」を経由して。途中の朝食で立ち寄ったjoyfulは、個人的には「西日本を旅しているなー」という関東民的な情緒を高めてくれるファミレスチェーンである。
このあたりまで来ると青空が安心できるレベルに増えてくるので、これから始まる最高の1日への期待感が高まってきたというもの。

結局9時前に大山の麓に到着、駐車場はどこも満杯で有料駐車場に停めた。スキー客・スノボ客が大半で、登山客は相対的に少数派に見えた。後で聞いたところだと、西日本は比較的スキー場が少なめらしいので、大山あたりに結構人が集中するとか。兵庫ナンバー~山口ナンバーあたりが多く見受けられた。関東からの客は流石に少ない。
麓の大山情報館で準備を整え、いざこの旅の大一番・伯耆大山雪山登山へと繰り出すことになる。

はじめは大山寺麓の門前町を、登山口へと歩くことになる。ここで割とあっさり道迷いになったのは、この輝かしい1日の記憶からすると枝葉な出来事である。

登山口の手前にはモンベル大山店がある。やはり中国地方の登山のメッカなんだろう、この山は。銀嶺をバックになかなかのロケーションである。

そういうわけで9:15、大山夏山登山口に到着。この道路をもう少し進むと、たぶん正式っぽい登山口があります。写真手前の階段をちょっと登って、即12本爪アイゼンを装着。

登山口から大山山頂までは3km、夏山コースタイムは3時間。3kmで3時間というのは大目に見てるとしても結構時間がかかっているほうかという気がする。高低差1000m弱あるんで、結構な傾斜ということ。

んで、序盤は樹林帯の登り坂。大山の登りは登山者を休ませない、ずっと登り続ける感じです。大山を楽しみにしてきた割には大山のことを何も知らないで登っているので、想定外の坂に若干驚き(何の根拠もなく楽勝だと思い込んでいた)。そして霧氷も全くない。これは朝一から登るのが正解だったか、、

そしたら、、、ん、、??

霧氷だ!

あおいそら、しろいむひょう、これだよ、こういうの求めてたんだよ、という。

伯耆大山登山とかいう自分の人生において決して色褪せることはないであろう1日のファーストインパクトは、この霧氷の世界だった。相変わらずの急登を、美しい霧氷の世界に囲まれて登っていく。

今日という1日を生きているこの瞬間の喜びを、全身で表現する人。

霧氷ゾーンの途中で、いよいよ伯耆大山がその姿を現す。これは5合目あたり。

霧氷の世界はただただ美しいが、、、

氷が頭に当たって痛い。時間は10時半すぎ、気温が上がりとけた氷塊が頭上から次々と降り注ぐ。我々の泥臭い旅にメルヘンは許されない、生きることとは常に現実との格闘なのです(ドヤァ)な感じです。そんな台詞を吐きたいと思うくらい、この登山の高揚感は異常だった。

霧氷ゾーンを越えると=森林限界を越えると、青空を遮るものが何もない、しかし相変わらずの急登へ。

来た道を振り返る。

凄い傾斜。奥に見える弓なりの浜は弓ヶ浜、弓ヶ浜にへばりついている街が米子~境港界隈か。右手のモリっと突き出てる山は、地図を見るかぎり孝霊山かな?
何かこの景色、2014年5月の富士山残雪登山を思い出す。弓ヶ浜は由比~富士~沼津の駿河湾の湾曲に、米子~境港の街は富士の街に、孝霊山は愛鷹連峰に、そして大山のえげつない傾斜は富士山のそれに完全に比定される。そういえばあの富士山登山は間違いなく人生のピークだった、この2015年3月8日とか言う最高の俺バースデイもまた人生のピークと言わざるを得ない。

続々と後続の登山者が登ってきます。伯耆大山は雪山としてもかなり人気らしい、そりゃそうだ。この超絶大絶景が12本爪アイゼン1つあれば簡単に味わえるんだから。

既に視界を遮るものがなくなっているので、伯耆大山の巨大な雪の壁が眼前に。取り急ぎの山頂である弥山も見えてます。

雪の壁も凄いけど、真ん中の男性2人組が呆然と見上げているのは、、、


雪の壁をよじ登るバックカントリーな人達。どんだけ勇敢なんだよ、、、所詮は観光登山の範疇を出ない自分には一生真似することはないだろう。

さておき、とにかく登ります。
ちなみにこの日、自分はあまりの大絶景にサングラスを付けるのが忍びない(このあまりに美しい青と白の世界の視野を損ねるのが嫌だった)という理由で裸眼で登山してしまったので、あとで目が真っ赤になって大変だった。

