2015年11月19日

タイラ対シバターのコピーのコピー


ガラス玉ひとつ落とされた 追いかけてもうひとつ落っこちた

ひとつ分の陽だまりに ひとつだけ残ってる

BUMP OF CHICKEN 「カルマ」



いつも通り書く時間が無いので、色々と終わってから書こうかとも思ったが、この一戦だけは書かずに避けて通るわけには行くまいて。

22日(日)にディファ有明にて開催される「ZST.49」。

その舞台に、ZSTのリングで怪進撃を続ける、泣く子も笑うYouTuber、“リアル・アマプロレスラー”シバター選手(パンクラス P’s LAB 横浜)が、またしても襲来。

DCIM1483のコピー


シバター選手はZST初登場以来、NAKADAI選手とはドロー。伊達李和選手には一本負け。河西和希選手にも一本負けと、その戦績のみで語れば、取るに足らない存在であろう。だがしかし、我々、よく訓練されたZSTファンがシバター選手を無視できないのは、結果ではなく、その試合内容によってである。NAKADAI選手の頭を撫で回す。李和選手にゴッチ式パイルドライバーをかます。河西選手にダイビング・フットスタンプを降らせる。その戦い方、まさに傍若無人にして天衣無縫。こんな戦い方が出来る選手は他にいない。次に何が飛び出すか分からぬオンリーワンなシバターワールド。ゆえに、それを見た人は、「シバターが〜」、「シバターは〜」と、シバター選手を主語として、その試合を語らざるを得ないのだ。

これは他の選手にしてみたら、そうとう厄介な存在であろう。他の選手と違い、おそらくシバター選手は勝負の向こう側に、単純な記録としての勝敗だけを目指しているわけではないのであろう。目立ってナンボ、楽しませてナンボ、そういった所に軸足を置いて勝負している。それゆえに、他の選手は自分が勝っても話題の中心地がシバター選手になってしまい、いわゆる「試合で勝って勝負に負けた」みたいな空気を纏わされてしまうのだ。

そして本当に厄介なのは、なんだかんだ言って“弱くは無い”のである。本当の意味で何をやってくるかわからぬゆえ、自分の中の教科書が通用しない瞬間という物が出来てしまう。そして、あの体格だから力はある。技も知っている。プロレスとかも含めれば、かなり人前で戦っている回数が多いので、場慣れもしている。

事実、8月の横須賀大会では、初期ZSTの常連選手であった西坂タツヒコ選手を相手に、まさかのバックブローを“バスコーン”と音が響くほどにクリーンヒットさせ、そのまま絞め上げて(一応、公式の決まり手は「裸絞め」となっているが、ネックロックというか、腕でセンタクバサミをしているような絞め方であったか)一本勝利。その強さをも見せ付ける結果となった。

試合に勝てば、主役は勿論シバター選手。試合に負けても、話題の主役はシバター選手。まさに「俺の試合(もの)は俺の試合(もの)。お前の試合(もの)も俺の試合(もの)」という、恐るべきジャイアニズムの体現者と化した“暴君”シバター選手を前に、わりと根が真面目なZST戦士たちはあまりに無力。このまま専制君主の下から吹きつける俺様色の風により、「明るい未来が見えません!」的な旅路を歩き続けなければならないのであろうか。

シバター選手に勝つということ。それは圧倒的な力で、それこそ一縷の望みも、一片のシバターワールドすらも出させないような圧倒的な力で屠り去る。これがまず一つである。だがまあ、そこまでやれば、それはもう普通に勝ちなので、それは見たいかといわれると、そうでもなかったりする。

シバター選手をしてシバター選手足らしめているもの。それは試合の中での存在感である。ならば、その存在感でシバター選手を上回る。そうやってZST選手が勝つ姿こそ、我々、よく訓練されたZSTファンが求めているモノなのではなかろうか。

だが、ZSTの中にいるのか?あのシバター選手に存在感で勝てる選手など…

いる…いや、いた。そして我々は、その名前を知っている。だが、その男は一年前に、そのリングの上から姿を消した。

だが、しかし…

遂に、あの男がリングに帰ってくる!

そう。泣く子も投げる“暴走柔術”平信一選手(綱島柔術)が、一年以上にわたる沈黙の時を経て、その間に溜めた“闘争本能”やら“たぎり”やら“体脂肪”的な何かを満載し、遂にZSTのリングにカムバックだ!!

