2013年12月30日

今年最後の大会も終わり、2013年も残すところ数日となった。そして、そろそろ「ZFC通信」を読んでくれている方々の、約73%ぐらいが“どうやら今回も「ZST.38」は振り返りきらずに終わりそうだな、コイツ”と思い始めた頃であろうと思うので(特に北関東方面)、続きに手をつけたいと思う。

さて、残り2試合のセミとメインは、ZSTフェザー級、ウェルター級の、それぞれのタイトルマッチである。

現在、ZSTのタイトルマッチと言えば「5分×5R」という、戦う両選手は勿論、見ている観客までもが、体力、精神力、集中力を問われる鬼の長時間設定で有名である。しかし、元々は「5分無制限ラウンド」という、決着しない限りは延々とラウンドが続いていくという「LONGER THAN FOREVER」なモノであった。それが(たしか)「ZST.23」で、清水兄と藤原敬典選手が戦った時から「5分×5R」設定に変わったと記憶している。しかし、これはあくまでも“防衛戦”であったから「5分×5R」であったのかもしれない。なぜなら、その後「ZST.26」で田沼良介選手と矢島雄一郎選手が“初代フライ級王者決定戦”を戦った時は、再び「5分無制限ラウンド」に戻っていたからである。

これらの事から鑑みるに、ZSTのタイトルマッチは、防衛戦は「5分×5R」、初代王者決定戦は「5分無制限ラウンド」となっているのであろう。既に、だいたいの階級での初代王者決定戦は終わってしまっているので、次に確認できる機会があるかどうかはわからないが、平信一選手が「ZST 投げ選手権(無差別級)」とかに挑む事があれば、その時に確認しておきたい。

まあ、いずれにせよZSTのタイトルマッチは長時間設定なのだ。しかし、あくまでも設定が長いだけである。当然ながら、山本KID選手やレミーガの様に、勝てるのであれば、僅か数秒で試合を終わらせても全く構わないのである。





“一本かKO以外は全てドロー(トーナメントとか特殊な場合を除く)”としているZSTのコンセプトを考えれば、決着がつくまで戦わせる「無制限ラウンド」というのは頷ける話ではある。あまりにも長時間にわたる戦いだと、最後の方ではZSTの理想とする“回転体”な戦いではなくなってしまう、と見る向きもあるとは思うが、私は、この時間設定には反対ではない。まあ、“反対ではない”ぐらいの消極的賛成になっているのは、実際に私がそんな長丁場を戦った事が無いからであり、実際、一度でもやっていれば「いや、アレは無い(キッパリ)」と言い切ってしまえるモノかもしれないからである。

そこら辺を差っぴいても、やはり私の中で“賛成”の方に針が傾くのは、たとえ試合が終盤になって、両者バテバテで回転体の戦いが見られなくなったとしても、そこから先の“気持ちの勝負”が見られるからである。

これは、そんな長時間戦った事の無い人間の想像であるが、実際、3R、4Rと戦って、それでも試合が終わらない、終わらせられない時、人は何を考えるのであろうか。つらい、苦しい、しんどい、キツい、バテた、疲れた。その苦しみの時間帯を終わらせる解答は既に知っている。相手を倒せば良いだけなのだ。それでも相手は倒れてくれない。その内に、もう一つの解答が浮かんでくる。何も相手を倒す必要はない。自分が諦めてしまえばいいだけなんじゃね?という。まあ、実際のところは、ただただ無心に戦う境地にまで達しているのかもしれないが、私だったら間違いなく、試合中に、こういう考えが浮かんでしまうであろう。勿論、5R目まで戦える自信もないのだが。

まあ、実際のところ、「5分×5R」とかの長時間の試合を、「ふう、ヤレヤレ。全ては俺の計算どおりなんだゼ」と、スマートにポイントゲームで御する事の出来る選手など、現在のZSTの中では、ほんの一握りもいないであろう。そうなると必然的に、「5分×5R」という長い試合時間は、相手のみならず、選手自身の“弱い気持ち”との戦いという側面も浮かび上がらせる。当たり前ではあるが、仮に途中で心が折れてしまえば、間違いなく5R終了のゴングを聞く事はあるまい。

それと同時に、「5分×5R」という時間は、何かを出し惜しんで戦えるほど短いモノでもないであろう。仮に判定決着になったとしても、負けた選手は“あの場面で、こうすれば良かった”的な後悔はしても、全てを出し切る前に試合が終わってしまうという“俺はまだ本気出してないだけ”的な「いやー、負けたわー。トップギアに入れる前に試合終わっちゃったわー」といった後悔の仕方だけはしないのではなかろうか。

まあ、そんなこんなを総合すると、最終的には「5分×5R」という長丁場の試合も「長時間の戦い・・・嫌いじゃないわ!!」(by 須藤元気)と言えるのである。勿論、見るだけならの話だが。


動画:一応、閲覧注意。


さて、そんな“心技体”の全てが問われるZSTのタイトルマッチ。セミファイナルで、初代王者の奥出雅之選手が返上したフェザー級のベルトを巡って戦うのは、“戦うIT社長”伊藤健一選手と、“湘南ブタゴリラ”森興二選手。足関節技を得意とする伊藤選手と、パンチが得意な森選手。勿論、両選手とも、それだけしかできない選手ではないが、極論すれば“フィスト・オア・ツイスト”な一戦になるであろう。