急登に疲れたので水分補給。関東民にとっての「南アルプスの天然水」は、西日本に来ると「奥大山の天然水」に化けるらしい。伯耆大山で奥大山の天然水と、神奈川県海老名市からやってきたえび~にゃとの不思議なコラボは見物である。
この写真撮ってたら「なんでこんなところにえび~にゃが」という声がした、えび~にゃの知名度は山陰の大地にも知れ渡っていたらしい(流石全国ゆるキャラグランプリ16位だけある)。

標高1600mゾーンを越えると山頂まで間もなく。山頂エリアはとてつもなくデカい雪原になっている。バックカントリーな人達が最高に気持ちよさそうに滑っていて、羨ましい。

ここまで来れば暫定山頂の弥山はすぐ。山小屋はあったけど、標識は雪の奥深くに埋もれていたので分からなかった。

さてここからです。この人達のような無謀なチャレンジはパンピーの我々には致しかねるが、、、

基本的に冬期しか登頂が不可能(あとで聞いたら、冬期でも登頂禁止らしい)な剣ヶ峰という峰が、弥山の先にある。「行けたら行こうぜ」という話をしていたので、弥山山頂はすぐ後にして剣ヶ峰方面へ進んでみることにする。

我々の前に敢然と立ちはだかるのが剣ヶ峰です。うーむ。

何か異様に長い生存ロープ的なモノを結んで歩いている人もいるし、、、特段の装備も持たない我々に行けるんかいな。。悩みます。

悩んだらとりあえず弾ければいんです、儀式ですから。
この伯耆大山社畜Tジャンプは、残雪富士山社畜Tジャンプに続き私の遺影で使って欲しいです(棒)

いつまでもおちゃらけているわけにもいかないので、「危険を少しでも感じたら即撤退」を肝に銘じていざ、剣ヶ峰へと進みます。
それにしても大山は本当に真っ白だったので、カメラの明るさを上手に調整できないと写真が暗くなってしまう(加工して直すほどの情熱はない)。

Road弥山to剣ヶ峰、はじめのうちは足場もしっかりしていて余裕ですが、、、

途中から道が細くなってきて正直怖い。

冒頭の写真の私ですが、明確に怖い。一歩踏み外したら滑落、軽い怪我では済みそうにない。超へっぴり腰でビビってます。

そしてこのピークを何とか超えて、、、

この写真中央の細い回廊の手前で、私は滑落の恐怖で正式にリタイア。
何故かちょうどこのタイミングで動画を取っていて、その動画で私は「俺?俺もうこっから無理。怖い、怖い怖い怖い」と極めて率直な印象を述べております。


私のヘタレっぷりに若干困惑した様子のveryblue氏だったが、しばし迷った後に単身剣ヶ峰へ歩みを始めた。無茶しやがって。。。

ここからはもう完全にveryblue劇場です、私は一個の観客に過ぎない。彼が難所を越えたときは「あいつ遂にやっちまったか、、、」と何とも言えない気分。

待っている間、呑気に、この伯耆大山にこの日に登った人間しか目にすることが許されない大絶景を堪能する。日本海側。

中国山地側。奥大山とかジャージー牛乳の蒜山とかも近いらしい。海側も山側も、ちょっと先に行けばガスってるのに伯耆大山界隈だけは大山バリアで見事に晴れている。

弥山方面を振り返る。とてつもない絶景だけど、あそこに戻るまでの足場がちょっと不安である。

着々と剣ヶ峰へと歩みを進めるveryblue氏。


私の脳内では勿論レッド・ツェッペリンのStairway to Heavenが無限リフレインされてました。歩いている当人も脳内麻薬でまくりだったんじゃないだろうか。

そして遂にveryblue氏、中国地方最高峰・伯耆大山剣ヶ峰1729mに踏破の図。あいつやっちまいよってからに。。。世界ランキング完全に一歩先を行かれた感があります。
でもまあ私は本当に怖かったので、あそこで止まることができてむしろ自分の進化を感じたりもします。この伯耆大山で31歳を迎えたのです、もう年齢的に無理無茶無謀はできません。むしろ年齢相応の判断力が備わってきたとさえ言える、、、勘違いしないでよ、俺も登りたかったなんて全然思っていないんだからね(棒)

veryblue氏の帰還を待つ間も、色んな人が剣ヶ峰へと向かっていきます。中にはスノボを担いでる人も、、、何が哀しくて大山剣ヶ峰から滑りたいのか、オイオイ死んでまうで、、

veryblue氏が戻ってきました。流石に神経を張りつめていたようで、「何か疲れた感のあるポーズを取ってくれ」とリクエストしたら快く応じてくれた(疲れてないのでは)。