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ひょっとしたら、こんなに平選手のカムバックに期待しているのは、全世界で私とVitaliy Kostyrenkoさん(世界の優秀なZSTファンの一人)の二人だけかもしれないが、そこら辺の可能性は無視して話を続けたい。

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画像:平選手カムバックのニュースを、喜びと共に(たぶん)伝えるVitaliy Kostyrenkoさんのfacebook。

さて、平選手と言えば、「投げる!」と「まだ早い!」を両軸に、いつの間にやらZSTの中心地にまで辿り着いてしまった選手である。

2011年の「ZST.30」で、本戦に初登場(その前にサバイバルタッグとかでの登場経験はあったが)し、現在ではプロ修斗のリングで活躍する、スッカリ遠い存在となってしまった感もある川名雄生選手と戦いドロー。続いて、ある意味“戦犯”の上田厚志選手と対戦。この試合で、平選手はあまりにも綺麗に上田選手を投げてしまった。これが後の平選手の格闘人格形成に、大きな影響を与えてしまったことは間違いない。ちなみに結果は一本負け。「ZST.31」では、あの山田崇太郎選手を投げ、脳天をマットに突き刺すも、そのままギロをチンされて一本負けと、本戦では勝てぬ試合と日々とを積み重ねてしまった。

「正直、手ごろな相手かなとw」

転機となったのは、2012年に行われた「BATTLE GENESIS vol.10」である。この試合で、平選手の前に立ったのは高山洋貴選手(後にヒロキに改名)であった。この試合の事前インタビューで、高山選手が平選手を評した言葉が、その「お手ごろ価格宣言」である。イケイケの若い選手が、泣かず飛ばずの中堅選手を踏み台にする。そういう図式があったであろうか。

だが、この試合で平選手のポテンシャルとかフラストレーションとかコレステロールとか、なんかそういうモノが一気に大爆発。鉄拳制裁の暴風で高山選手を沈め、「お手ごろ」どころか「お、ねだん以上」なニトリ品質級の強さを見せた。なお、この試合の時に、かの名言「まだ早い!」が生まれ、これが“ややウケ”した事により、平選手はインタビューとかで詰まった時は「まだ早い!」か「投げる!」かを言っておけば何とかなる、という事を学んでしまったっぽい。

その後も、ZSTが鳴り物入りで用意したカザフスタンの選手に勝ってしまったり、奥出雅之選手のライト級転向ストーリーを第一話でドロドロの打ち切りにしてみたり、当事のZSTでは「悪魔将軍」級の強さを誇っていた小谷直之選手を相手に判定まで持ち込んだりと、理屈を越えた強さを発揮。

こうして、一時期の清水兄みたいに皆勤賞的に戦い続け、一部では「意外と手堅い試合をする」という評価を受けながらも、その“暴走”キャラもシッカリと確立させ、平選手はそのオンリーワンの存在感を以って、ZSTの中心選手となっていったのである。

そんな平選手であったが、昨年8月末に行われた太田選手との試合後、練習中に大きなケガを負ってしまった。こうして“暴走柔術”は、そのオンリーワンな存在感と共に、ZSTのリング上から姿を消す事になる。

そして、その直後の大会でZSTマットに初登場したのがシバター選手なのである。平選手の最後の戦いとなったのが「ZST.42」。シバター選手が初登場したのが「ZST.43」(「SWAT!」のリングに、別の名前で上がったことはあります)。人知を超えた何者かの意思がそこに介在しているかのように、二つのオンリーワンは、野球の継投策の様な鮮やかさで入れ替わっていたのである。

ファンとしては、平選手の抜けたポジションをシバター選手が埋めてくれた形であるが、勿論、そこは二人が示し合わせていたわけでもなし。一つのオンリーワンの台頭は、当然ながらもう一つのオンリーワンにとっては苦々しい事態でしかなかったであろう。とはいえ、平選手は絶賛療養中の身。特に何ができるというわけでもなかったようで、ひたすらリハビリに費やす雌伏の日々を過ごしていたのであった。

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そんな日々の中で撮影された画像がコレである(「平信一の暴走通信」より)。

「すごく…大きいです…」

しばらく会場で見ないうちに、平選手はスクスクと成長していたようである。童話「ジャックと豆の木」で、一晩のうちに巨木に成長した豆の木を見ながら「今日は人生で最も長い1日になりそうだ」と呟いていたジャック・バウアーの気持ちが少しだけ分かったような気がする。

“アレ?これ、シバターとやれんじゃね?”

この画像を見た時、初めてその考えが浮かんだ。平選手の本来の階級はライト級(70.3kg以下)である。そしてシバター選手は80kg以上の契約で戦う事が殆どである。本来ならば、この10kgという体重の差は、両者を交わらせないはずであった。だが、平選手の恐るべき成長具合は、その10kgの壁を軽々と越えようとしていたのである。

片方のオンリーワンが雌伏の日々を送る中、もう片方のオンリーワンは着実に民意を掴みつつあった。特に、今年2月の「ZST.44」で伊達李和選手にかました「ゴッチ式パイルドライバー」は、プロレス偏差値の高い一部のファンと一部の選手の心をグッと掴んだようである。試合自体は李和選手が勝ったのであるが、最近になってあの試合の話をすると、シバター選手が勝ったと記憶している人が数人いたりする辺り、やはり「記録よりも記憶に残る選手になりたい」と語った先人の言葉は、世の真理の一端を掴んでいたのだなと思う。