試合は序盤から、森選手の必殺の“ブタゴリラパンチ”が唸りをあげる。森選手のパンチを受け、伊藤選手が倒れる。しかし、これは伊藤選手の作戦であろう。パンチを受けて倒れ込み(TKOを取られない程度に、ではあるが)、森選手が嵩にかかって攻め込んで来てくれれば、そこは伊藤選手が得意とするグラウンドの領域である。パンチを受け、倒れながらも伊藤選手の腕が森選手の足に絡みつく。やはりグラウンドの戦いでは伊藤選手に分があるか。そう思われた矢先、まさかの森選手の「肩固め」が炸裂。形としては、かなり良い形であり、少なくとも私は「あ、極まった」と思ってしまった。しかし、これが“強敵”と書いて“とも”と読ませる、永遠のライバル奥出雅之選手が返上したベルトにかける伊藤選手の“気持ち”なのか。この「肩固め」を伊藤選手は耐え切る。

その後も、両者は森選手がバック・チョークで、伊藤選手は腕十字で、それぞれ見せ場を作るが、勝負を決するには至らない。

4Rに入ると、伊藤選手が失速してきたか。タックルを切られ、森選手のパンチを浴びる場面が多くなる。反撃は、力ないローキックの一手のみとなってきた。しかし、伊藤選手の手持ちの札には、かつて奥出選手を“病院送り”にしたスイングパンチというカードも残っている。力ないローキックを繰り返し、森選手の意識を下に向け、フルスイングのビッグパンチで一発逆転の機会を窺っているのではないだろうか。そう考えていた矢先、伊藤選手が右のスイングパンチを出した。これは決まらなかったが、やはり伊藤選手はまだ試合を諦めていない。

今まで、伊藤選手の試合は何試合か見てきた。その多くのケースが、奥出選手やライダー等、伊藤選手の対戦相手の方に肩入れしている場合が多かったので、試合自体にはドキドキしても、伊藤選手に対してドキドキする事は一度もなかった。だが今回、残り僅かとなった手持ちの有効札とスタミナを、それでも最大限に活かそうと考えながら戦っている(様に見えた)伊藤選手の姿には、初めてドキドキする何かを感じずにはいられなかった。

最終ラウンド。伊藤選手の右のスイングパンチと、森選手の右フックが同時に炸裂した。両者の身体がグラリと揺れる。一瞬の空白。そして踏みとどまったのが森選手であり、踏みとどまれなかったのが伊藤選手であった。伊藤選手の足が、踏みしめるべき大地を見失ったかのように彷徨い、その身体は自らの意思に反し、後方へと退くように沈んでいく。

そのままKOでも良いぐらいのダウンであったが、レフェリーは試合を続行。これもまた、伊藤選手の戦術の一つだったのではなかろうか。序盤のダウンっぽい倒れ方は、単に寝技に引き込むだけが目的ではなく、大したことのないパンチで倒れる場面を多く見せておけば、本当にヤバいダウンをした時も、レフェリーが試合を止めづらくなるかもしれないという事を考えていたのかもしれない。勿論、レフェリーが止めない事によって、相手の追撃により深刻なダメージを受ける危険も無くはないが、顔面へのパウンド(寝ている相手へのパンチ)が無いZSTルールであれば、少なくとも他の試合よりも、その危険性は少ないと言えよう。

しかし、ここで森選手は深追いをしない。これは森選手が冷静であったと言うよりは、最後の最後は自分が一番信頼している武器である、“ブタゴリラパンチ”が出せるスタンドでの勝負以外はしたくなかった、という所であったのではないか。おそらく森選手にとっても、そのぐらいのギリギリの戦いではあっただろう。

フラつきながらも伊藤選手が立ち上がる。森選手の左アッパー。沈むように伊藤選手がそれをかわす。いや、本当に沈んだだけか。森選手がレフェリーに、「ダウンだろ」と言うかの如くアピールを行う。レフェリーは動かない。森選手は伊藤選手に対し、離れた距離で「立て」とジェスチャー。リングに膝を着け、その森選手を見上げる伊藤選手は何を思う。

試合続行。森選手がパンチで襲い掛かる。伊藤選手もパンチを返すが、その拳に力は残っているのか。当たっても、森選手を止める事は出来ない。一瞬、森選手から視線を切った伊藤選手は何を見ようとしたのか。森選手が前に出る。その圧力に耐え切れず、遂に伊藤選手が背を向けてしまった。完全に戦う術を無くした伊藤選手の身体に、更に森選手のパンチが叩き込まれる。伊藤選手のアゴ辺りを背後から森選手が打ち抜き、伊藤選手の身体が沈むと同時にレフェリーが試合を止めた。

セミファイナル/第二代フェザー級王者決定戦 (5分5R)
×伊藤 健一(TEAMゆでたまご)
vs
○森 興二(X-ONE GYM 湘南)
(5R2分46秒 TKO)※レフェリーストップ
※森興二が第二代フェザー級王者に


こうして、ベルトは森興二選手の腰に巻かれ、“湘南ブタゴリラ”が奥出選手の後を継ぎ、第二代のZSTフェザー級王者となった。

「ZST.37」のインタビューの時は、「(ZSTの)ゴリラ枠は僕がいただいたかな、と思っています」と、それなりに“ZSTのゴリラ枠”に関しては、譲れないサムシングを漂わせていた森選手であるが、


動画:その当時のインタビュー。

試合後のマイクでは、

「“湘南ブタゴリラ”改め、“二代目チャンピオン”の森です!」

と、王者として“発言権”っぽいモノが増したと思われるや否や、さり気なく“ZSTのゴリラ枠”からのエスケープ宣言を敢行。これが「信長の野望」的なゲームであれば、軍師の人が「機を見るに敏」と評価してくれる事は間違いないであろう。が、しかし、そのぐらいで異名を変えてくれるような、甘いZSTではあるまい。これからも暫くの間は、“第二代 ZSTフェザー級王者”として、それと同時に“湘南ブタゴリラ”としての、森選手の戦いの日々は続いてしまうのであろう。

DCIM0264



zst_fczst_fc at 00:57│コメント(0)トラックバック(0)試合 │

トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字