オーディエンスの自分も長い待ち時間に疲れたので、氏の生還にはやや解放された感があった。もう無茶は止めましょう。

剣ヶ峰を振り返ると、先ほどのスノボの人が滑っていた、そして途中で恐怖を感じたのか止まっていた。あの人無事だったんだろうか。


この迫真のエンタテイメント空間を提供してくれた剣ヶ峰を名残惜しく去り、弥山へと戻ります。リタイア判断に至らしめた、中継ポイントから一番最初の超細い尾根、やっぱ怖かった。

ということで伯耆大山剣ヶ峰に別れを告げる。歩いた人、観ていた人、それぞれ強烈な記憶が残ったのは間違いない。2015年3月8日は凄い体験をした、一生忘れないだろう(なお知らなかったとはいえ剣ヶ峰方面へと歩いちゃってごめんちゃい、でもある)。

弥山に戻り、ささやかながら私の31歳バースデイを祝っていただく。ケーキは立ち寄った温泉で買った巨大ロールケーキと雑なもんだが、まあ嬉しいもんです。

この最高の1日全てをやりきった絶対的高揚感とともに、下山を開始します。時は14時。ちなみにここまでのゲーム展開は、9時登山開始⇒12時弥山到達⇒12時40分剣ヶ峰前で私リタイア⇒12時50分veryblue氏剣ヶ峰到達⇒13時30分弥山へ戻ってきた、みたいな感じです。

この大絶景を下ってしまうのはあまりに惜しい、しかし我々には次なるミッションがあるので名残惜しくもマッハで下山開始します。

下山は超スピードで歩いたので割愛。正式な夏山登山口に至ったのは15時5分。登山開始から約6時間、極めて濃密な6時間を過ごした。
・・・この下山完了の瞬間、最後にズッコケたのはご愛嬌である。
伯耆大山登山:アフター編

この自分にとって最高に濃密な1日の記録は、登山後もちょっと続きます。下山完了後、普段のように温泉に向かったりはせず、そのまま山陰道と国道9号をひたすら東へ東へと走ります。

やってきたのは鳥取砂丘。個人的には大学卒業ドライブというのを敢行した7年前に来て以来の砂丘です。伯耆大山からは1時間半強ぐらい、17時すぎに到着。狙いは夕陽です勿論。

砂丘の急登をピッケルを駆使して登るとかいう謎の行動(しかも足場が悪いのでちょっと役に立った)。

この大充実な1日も、着々と終わりが迫っている。

終わる終わる、、1日が終わるるるう

終わった。スゴイ1日だった・・・

あ、じんせいだ。

終わった後思ったらもう1ボーナス、厚雲から最後に夕陽が顔をのぞかせた。最後の最後までドラマチックなバースデーだった。
・・・そんな感じでこの日の旅程は完了。その後は鳥取市内に移動して飯を食い、珍しくちゃんとお金出して超安宿に泊まりました。翌日は山陰3days最終日の出雲観光、気が向いたら記録化します。翌日は悪天候だったが、2日目の伯耆大山登山で全てをやりきったので、あまり気にはならなかった。

伯耆大山雪山登山とかいう最高に痺れた1日の記録はこんなとこです。前日は曇天、翌日は雨。3日間用意して自分の誕生日のこの日だけが快晴。この日のために全ての御膳立てを整え、最高の檜舞台で最高の登山をやりきったこの充実感は何物にも代えがたい。
後から聞いたら、伯耆大山は日本四名山という富士山・立山・御嶽山・及び伯耆大山から構成されるグループの一員だそうです。一応全部歩いたことになるけど、この日ほど完璧な舞台を整えた登山はなかった。どこを登るかだけじゃなくてどう登るか、これによって得られる多幸感にも差が出てくるということ。
山自体は勿論、関東民であればこそ強く感じられる旅情、山の伝統と格式、程良いコースタイムから得られる心地よい疲労感、抜群の高度感、悶絶級の大絶景、痺れる剣ヶ峰への道、、、と色々最高なんだけども、それをどういうメンバーでどういうシチュエーションでどうやって歩くか、この掛け算によって何倍にもなる満足感がまた、面白いわけです。登山ってほんと面白い。
文句のつけようがない、こんな登山体験ができた自分は幸せ者だったなと思っております。登山趣味を持って心底良かったと感じた1日だった。この登山の後も色々とあったけど、この日の体験は自分の人生にとって大きな糧となったと感じています。
また伯耆大山に来たいかって問われると、少なくとも雪山としてはもういいかな、夏山としてはアリだと思うけど。何故ってこの日この瞬間に得られた感動を越えることは、この山では多分もうできないだろうから。我が伯耆大山雪山登山に一片の悔いもなし、であります。