そんなオンリーワン同士が、初めて公の場で第三種接近遭遇を果たしたのは、今年8月の横須賀大会での事であった。

DCIM1325のコピー


その会場で出会った平選手は、やはり相変わらず“マシマシ”な大きさをキープしていた。そして髪型がちょっとグロかった。

この横須賀大会に平選手が訪れた理由。それは、シバター選手に宣戦布告をするためだった。

遂に来てしまったのか。その瞬間が。

おそらくではあるが、この世界で一番早く「平信一 vs. シバター」というカードを文字にして発信したのは、ここ「ZFC通信」であったろうと自負しており(「ZST.44」結果 その5)、それが、今回のこの一戦だけは書かねばなるまいと思った理由でもある。そして、そのカードが今まさに現実になろうとしているのだ。

「じゃあ、ちょっと行って来るんで」

そう言い残してリングの方に向かっていった平選手の姿が、とてもまぶしく見えたのは、いつもと違う横須賀アリーナの照明のせいだけではなかったろう。

それから1時間後…

先述したとおり、シバター選手は西坂タツヒコ選手を相手に、バスコーンと裏拳をかまして絞め上げ、見事な一本勝利を見せた。リングの中で雄叫びをあげるシバター選手。今だ!乱入するなら今しかねぇ!そして…

何も起こらなかったのである。

何故か。

失敗したのだ。

平信一は、タイミングを間違ったのである。

既にシバター選手が「あ〜、今日も良い仕事したわ〜」とリングを降りるタイミングで、逆サイドからリングに上がってしまったのである。それはあたかも、この二人がZSTに登場した時の流れを再現するかのような、見事なまでの入れ替わり劇であった。去り行くシバター選手の背中に、もう平選手の言葉は届かない。

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そして、更にもう一つ付け加えるのであれば、シバター選手は自分が目立ってナンボの選手である。だから特に対戦相手の研究などしないのであろう。つまりZSTの選手の事など、よく知らないのだ、たぶん。

これでシバター選手が平選手の顔ぐらい知っていたならば、そういう“プロレス脳”にかけては理解のあるシバター選手のこと。“あ、なんだか分からないけど平ってヤツが騒いでんな。いっちょ転がしてみっか”ぐらいの選択肢は思い浮かべてくれたかもしれない。しかし、平選手はシバター選手を知っていたが、シバター選手は平選手を知らなかった。この溝は決定的であった。おそらく、そんなシバター選手からすれば、たとえその場で平選手の姿に気付いたとしても“なんか浮かれた観客がリングサイドに上がってきてしまった”みたいな、ちょっとした“とれたてのハプニング”的なモノにしか思えなかったかもしれない。

「心が折れました。今日は帰ります」

そう言い残して、メインの試合も見ずに帰っていく平選手の姿が、とても小さく見えたのは、いつもより大きい横須賀アリーナという会場のせいだけではなかったと思う。

平選手の身体は大きく成長していた。でもハートはやっぱり繊細だった。

ちなみに平選手はリハビリ期間中に、少女マンガを読んでメンタル面を鍛えていたそうである。「僕らがいた」とか「天使なんかじゃない」とかを読んでいたようであり、胸キュンする話が好きだとのこと。

このように二つのオンリーワンは、少女マンガの定番とも言える幾つかのすれ違いを経てしまったが、遂にこの戦いは「13周年記念大会」という胸キュンな、いや、胸アツな舞台で実現する事になったのである。



シバター選手の会見に乱入する平選手。もう貴様の役目は終わった。これからは、俺が時代をこの手に取り戻す。そして平選手は、あの雌伏の日々に溜め込んだ“たぎり”をぶつけるかのように行動に出てしまった。

机に打ち付けられ、並べられたイスに向かって放り投げられるシバター選手。

その身体に、平選手の手加減された容赦のないストンピングが降り注ぐ。

平信一、もう天使なんかじゃない!

「11月22日。お前、もう最後だからな!」

「それがお前のやり方か!平とか言ったな!大きな棺桶を!大きな棺桶を用意しておけ!」

こうして、この世紀の茶番劇…じゃなかった、鬼気迫る会見は幕を閉じた。

やはりZSTのリングは、二つのオンリーワンの並列を許すほどには広くないのであろうか。ひとつ分の陽だまりに、ふたつはちょっと入れない。

目には目を。

歯には歯を。

シバターにはタイラーを。

遂に迎える、噛み合いそうで、たぶん噛み合わない異次元対決の瞬間。

互いに譲れぬオンリーワン。たった一つの場所を、勝ち取るのはどっちだ!?


第4試合
ZSTルール/無差別級契約 (5分2ラウンド)
平 信一(綱島柔術)
vs.
シバター(パンクラス P’s LAB 横浜)

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zst_fczst_fc at 01:25│コメント(0)トラックバック(0)試合 │

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